貸与型の奨学金を利用している学生が半数近いという現代






大学を卒業しても奨学金の返済に追われる人が多くなっています。



また生活のためにアルバイト等をしているうちに学業不振になり、止むを得ず中退して奨学金の返済だけが残ってしまうという学生も少なくありません。



それらの問題を改善することを目標に2018年度から本格導入される「給付型奨学金」。



この制度の内容については賛否両論いろいろありますが、今回は様々な奨学金や助成金制度、奨学金返済が免除されるシステムについて見ていきたいと思います





2018年度から本格導入される給付型奨学金という制度


2018年度から本格導入されることが決まった「給付型奨学金」。



この制度では1学年あたりの給付対象者が2万人程度になると言われています。



給付額は




・ 国公立大で自宅からの通学生…2万円/月 年間にして24万円



・ 国公立大で自宅外から通学生、及び私立大で自宅からの通学生…3万円/月 年間にして36万円



・ 私立大で自宅外からの通学生…4万円/月 年間にして48万円



となっています。



住民税が非課税の低所得者世帯から進学する人は毎年6万人と言われていますが、この給付型奨学金の対象者は2万人。1/3程度の学生しかフォロー出来ないことになります



また国立大の授業料は年間50万円超。私立大であれば、その倍程度が必要になることもあります



こうやって考えてみると、今回の給付型奨学金制度の規模は非常に小さいことが分かります



また給付を受ける基準には



「各学校の教育目標に照らして十分に満足できる高い学習成績を収めている者」



「教科以外の学校活動の大変優れた成果を収め、概ね満足できる学習成績を収めている者」



が挙げられています。



しかしながら経済的に厳しい状況下にいる生徒は、学習や教科以外の活動に取り組む余裕が少なく、高い学習成績や優れた成果などを残すことが難しいのが現実。



本来はそういった面を配慮できる内容にすることが望ましいと言えるでしょう。





看護師のための奨学金・助成金制度


看護師になるため看護学校で学ぶ費用を援助する奨学金・助成金制度があります。







都道府県や市町村などの自治体による看護師等修学資金貸与事業




・ 看護学生が対象



・ 看護学校卒業後、各自治体の指定する医療機関で一定期間以上働くと返済が免除となる



病院の奨学金制度




・ 病院が独自で行なう奨学金制度



・ ほかの奨学金制度との併用が可能



・ 看護学校卒業後、その病院で一定期間以上働くと返済が免除となる



これらの制度を利用する場合は就職先の病院が限られたり、一定期間に至らない時点で退職すると一括返済を求められたりといったデメリットもあるので注意が必要です。





薬剤師や介護福祉士の場合


医療・福祉関係では看護師のほかにも似たような制度が導入されているものがあります。



前述の看護師の場合と似たようなシステムを導入しているのが薬剤師



薬学部の修業年限が6年であることから、その期間ずっと奨学金の貸与を受けていると膨大な金額になります



当然返済も長期に渡ってしまうため、その負担は非常に大きくなっています。



これらの事情から薬局独自の奨学金制度を設けているところも多く、卒業後に一定期間勤務した場合、奨学金の返済が免除されるというシステムになっている薬局もあります



また介護福祉士の場合、「厚生労働省 介護福祉士等修学資金貸付制度」があり、2年間で160万円の修学資金の貸付を受けることが出来ます。



養成施設卒業後、原則として5年間介護業務に従事することで、貸付金の全額が返還免除になります。



こういった制度を利用することで夢を諦めずに済むだけでなく、将来の負担も減らせるのは大きなメリットと言えるでしょう。





給与に奨学金返済額を上乗せするシステム


メガネのチェーン店「オンデーズ」では2014年に「奨学金返金救済制度」をスタート。



奨学金の返済を続ける従業人に対して、毎月の給与に返済分を上乗せして支給するというシステムです



社内で行なわれる面接等を通過すれば奨学金返還終了、または退職時までこの上乗せが続きます。



「奨学金の返済があるから」と給与面のみを重視し、本来の希望ではない仕事に就く若者を減らしたいという社長の思いがきっかけとなった取り組みです



大学生の半数近くが奨学金を利用していると言われている現代。企業側が有能な人材を確保するためにも、非常に重要なシステムと言えるでしょう。



奨学金返済を支援する企業が続々登場






シノケングループ(不動産業)




