・ サラリーマンで年末調整対象済みの給与所得以外が20万円以下
・ 年額400万円以下の公的年金等受給者で、その他の所得が20万円以下
の場合、確定申告不要であることは有名ですが、住民税の申告はすることになります。
確定申告と住民税申告の違いは
所得税の確定申告
国に対する所得税を自分で計算して申告・納税
住民税申告
住民税の計算資料となるものを記載し(確定申告と内容は似ていますが)、申告時には納付も還付も無い。(税額は自治体が計算して5~6月に通知)
確定申告をすれば、その情報は自治体にも渡しますので住民税申告を兼ねますが、確定申告を避け、住民税申告をしたほうがいい場合もあります。
なんでこんな制度があるのか…
推測レベルでの説ですが、
・ 地方自治体…住民税の所得情報が数々の所得制限に関わるため、正確に把握したい
・ 税務署…個人の税務申告に関しては事務負担を減らしたい
という思惑が絡んでいると言われています。
また平成19年における国から地方への税源移譲により、納税額が所得税<住民税の人が多くなっており、住民税の重要性が高まっていることもあります。
給与・公的年金の源泉徴収票の情報は、企業・日本年金機構から自治体に送付され、住民税の計算資料にされています。
年末調整制度も、実は住民税の申告だけが必要な「確定申告不要制度」とも言えます。
申告不要制度は誤解が多いので注意
冒頭の要件にあてはまる方に関しては住民税申告もしなくて良いという誤解も多いのですが、その他下記のような点も注意が必要です。
自営業者・不動産賃貸
例えば自営業者・不動産賃貸で所得を得ている人が、副収入で10万円の所得を得ていたとしても、確定申告不要にはなりません。
年収2,000万円超
また年収2,000万円超の給与所得者は年末調整対象外のため、副収入がいくらであろうとも確定申告が必要です。
公的年金受給者は気がつかず確定申告していることもあります。
住民税申告だけしたほうがいい場合の計算例
公的年金からは所得税を源泉徴収されますが、源泉徴収税額が0の人もいます。
また国から支給される老齢基礎年金や老齢厚生年金の他、民間団体等から支給される企業年金も公的年金等に係る雑所得に含まれます。
老齢年金と企業年金等を合算し、医療費控除や保険料控除などを入れて確定申告書を作ってみた結果、結果として所得税が還付にならず納税になる人もいます。
例えば
・ 公的年金等の年収:162万円(公的年金等に係る雑所得42万円)
・ 源泉徴収税額 :0円
・ その他の雑所得 :18万円
・ 医療費控除額 :5万円
・ 社会保険料控除額:5万円
の場合、確定申告するつもりで計算すると所得税6,100円の納税となります。
しかし公的年金等の年収400万円以下でその他の雑所得が20万円以下のため、確定申告不要制度が使え、住民税だけの申告であればこの所得税は払わずに済みます。
こういう事例でも、自治体が所得税の確定申告をするよう案内する場合があるので気をつけてください(還付申告の可能性を見込んで気を利かせている可能性もありますが)。
住民税申告義務がない場合でも申告する意味
収入が公的年金のみであれば、「公的年金等の源泉徴収票」の情報を自治体はつかんでいるため、住民税申告は不要と自治体は案内しています(上記計算例はそうではなく住民税の申告義務はありますので、申告しない場合は申告漏れとなります)。
しかし医療費控除などがあれば、住民税引き下げに役立つだけでなく所得制限つきの制度でも有利になりますので、住民税申告ぐらいはしておいたほうがいいのです
参照:確定申告によって自分の受ける社会保障はどう変わってくるのか(1) 。
課税所得がない場合でも
最後に注意ですが、課税所得で0でも(身内の扶養親族として申告しているのでなければ)住民税申告はすることになります。
失業給付・遺族年金・障害年金をもらっている場合や、生活保護を受けている場合は、申告書に記入欄があるので記載することになります。
給与や老齢年金のない人が申告せずに住民税「未申告」と登録されると、国民健康保険料や高額療養費の計算などでも不利になりますので、そのような状態にはならないようにしてください。
参照:「低」年金者・「無」年金者をきちんと扶養として申告した方がいい理由 申告しないとリスクも。(執筆者:石谷 彰彦)
情報提供元: マネーの達人