公証人が作った遺言でも無効になることはある。まず公証役場で謄本を取る
親が遺した遺言を読んで、どうしても納得がいかないときがあります。公証人と証人が立ち会って作った書面だからと、そこで引き下がる必要はありません。無効になる余地がどこにあり、疑ったら何から動くのか。民法が求めている方式を手がかりにできるので、まずは遺言そのものを取り寄せておきましょう。
民法が決めている公正証書遺言の方式
遺言を作る日、公証役場では、遺言者が内容を口頭で告げるところから始まります。民法第九百六十九条は、公正証書によって遺言をするには次に掲げる方式に従わなければならないと定め、一号に証人二人以上の立会い、二号に遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授することを挙げています。口がきけない人は、通訳人の通訳による申述や自書で口授に代えることができます。
第九百六十九条第二項は、公正証書そのものは公証人法の定めるところにより作成するとしています。その公証人法第四十条は、作成した公正証書を列席者に読み聞かせ、または閲覧させ、記載や記録が正確であることの承認を得なければならないと定め、承認をした列席者は署名又はこれに代わる措置を講じるとしています。ここでいう列席者とは、遺言を頼んだ本人と、立ち会った証人や通訳人のことです。
公証役場での遺言の検索と謄本の請求
遺言があると聞いていても、公正証書の原本は保管公証役場にあります。平成元年以降に作成された遺言公正証書であれば、全国の公証役場で有無と保管している公証役場を検索でき、近くの公証役場に申し出れば調べてもらえます。この申出ができるのは、相続人などの利害関係人に限られています。遺言者が亡くなる前は、申し出られるのは遺言者本人だけです。
保管している公証役場が分かったら、その公証役場に遺言公正証書の謄本を請求します。無効を疑うかどうかは、謄本を読んでから決める話です。中身を見ないまま言い合いになると、確かめようのない記憶だけが残ります。
無効を疑うときに確かめること
謄本が届いたら、納得できるかどうかではなく、方式に当てて読みます。誰が立ち会ったかも書面から追えます。公証人法第三十八条が、証人を立ち会わせたときはその旨と事由、そしてその住所及び氏名を公正証書に記載または記録しなければならないと定めているからです。加えて、民法第九百七十四条は遺言の証人や立会人になれない人を定めているので、立ち会った人がそこに当たらないかを見ておきます。
もう一つが、遺言をした時に判断する力があったかどうかです。民法第九百六十三条は、遺言者は遺言をする時においてその能力を有しなければならないと定めています。
争うなら家庭裁判所の調停から
家事事件手続法第二百五十七条は、家庭裁判所で調停ができる事件について訴えを起こそうとする人は、まず家事調停を申し立てなければならないと定めています。まとまらなければ遺言無効確認の訴えに進みますが、裁判所が調停に付することを相当でないと認めるときはこの限りでないとされ、事案によって進み方は変わります。まずは公証役場で謄本を手にするところから始めましょう。