借金の総額が分からないまま相続。限定承認は全員で申述し、公告と弁済まで続く
借金の総額が分からないまま相続。限定承認は全員で申述し、公告と弁済まで続く

親が自営業だと、取引先や金融機関への借入がどれだけ残っているのか、相続人にはつかめないことがあります。そんなときに選べるのが、相続で得た財産の範囲でだけ債務を引き受ける限定承認です。ただし、家庭裁判所に書類を出せば終わり、という制度ではありません。その後に何が始まるのかを、順を追って紹介します。

自営業だった親を亡くし、借入の全体像がつかめない50代の戸惑い

「取引先にも銀行にも借りていたようで、どこにいくら残っているのか誰も分からないんです。」会社勤めの50代の方は、亡くなった親の帳簿を前にそう話します。手元には預金と自宅が残る一方、保証の話も出てきて、そのまま引き継いでよいのか判断がつきません。

こうした場面のために民法が用意しているのが限定承認です。相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務と遺贈を弁済すればよい、という留保を付けて相続を承認する方法で(民法第九百二十二条)、清算を終えて財産が残れば、その分は相続人のものになります。

限定承認の入口は、相続人全員がそろうこと

相続人が数人あるときは、限定承認は共同相続人の全員が共同してのみすることができます(民法第九百二十三条)。一人で決められる相続放棄と違い、誰か一人が反対すれば選べません。

期限は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内です。この期間内に相続財産の目録を作って家庭裁判所に提出し、限定承認をする旨を申述します(民法第九百十五条・第九百二十四条)。申述先は、亡くなった人の最後の住所地の家庭裁判所です。3か月で調べがつかないときは、相続の承認又は放棄の期間の伸長を申し立てる道もあります。

受け付けられた後に動き出す、清算の段取り

相続人が数人あるときは、家庭裁判所が相続人の中から相続財産の清算人を選任します(民法第九百三十六条)。清算人が相続人に代わって弁済を進めます。

次に、相続債権者と受遺者に対し、限定承認をしたことと、一定の期間内に請求を申し出るべき旨を公告します。知れている相続債権者と受遺者には、各別に申出の催告もします。申し出る期間は「二箇月を下ることができない」とされ(民法第九百二十七条)、その期間が満了した後に、期間内に申出をした相続債権者と知れている相続債権者へ、債権額の割合に応じて弁済します(民法第九百二十九条)。受遺者への弁済は、その後になります(民法第九百三十一条)。

弁済のために相続財産を売る必要があるときは、競売に付すのが原則です。ただし、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従って価額を弁済すれば、その競売を止めることができます(民法第九百三十二条)。住み続けたい自宅を相続人の側で買い受ける道が、ここにあります。

借金の総額が分からないまま相続。限定承認は全員で申述し、公告と弁済まで続く

税の期限まで見てから決める

限定承認に係る相続では、亡くなった人がその時の価額で譲渡所得の対象となる資産などを譲渡したものとみなされます(所得税法第五十九条)。必要な場合、相続人は、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内に準確定申告をします。全員の合意、家庭裁判所での手続き、債権者への清算、そして税。どこまで引き受けられるかを家族で確かめたうえで、選ぶかどうかを決めてください。

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情報提供元: マネーの達人
記事名:「 借金の総額が分からないまま相続。限定承認は全員で申述し、公告と弁済まで続く 」