「税制改正大綱」
2016年12月8日に与党は「税制改正大綱」を決定し、2017年1月には通常国会で議論され、3月末の年度内には成立の見通しです。
税制大綱とは
税金の税率や課税の対象をどのように見直すかなど、今後の検討課題を盛り込んだ文書。
今後どのように働けばよいのか
・ パートで働く方にとって今後どのように働けばよいのか
・ 影響が大きそうな配偶者控除や配偶者特別控除がどうなるのか
いわゆる「年収の壁」とは何かを中心に、夫が会社員、妻がパートで働いていると仮定して、一般的な年収のご夫婦を事例に考えてみましょう。
配偶者控除と配偶者特別控除の年収基準が拡充
今回の改正案で配偶者控除を受けられる年収基準が103万円以下から150万円以下に拡充されそうですが、夫が妻を扶養している場合には配偶者控除といい、夫が親や子供を扶養している扶養控除と実質は同じです。
配偶者特別控除もそれに伴って拡充され、配偶者控除の年収基準150万円を超えても収入金額により段階的に受けられます。
代表的な「年収の壁」
a. 妻の年収106万円以上
妻が従業員501人以上の企業で働く場合の社会保険加入基準
平成28年10月から、妻が以下のすべての要件を満たす場合には、社会保険加入が義務となりました。
・従業員501人以上の企業で働く場合
・週の所定労働時間が20時間以上
・1年以上継続して雇用見込み
・月額賃金8万8,000円以上(年収106万円以上)
・学生ではない
b. 妻の年収130万円以上
妻が夫の社会保険の被扶養者になれない基準
妻の年収130万円以上になると、夫の社会保険の被扶養者になれないため、自分で国民健康保険や国民年金に加入するか、妻自身の勤務先で社会保険に加入するかのいずれかになります。
妻が勤務先で社会保険に加入するには従業員501人未満の場合は、フルタイムの正社員の日数や時間等で概ね4分の3以上の基準に該当すれば、年収は関係なく130万円未満でも、妻自身が被保険者となります。
c. 妻の年収150万円以下
夫が配偶者控除を受けられる基準
配偶者控除の適用要件が今までの妻の年収103万円以下から150万円以下へ引き上げられます。
それに伴って配偶者特別控除の適用要件も103万円超~141万円未満から150万円超~201万円未満へ引き上げられます。
配偶者控除や配偶者者別控除は夫の年収が1,120万円超の場合は減額され、1,220万円超の場合受けられません。
今回の改正案のねらい
今まで配偶者控除の適用となる103万円を気にして勤務時間を抑えていた妻が時間を気にせず働けるように150万円まで拡充しました。
財務省の試算では約300万世帯で減税になる一方、夫が高額の年収の場合には制限されるため約100万世帯が増税となるようです。
悩みは「社会保険加入」
パートで働く方にとっては、自分の働き方をどうするか悩んでいる方も多いと思います。
代表的な「年収の壁」はa~cですが、影響の大きいものとしては
1. 妻自身で社会保険に加入する
2. 夫の社会保険の被扶養者となる
この基準である106万円や130万円の壁です。
社会保険加入の利点
夫の社会保険の被扶養者の場合は、妻は保険料の負担なく健康保険にも第3号被保険者として国民年金にも加入していることになり、非常に有利と言えます。
妻自身が勤務先の社会保険の加入することになった場合には、給与から社会保険料が控除されることとなりますが、
・ 会社が折半で負担
・ 病気で働けない時に傷病手当や産前産後の休業に対して出産手当金
・ 妻自身の厚生年金も支給
など決して悪い事ではありません。
パートでの働き方の注意点
・ 妻の年収が130万円以上
・ 夫の社会保険の被扶養者になれない
・ 日数や時間などで正社員の4分の3以上の勤務基準に該当しない
以上の場合は妻自身の勤務する会社の社会保険にも加入できません。
妻は国民健康保険や国民年金を負担する事になり、非常に重い負担となってしまいます。
忘れてはいけない大きな問題
「年収の壁」とは別に忘れてはいけない大きな問題として、多くの会社で支給されてきた、扶養手当(家族手当)が支給されなくなる可能性があります。
夫の会社の給与規程によりますが、夫の給与に妻の扶養手当(家族手当)として月額1万5千円~2万円など高額な場合もあります。
今まで支給基準を妻の年収103万円以下としてきた会社が多かったため、支給基準が150万円に変更になるかにも注意が必要です。(執筆者:後藤 誠道)
情報提供元: マネーの達人