所得税と住民税で異なる課税方式をとれるように
これまでのやり方では、
・ 税務署に確定申告を行う
↓
自治体にも通知がいくため住民税申告不要
・ 確定申告不要だけど住民税申告を行う
と、所得税の確定申告と住民税の申告はどちらか一方を行うのが一般的でした。
ところが平成29年税制改正大綱(税制改正法は平成29年3月27日に成立)では、所得税と住民税で異なる課税方式をとれることを明確化するとしました。
これは両方の申告を行うことで可能です。
上場株の申告は3通り
上場株式等の配当所得に関しては、下記の3通りの方法で申告できます。
・ 総合課税
・ 申告分離課税
・ 申告不要
特定公社債の利子所得や、上場株式等の譲渡所得(源泉徴収有りの特定口座で取引した場合のみ)に関しては、下記の2通りの方法で申告できます。
・ 申告分離課税
・ 申告不要
例えば、配当所得において所得税確定申告で「総合課税」を選択した場合、一般的に住民税も自動的に「総合課税」を選択することになります。
しかし、所得税で「総合課税」を選択し、住民税では「申告不要」を選択するようなこともできます。
別方式申告のメリット
上場株の配当からは、15.315%の所得税が天引きされています。
所得税の税率が5~10%程度の申告者であれば、総合課税を選択すると、有利な形で所得税の還付が見込まれます(上場株取引で損が出ている場合は申告分離課税を選択したほうがいい場合もあります)。
これは、上場株配当であればその金額の10%を税額から差し引く「配当控除」が適用されることもあります。
一方で国民健康保険料を低くしたり、所得制限付き社会保障制度を有利に利用したりしたい場合は、申告不要にすることで合計所得金額・総所得金額等に算入しない方が良いのです。
国民健康保険料や所得制限における所得は、「所得税確定申告書」でなく「住民税課税明細書」上の所得です。
別方式申告により、所得税還付と社会保障制度利用の両者において、有利な形にできます。
≪参照:確定申告によって自分の受ける社会保障はどう変わってくるのか(1)、(2)、(3)≫
まだ間に合うかも! 住民税申告
現行法でも、住民税申告を先に行ってから、所得税の確定申告をした場合は別方式でも認めるようにはなっております。
これを、順番が前後した場合でも別方式申告を認めるとするのが、平成29年度税制改正の趣旨です。
例えば次の自治体のサイトでは、別方式申告の案内がされています。(大阪市・姫路市・奈良市)
住民税の申告期限は3月15日でしたが、上記のどの自治体も納税通知書の送達(概ね5月10日~6月中旬)までに住民税の申告をすれば、平成29年度住民税額に反映されるとしております。
今年に関しては、自治体によっては別方式申告を認めてくれない可能性もあります。
しかし上記自治体では、納税通知書送達日までに申告すればよいとだけ案内しておりますから、すでに平成28年分の確定申告を済ませている場合でも、自治体に問い合わせて別申告してみる価値はあります。
ちなみに一部自治体に直接問い合わせたところ、別申告を受け付けてくれるとのことでした。
ただし本格的な受け入れ態勢は、どの自治体も来年度(平成30年度)住民税申告の際に整うことが想定されます。(執筆者:石谷 彰彦)
情報提供元: マネーの達人