会社に黙って副業は危うい。国のモデル就業規則は「届け出」が前提
秋の夜長に、得意なイラストで依頼を受けてみたいと考える方もいるでしょう。気になるのが勤め先との関係です。副業は禁止だと思い込む人もいれば、何も言わずに始めてよいのか迷う人もいます。厚生労働省のモデル就業規則は、勤務時間外の副業・兼業を認めつつ、会社への届出を組み込んだ形です。始める前に就業規則で確かめたいことを紹介します。
休日にイラストの依頼を受けたい30代会社員の迷い
「休みの日にイラストを描いて、依頼を受けてみようかと思っているんだ」メーカーで事務職として働く30代の会社員は、昼休みに同僚へそう話しました。返ってきたのは「それ、会社に言った?」という一言です。趣味の延長のつもりだった会社員は、そこで手が止まりました。
帰宅して社内の規程集を開くと、副業・兼業の条はありました。ただ、届け出ればよいのか、許可が要るのか、依頼を受けて描く仕事も対象なのかは、すぐには判断がつきません。
国のひな形が示す「勤務時間外はできる」の中身
手がかりになるのが、厚生労働省のモデル就業規則です。同省は平成30年1月にモデル就業規則を改定し、「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと。」という規定を削除して、副業・兼業の規定を新設しました。令和7年12月版では第70条で、労働者は勤務時間外に他の会社等の業務に従事できると定めています。
同じ条は、会社が届出に基づいて禁止や制限できる場合も挙げます。労務提供上の支障、企業秘密の漏洩、会社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為、競業による企業利益の侵害の4つです。
見落としやすいのが、副業・兼業の範囲です。厚生労働省のモデル就業規則の解説によると、雇われて働く形だけでなく、自ら事業を営む場合や、請負・委託・準委任の契約で請け負う場合も含みます。依頼を受けて描く仕事も、会社のルールと無関係とは言い切れません。
勤め先の決まりで確かめたい4つの点
厚生労働省のモデル就業規則は、あくまでひな形です。解説にも、就業規則の内容は事業場の実態に合ったものとしなければならないとあります。従うのは勤め先の就業規則なので、次の点を確かめます。
厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(策定は平成30年1月、改定は令和2年9月と令和4年7月)によると、ほかの会社に雇われて働く人でも、労基法の労働時間規制が適用される労働者なら、同法第38条第1項で本業と副業先の労働時間が通算されます。なお、労働契約にあたるかどうかは、契約の名前ではなく実態に基づいて判断されます。
始める前に会社と話しておくのが近道
就業規則を読み、届出の方法を確かめてから依頼を受けるほうが、後の行き違いを防げます。厚生労働省のモデル就業規則の解説は、副業・兼業に係る相談、自己申告等を行ったことにより、企業が不利益な取扱いをすることはできないとしています。迷ったら、勤め先の人事の担当に、副業・兼業の条と届出の手順を尋ねてみてください。