食料自給率の低さは問題になっていますが、農業の確定申告の情報は極端に少ないのが現状です。
そこで、農業の中でも割合の多い兼業農家の確定申告のアウトラインを紹介します。
そもそも兼業農家は何所得?
農協やスーパーなどに販売している場合・・・事業所得
農産物を販売していない家庭菜園の場合・・・雑所得
物販の場合の所得金額とは?
農業は物販です。
所得金額の計算はサービス業と少し異なります。売上原価を計算する必要があるからです。
所得金額 = 収入金額 - 必要経費
必要経費 = 売上原価 + 一般的な経費
売上原価 = 前年の在庫 + 仕入高 - 年末の在庫
売上原価の計算について補足しましょう。
本来は売った都度に原価をカウントすべきですが、それでは計算があまりに面倒です。
そこで、簡単に計算する手法として、年末に売れ残った分を在庫として計算することで、間接的に売上原価を求めます。
農業所得を計算するときの収穫基準とは?
普通の業種のように、販売、仕入、経費の負担があってはじめて収入金額と必要経費にカウントするワケではありません。
収穫した時点で、販売価格を収入金額と仕入高に同額を計上します。たとえば、米を10万円収穫したら、次のようになります。
収入金額10万円
仕入高(必要経費)10万円
所得金額の計算はプラスマイナス0円なのにお気づきだと思います。
この収穫基準によって在庫の計算は独特です。他の業種ように原価ではなく、収穫済みの農産物を販売価格で計算します。
しかし、在庫の計算の対象外であるぶどう、もも、びわなどの日持ちの短い農産物は収穫基準による収入金額と仕入高の計上が省略できます。
在庫の計算方法は?
計算対象
(1) 農産物
米・玄米などの穀物類と芋・りんごなどの日持ちの長い野菜と果物
(2) その他
種苗費・肥料費・農薬などの直接、作物を育てるための費用
(3) 在庫の対象外
ぶどう、もも、びわなど日持ちの短い農産物
計算方法
農産物・・・販売価格
その他・・・購入価格
家事消費をした場合の収入金額は?
家事消費をした場合には兼業農家だけなく、家庭菜園も収入金額に計上する必要があります。
家事消費とは、農産物を自宅で使用し、親戚などに配った場合を意味します。
兼業農家
販売価格の70%を収入金額に計上します。特例である70%で許される条件は帳簿に記帳することです。
つまり、家事消費を申告しないで税務署から間違いを指摘されたときは販売価格を計上しなければなりません。理由は帳簿に記帳されていないからです。
家庭菜園
販売価格が存在しませんので、東京中央卸売市場の年間平均価格などの客観的な数値を用います。
家庭菜園でも本当に確定申告をする必要があるの?
基本的に確定申告をする必要はありません。しかし、「住民税の申告はしてください」という行政指導はあります。
その際には、収入金額の欄に正確な金額、所得金額の欄に0円と記載して差し支えないというコメントがあります。
家庭菜園では厳密に所得金額を計算しても赤字であり、雑所得のために他の所得と相殺できないから、厳密に計算する必要がないという意味です。
まとめ
農業所得の確定申告の情報は不十分です。この記事も所得税法の考え方に照らし合わせて、筆者の見解を示しました。(執筆者:阿部 正仁)
情報提供元: マネーの達人