2017年1月から個人型確定拠出年金の加入対象者が拡大されます。
配当金や売却益のみ非課税となるNISAと違い、個人型および企業型確定拠出年金は掛け金の全額所得控除、運用益の非課税、引き出し時は退職所得控除もしくは公的年金等控除が受けられます。
今までは、この税の優遇を受けられなかった専業主婦や公務員も受けられるようになり、企業年金のある会社のサラリーマンも個人型確定拠出年金として、利用することができます。
メリットは大きいですが
例えば、30歳の方が老後のために定期預貯金で積み立てたとしても、今現在の定期貯金の金利0.01%にしかなりません。
しかし、所得控除だと課税所得が195万円以下の方の場合、所得税率は最低税率の15%となるため、年平均利回り0.5%(15%÷30年)となります。
課税所得が800万円の方の場合、所得税率は33%となるため、年平均利回りは1.1%(33%÷30年)となります。所得の多い方ほど、節税効果は大きくなります。
もちろん定期預金としての金利も付きますので、所得控除分がまるまる普通の積立定期預貯金よりもお得になります。
積立金の引き出しは、原則60歳以降なので、年齢が60歳に近付くほど、所得控除の年平均利回りは高くなっていきます。(59歳時点では1年後に引き出せるため税率分がそのまま利回りになる)
こんなに大きなメリットがあるのに、なぜ1年待たなければならないのでしょうか?
メリットを得られるか
その前に、そもそもこの最大のメリットである所得控除を受けられない方、他にもっと有利な方法がある方、加入すべきでない方がいます。
所得控除を受けられない人方
収入を年収103万円以下に抑えている方は、そもそも所得税を納めていないので控除する所得税がありません。
また、年収が103万円以上あっても、個人型確定拠出年金の掛け金1年分より収める所得税が少ない場合、所得税の範囲でしか税効果はありません。
ほかに有利な方法がある方
勤め先に企業型確定拠出年金があり、マッチング拠出ができる方は、まずマッチング拠出を考えてください。
マッチング拠出とは、会社負担の確定拠出年金に、自己負担で掛け金を上乗せできる制度です。
個人型確定拠出年金に加入する場合、初期費用として加入金、年間(月間)費用として口座管理手数料がかかります。
企業型確定拠出年金の場合、この経費は会社負担になるため余分な経費が掛かりません。
ご自身の勤め先にマッチング拠出の制度があるのか、是非確認してください。
加入すべきでない方
確定拠出年金は、60歳まで原則引き出しができません。「まとまったお金が必要になったから」といって引き出すことができません。
住宅購入資金、教育費などの積立ができていて、予定外の支出にも対応できる貯蓄があり、かつ老後に備えた貯蓄ができる人でないと、加入はお勧めできません。
1年かけて体制づくり
それだけの家計を把握、管理している人がどれだけいるでしょうか? なかなかできないですよね。
だからと言って老後に向けた準備を全くしないわけには行けないし、老後資金作りでこの制度ほど有利なものはありません。
では、それでも1年待った方が良いのはなぜなのでしょうか? 2つ理由があります。
個人型確定拠出年金(iDeCo)への加入はもう1年待ったほうが良い2つの理由
理由1:継続可能で、無理のない、適正な積立額を決めたほうが良いため
掛け金は月額5,000円から1,000円単位になります。
毎月何に使ったかわからないお金はありませんか? 家計を見直して 5,000円以上を目標に、なんとか老後準備のための貯蓄ができる余裕をつくりましょう。
半年以上はそのお金を普通預金として積み立てて、想定外の時のための余剰預金としてください。
その間に「今の積立金で今後もやっていけるのか」を判断し、1年かけて継続可能で、無理のない、適正な積立額を決定してください。
理由2:経費はどんどん安くなるため
先にお伝えしたように、個人型確定拠出年金には初期費用として加入金、年間(月間)経費として口座管理手数料がかかります。
また、投資信託で運用する場合、信託報酬も投資信託を保有している間ずっと支払わなければなりません。
個人型確定拠出年金の加入は一つの「運営管理機関」としか取引できません。
そして「運営管理機関」によって、運用商品・信託報酬・過入金・口座管理手数料・サービスが違います。どの「運営管理機関」が自分に適しているのか、1年かけて選んでください。
各「運営管理機関」は今現在、シェア争いが激しいため、値下げ競争が激化しています。
われわれが1年間じっくりと掛け金の金額・運営管理機関・運用商品を選んでいるうちに、ずいぶんと個人型確定拠出年金のコストも下がっていることでしょう。(執筆者:田島 稔之)
情報提供元: マネーの達人