老人ホームの見学デビューで、具合が悪くなる
昨年、ファイナンシャルプランナーの畠中雅子先生にお導きを頂き、老人ホーム見学デビューを果たした私。
だが、実は1件目の見学の時には、具合が悪くなってしまった。ホーム自体は新設で素晴らしいけれど、そこにいる多くの老人達は、家族に老人ホームに「入れられて」いるそうだ。
怒ったような、人生を諦めきっているような、そんな表情をしている老人の姿に、「人生の終焉は、こんななのか!」と、愕然とした。
ハードルの高かったデビュー戦
もっとも、ここは老人ホームといっても、介護の度合いが重度の方向けで、デビュー戦としては、なかなかハードルが高かった。
それが理解できたのは、その後、何か所かの老人ホーム見学を続けて、「老人ホームの棲み分けマップ」のようなものが、私の中にできたからなのだが。
ホッと一息ついた「ネオサミット湯河原」の見学会
私が老人ホーム見学でホッと一息つけたのは、「ネオサミット湯河原」に行ってからだ。正直、それまでの老人ホームの見学会は「修業」のようだった。
なぜ、40代の私が、そんな「修業」を続けていたか?
それは、ファイナンシャルプランナーの先輩に、
老人ホーム選びの現実的として、本当に入居を検討しなければならないご家族は、「入所できるホームを、早く確保しなければ」という焦りもあるから、すごく精神的に厳しいわよ
と教えてもらったからだ。
私は長女なので、「【来たるべき両親の老人ホーム選びの日】に備えて、精神を鍛えておかなければ!」みたいな使命感にかられて参加していた。
ネオサミット湯河原
寿光会という30年の老人施設運営のノウハウがある団体と、大和ハウスグループが合併してできた老人施設だ。まずは、見学した際に撮影した写真で現地の様子をお伝えしよう。
≪緑深き居室≫
≪自炊ができるキッチンつき≫
≪大浴場は、もちろん温泉!≫
≪洗い場には仕切りがある≫
50.74㎡の居室で入居金、およそ2,700万円
そもそも。老人ホームに入居するには、いくら必要かご存じだろうか?
上記の居室は50.74㎡で、76歳~85歳の入居であれば、最初に約2,700万円かかる。(入居年齢によって、初期費用は異なる)
毎月の諸費用としては、管理費が、約13万円(夫婦の場合)。食事を毎食お願いすると、この他に約13万円ほどかかる。(夫婦で試算)
「食事づくりが億劫になる」が老人ホーム入居のキッカケ
食事を試食させてもらったが、薄味で上品なしつらえ。これだったら、「毎日の食事」として飽きることはないだろう。
私は40代後半(47歳)だが、少し年上の友人(50代)は、そろそろ親が「老人ホーム入居適齢期」を迎えている。
その友人達からの情報によれば、老いが最終段階に入ると、最初に「食事つくり」が億劫になるそうだ。惣菜ばかりを買っているわけにもいかない。
だから、「食事が毎食提供される」というのは、「親が老人ホームに入る」大きなキッカケになるようだ。
もちろん、自炊も可能だ。ネオサミット湯河原の場合、近所にAコープがあり専用の定期バスが出ているので、買い出しはそれに乗っていけば良いそうだ。
≪入居金の明細が記載されていた≫
≪薄味の食事は本当においしかった≫
買い出しバスは掲示板で告知(写真を忘れずに)
「2017年現在に40代の私」がもらえる公的年金額
ところで。「2017年現在に40代の私」が、老後を迎える時にもらえる公的年金の概算額はいくらなのだろうか?
確定拠出年金の取材を重ねる中で、何人かの専門家から聞いた話を統合すると、
夫婦ふたりで約17万円~20万円あたりではないか?
と、私は考えている。
具体的な試算をしてみた
ネオサミット湯河原で、実際に住む居室を見せてもらい、そこの具体的料金を提示してもらったことで、初めて「私の老後資金計画」を試算してみた。
私の老後資金計画
・ 76歳までに3千万円の貯蓄が必要(夫婦ふたりで試算)
・ なるべく自炊をすれば、月額の生活(ランニングコスト)は20万円くらいに抑えられるかな?
・ その他の娯楽費が、別途月額5万円で年額60万円。その分は貯蓄を切り崩すとする…
・ 90歳まで生きたとして900万円
思考停止にならないことが大切
上記の試算は、老後生活について「ド素人の主婦である私」がしたものだから、プロから見たら噴飯ものだろう。けれども、40代の今、「老後生活」について、具体的に考え始めることが大切だ。
ママ友と話していると、みんな「老後は年金がもらえないから心配」と口を揃えて言う。「じゃぁ、どうするの?」と、もう一歩突っ込んでみると、誰も何も考えていない。
「老後が心配」というのは、実は思考停止状態だ。そんな状態で、漠然とした不安を抱えているよりも、具体的な情報を収集した方が良くないか? と思う。
「情報力」は、お金より強い!?
このような経緯を辿り、40代の私ができる自助努力には何があるだろうか? と考えるようになり、私は畠中雅子さんに教えて頂いた「シニアライフ情報センター」の会員になった。
会員に送付されてくる「シニアライフ通信」には、
「老人ホームの見学ルポ」
「高齢期の【住まい】とは何か?」という特集
「セミナー&勉強会・見学会のお知らせ」
などが記載されている。
先日は、「シニアライフ通信」で告知されてきた勉強会に参加してみた。参加費は1,000円程度。
「その場に足を運ぶことでしか得られない空気感」というのは絶対にあると思うし、そこから考えたことも多々ある。そういったことも、機会があればシェアしていきたい。
好景気の時は、老人ホームの入居者が増える
ネオサミット湯河原の見学会を通じて、いちばん心の残ったのは、支配人の、こんな言葉だった。
「好景気の時は、入居者が増えるんです」
ネオサミット湯河原では、30年間暮らしている方もいるそう。30年前は、定年が55歳。
その頃に入居し、30年経って、現在85歳。30年前は日本の景気は昇り調子だったし、平均寿命が、ここまで伸びるとは思っていなかったから入居を決断されたのではないだろうか? 一方で、こんな話も聞いた。
「不景気の時は、入居を先延ばしする傾向がある」
こんなエピソードを聞いて、老人ホームに入るには、お金がかかるんだという現実を肌で理解できた気がした。
老後が「いつかやってくる漠然とした未来」ではなく、「明日の地続きにある実生活」という感覚を初めて持った。
40代から、「人生の終わり方」を考え始める
2017年1月1日から、個人型確定拠出年金の加入資格者が拡大し、「だれでも」加入できるようになったのは、マネー業界の大トピック。
けれどもママ友は、誰ひとりとして、これを話題としない。(多分、知らない人も多いのだと思う)
日本の年金制度は、欧米諸国のように、より「自助努力」の方向に舵を切っているのだと私は感じている。だからこそ、老後までの時間が、まだある40代のうちから、「私の老後生活」について考えてみることは大切だと思う。(執筆者:楢戸 ひかる)
情報提供元: マネーの達人