自筆の遺言の印鑑は実印でなくてもよい。改正で押印は任意に、ただし今書くなら必要
自筆の遺言の印鑑は実印でなくてもよい。改正で押印は任意に、ただし今書くなら必要

遺言を書き終えて、最後に押す印鑑で手が止まることがあります。実印に限るのか、押し忘れたらどうなるのか。令和8年6月24日に公布された改正法で押印は任意になりますが、施行は公布から1年以内の政令で定める日で、それより前に書いた遺言は今の決まりで扱われます。今書く遺言で外せない形を、改正の中身とあわせて確かめておきましょう。

遺言を書き終えた70代の男性が、印鑑の前で迷ったこと

「実印じゃないと、だめなんだろうか」。遺言を書き終えた70代の男性は、引き出しの印鑑を探しながらこうつぶやきました。すぐに見つかったのは、宅配便の受け取りに使う認印だけです。押し忘れたまま封をしたらどうなるのか、法律が変わって押印が要らなくなると聞いたけれど、今書く遺言はどうすればいいのか。迷いは次々に浮かびます。

確かめたいのは、今の民法が求める形、どんな印なら足りるのか、押印を任意にする改正がいつ施行されるのかの3つです。

今の民法第968条が求める、自書と押印

まず押さえたいのが、民法第968条です。自分で書く遺言は、遺言者が全文と日付、氏名を自分の手で書き、そこに印を押す形が求められています。財産目録を添えるなら、目録は自書しなくてかまいませんが、目録の1枚ごとに(両面に記載があれば両面に)署名して印を押します。書き損じを直すときも、場所を示して変更した旨を書き添え、署名したうえで変更した場所に印を押さないと、その変更は効力を生じません。

気になる印の種類について、第968条はどの印かまでは定めていません。最高裁判所は平成元年2月16日の判決で、押印は指印で足りると判断し、自筆証書遺言に使う印章にはもともと何の制限もないと述べています。実印に限られるわけではないということです。ただし同じ判決は、指印だと本人の死後に照らし合わせる印影がないことにも触れています。押し忘れた遺言は第968条の形を欠くことになるので、印まで押して仕上げることが大切です。

改正で押印は任意に、施行より前の遺言は今の決まりで

法務省の案内では、令和8年6月24日に公布された民法等の一部を改正する法律(令和8年法律第45号)で、遺言の押印が任意になります。法務省の概要資料は、押印に関する慣行や法意識が変わりつつあることを背景に挙げ、自筆証書遺言などの押印の要件を廃止して任意にするとしています。施行は、押印の任意化等について「公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日」です。

自筆の遺言の印鑑は実印でなくてもよい。改正で押印は任意に、ただし今書くなら必要

見落としやすいのが改正法の附則です。施行の日より前にされた遺言は、改正後の第968条などにかかわらず従前の例によると定めています。今書く遺言は施行後も今の決まりで判断されるため、押印は省けません。

今書く遺言は、印を押して仕上げる

今書く遺言は、全文・日付・氏名を自書して印を押し、財産目録には1枚ごとに署名と押印をしておきましょう。印は実印に限られません。施行の日は法務省の案内で確かめ、書き方に迷ったら法務局や公証役場、法律の専門家に相談を。改正を待たずに、今の決まりどおりに仕上げることが家族への確かな備えになります。

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情報提供元: マネーの達人
記事名:「 自筆の遺言の印鑑は実印でなくてもよい。改正で押印は任意に、ただし今書くなら必要 」