親の家を子が代わりに売る。委任状で動けても、売主も代金も親のもの
彼岸に親と会い、家をどうするかという話が出た方もいるでしょう。親が元気なうちに親名義の家を売るなら、子が代理人として動く方法があります。ただし、契約の当事者も代金を受け取るのも親で、子は手続きを代わりに進める立場です。委任状の用意から司法書士の本人確認までの段取りを紹介します。
代理で売れるのは、親が売る意思を自分で示せるあいだ
子が親の代理人として結んだ売買契約は、親に対して直接に効力が生じます(民法第九十九条)。売主は親で、子は親のために動く立場です。委任も、親が意思表示をした時に意思能力を持っていることが前提です(民法第三条の二)。
つまり、子が代理で進められるのは、親が売る気持ちを自分の言葉で伝えられるあいだです。判断能力が落ちて事理を弁識する能力を欠く状態が続くと、後見開始の審判を経て成年後見人が財産を管理する形に変わり、親が住んでいる家を売るには家庭裁判所の許可が要ります(民法第八百五十九条・第八百五十九条の三)。委任状は親が元気なうちに書いてもらいます。
親が用意するのは委任状と印鑑証明書、子は代理人として動く
最初に確かめたいのは、家の名義が親かどうかです。売主の住所と氏名は登記記録と一致している必要があるので、法務局で登記事項証明書を取ります。次に親に用意してもらうのが、子を代理人に指定する委任状と、委任状に押す実印の印鑑証明書です。代理人が登記を申請するときは代理人の権限を証する情報を添付する決まりで(不動産登記令第七条)、法務局の記載例では、委任状に印鑑証明書と同じ実印を押し、印鑑証明書は3か月以内に作成されたものを添付します。書面申請の場合は、登記識別情報を記載した書面(封筒に入れて封をしたもの)または登記済証(いわゆる権利証)の原本も提出します。
司法書士の本人確認は、親と子の両方に行われる
売買契約と代金の受け取りが済んだら、所有権移転の登記を申請します。登記は売主と買主が共同で申請し(不動産登記法第六十条)、司法書士に委任して進めることができます。司法書士は犯罪による収益の移転防止に関する法律の特定事業者で(同法第二条第二項第四十六号)、宅地や建物の売買に関する手続きの代理を引き受けるときは、取引時確認として顧客の氏名・住居・生年月日を確認しなければなりません(同法第四条第一項、同法施行令第九条)。親に代わって子が手続きに当たるときは、親の確認に加えて子についても確認されます(同法第四条第四項)。
親の登記識別情報または登記済証を提供できないときは、登記官の事前通知か資格者代理人による本人確認情報の提供などによります(不動産登記法第二十三条)。
代金の行き先も親です。子が代理人として契約しても契約の当事者は親なので、代金は親が受け取り、親のものとして扱います。
親が元気なうちに、名義と書類から確かめる
出発点は、親が売る意思を自分で示せることです。登記事項証明書で名義を確かめ、親に委任状と印鑑証明書、登記識別情報または登記済証を用意してもらい、子が代理人として動きます。成年後見人が手続きする場合は、権限を示す登記事項証明書と、親が住んでいる家なら家庭裁判所の許可も確認します。契約の当事者も代金の受け取り手も親だと家族で共有し、迷う点は法務局や司法書士に相談しておきましょう。
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