今年は年金制度について、大きな改正の年となります。
これまでは、老齢年金を受給するためには、保険料納付済期間などの資格期間が原則として「25年以上」必要でした。
しかし、その資格期間が10年以上あれば老齢年金を受給できるようになり、大幅に短縮されることになります。
現在の老齢年金が支給される要件
老齢年金には、「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」の2種類があります。それぞれの受給できる要件は異なります。
1. 「老齢基礎年金」の支給要件
・ 保険料納付済期間(国民年金の保険料納付済期間や厚生年金保険、共済組合等の加入期間を含みます。)
・ 保険料免除期間(未納期間は含まれません。)
上記の合計が25年(300か月)以上あることが必要です。
2. 「老齢厚生年金」の支給要件
厚生年金保険の被保険者期間(厚生年金保険の加入期間)が1か月以上あることが必要です。
65歳未満の方に支給する老齢厚生年金(「特別支給の老齢厚生年金」といいます。)については、1年(12か月)以上の被保険者期間が必要となります。
しかし「老齢基礎年金」の支給要件を満たしていることとなりますので注意が必要です。
「老齢厚生年金」の2階建て構造
現在、「老齢厚生年金」は、「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」の2階建てとなっています。(図1参照)
図1 「本来の老齢厚生年金」のイメージ
昭和61年の法改正により、厚生年金保険の加入者は、国民年金にも同時に加入することになりました。
65歳から「老齢基礎年金(国民年金部分)」と「老齢厚生年金(厚生年金保険部分(報酬比例部分))」の2つの年金を支給するスタイルとなり、1階の土台部分の「老齢基礎年金」が支給されない場合(保険料納付済期間など25年(300か月)以上ない場合)は、2階部分である「老齢厚生年金」も支給されない仕組みとなっています。
改正後の老齢年金が支給される要件
平成24年に改正法案が成立し、当初は「消費税10%引上げ時」からという予定でしたが、その後改められ「平成29年8月1日」から支給される要件が緩和されます。
「老齢基礎年金」の支給要件
保険料納付済期間(国民年金の保険料納付済期間や厚生年金保険、共済組合等の加入期間を含みます。)と保険料免除期間(未納期間は含まれません。)の合計が25年(300か月)以上から、改正後は10年(120ヶ月)以上となります。
該当者には今後、年金請求書が発送されます
平成29年2月末より下記表の予定で該当者には、【「ターンアラウンド年金請求書」及び年金の請求手続きのご案内】が日本年金機構からご本人宛に送付されます。
「ターンアラウンド年金請求書」の事項
・ 基礎年金番号
・ 氏名
・ 生年月日
・ 性別
・ 住所
・ 年金加入記録をあらかじめ印字した年金請求書
「年金請求書」
今回の該当者の方には、黄色の用紙で右上に「短縮」と記載された「年金請求書(短縮用)」が送付される予定となっています。
今回該当する方の送付される封筒
「年金請求書(短縮用)」
資格期間が国民年金のみの方
厚生年金保険・共済組合等の期間が12月に満たない方で生年月日が昭和27年8月2日以降の方
この「年金請求書(短縮用)」ではなく、異なる様式である「年金請求書(事前送付用)」が送付される予定です。
「年金請求書」が届いたら早目の手続きをオススメします。
「年金請求書」が届きましたら、手続きは平成29年8月1日以前でも可能です。
今回の10年への短縮により約64万人の方が新たに老齢年金の受給権を得る見込みとなっていますので、窓口の混雑も予想されています。
お手元に届きましたら、早い段階で年金事務所等にて手続きを済ませることをおすすめします。
*すべての加入期間が国民年金第1号被保険者期間の方は、手続きの窓口は、市区町村となります。
受給資格期間が10年に満たない方
場合によっては老齢年金を受け取れる可能性があります。
平成29年8月1日の時点で、受給資格期間が10年に満たない場合でも、一定の制度を利用すれば、要件を満たすことができ老齢年金を受給できる場合があります。
1. 任意加入制度
国民年金の任意加入制度を利用して、国民年金保険料を納めることで、受給資格期間を満たすことができる場合があります。
「任意加入」の要件
(1) 日本国内に住所がある人で、60歳から65歳になるまでの間
(2) 海外に住所がある人で20歳から65歳になるまでの間(日本国籍を有する人に限る)
(3) 受給資格期間を満たしていない方は70歳までの間
ただし、老齢基礎年金の繰上げして受給している方や、現在、厚生年金保険に加入している場合は任意加入できません。
2. 後納制度
後納制度を利用することで、過去に国民年金保険料が未納で、時効で納めることができなかった国民年金保険料について納めることができます。
平成27年10月から平成30年9月までの3年間に限り、過去5年分まで納めることができます。
その結果、受給できる年金額が増額できたり、10年の受給資格期間が満たすことができる場合があります。
3. 特定期間該当届・特例追納制度
専業主婦など(「国民年金第3号被保険者」といいます)の方が、切替手続きなどが2年以上遅れたことにより、国民年金保険料が未納となってしまった期間について、特例追納措置というものがあります。
(例)
・サラリーマンの夫が、退職したり、自営業を始めたり、亡くなったなど
・サラリーマンの夫と離婚した
・妻自身の年収が増え、夫の被扶養者から外れたなど
国民年金の切替が遅れた期間の年金記録について、保険料未納期間になっている場合があるので「特定期間該当届」の手続きで、最大で10年分の保険料を納めることができます。
ただし、納付できる期間は平成30年3月までとなっています。
年金請求書が届かなかった場合
該当者には、送付スケジュールに沿って年金請求書が送られますが、届かない方は未納期間などで受給資格期間が10年を満たしていない場合があります。
もし、年金請求書が届かなかった場合は、年金事務所へ問い合わせてみるとよいでしょう。(執筆者:高橋 豊)
情報提供元: マネーの達人