不動産業のシノケングループでは2017年4月入社の新入社員から、入社後5年間毎月の奨学金返済額の50%を「奨学金支援手当」として支給することを決めました



新入社員だけではなく、入社後5年以内の社員も対象とするそうです。



JPホールディングス(子育て支援企業)




子育て支援企業のJPホールディングスは保育士を志望する学生を対象にした奨学金制度を始めました。



卒業後はグループ内で子育て支援を担当する日本保育サービスに就職することが条件となっています。



奨学金は月額5万円、年額60万円を最大2年間(120万円)支給されます。



返済の必要はありません。応募資格は「経済上の理由で学資に当てる」、「学業優秀」、「品行方正」など、いくつかの要件があります。



ノバレーゼ(ウェディングプロデュース・レストラン運営)




ウェディングプロデュース・レストラン運営のノバレーゼでは「奨学金返済支援制度」を導入。



対象者は奨学金の返済残高がある勤続年数5年と10年の正社員となっています



この2回の節目の年に、奨学金未返済分に対しそれぞれ上限100万円を支給。全社員が対象となっています。



目的は「職場環境の向上」、「優秀な学生の確保」、「社員のモチベーションアップ」、「長期雇用促進」。



奨学金受給者である社員の発案から導入が決まったそうです。





新潟県の取り組み


新潟県の自治体では地元の大学、専修学校等に通う学生の奨学金を一部肩代わりする制度がスタートしています



柏崎市では卒業後に地元で就職することを条件に奨学金の返済補助を行なっています。



また上越市では、市外の大学等に公共交通機関で通う学生の定期代を貸し付けるという制度を2016年4月から始めました。



1か月5万円が上限となっており、こちらも卒業後に市内に定住するのであれば、返済額の2/3を免除してもらえます。



進学や就職で若い世代が県外に出て行ってしまうのを防ぐとともに、県内企業の人材確保が目的です





福井県の取り組み


福井県では県外の大学等を卒業後に、県内の「農業・林業・漁業」、「建設業」、「情報サービス業」、「薬剤師・看護職・歯科衛生士」などの職種への就業を希望する人を限定とした「福井県U・Iターン奨学金返還支援補助金制度」を行なっています。



県外の大学等を卒業後、正規雇用により「県内の事業所等に就職を希望する人」、「県内に定住する見込みの人」、「日本学生支援機構の奨学金の貸与を受けている人」といった要件に当てはまる必要があります。



県内に在住し、県内の企業等に5年間勤務することを条件に最大で100万円の支援を受けられます。この制度の募集人数は10人程度となっています。





鳥取県の取り組み


鳥取県では、県内の「製造業」、「情報通信業」、「薬剤師の職域(薬局・医薬品の製造・販売、病院など)」、「建設業・建設コンサルタント業」、「旅館ホテル業」への就業を希望する人に奨学金の返還助成を行なっています。



無利子の奨学金の貸与を受けている人




大学院、薬学部(6年間)…216万円

大学(4年間)     …144万円

高専、短大(2年間)  … 72万円



有利子の奨学金の貸与を受けている人




大学院、薬学部(6年間)…108万円

大学(4年間)     … 72万円

高専、短大(2年間)  … 36万円



卒業後に県内の対象職種に正規雇用として就職し、8年間継続して勤務する見込みであることが条件です



35歳未満であれば既卒者も対象になります(すでに県内在住で県内企業に正規雇用で就業している人は対象外)。





奨学金の返済で苦しむことがない社会に






自治体や企業、また職種によって様々な奨学金制度、助成制度、返済免除制度などがあります。



更に2018年度から本格導入となる給付型奨学金についても注目していきたいところですよね。



労働者福祉中央協議会の調査では、奨学金の借入総額の平均は1人あたり312万9千円となっています。決して少ない金額ではありません。



若い世代の誰もが平等に夢に向かって踏み出せる社会にしていくことが、私達大人の責任とも言えるのではないでしょうか。(執筆者:藤 なつき)



情報提供元: マネーの達人
記事名:「 「給付型奨学金」が本格導入へ 貸与型の返済を支援する企業、地方の取り組み、助成金制度も紹介します