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まず、住宅ローンの繰り上げ返済に関する基本的な知識をおさらいしておきましょう。
住宅ローン繰り上げ返済とは、毎月の返済額とは別にまとまったお金を住宅ローンに返済することで、ローンの総返済額を減らし、返済期間を短縮する方法です。例えば、ボーナスや臨時収入があった場合に、それをローンの返済に充てることで将来の負担を軽減することができます。繰り上げ返済を行うことで、住宅ローンの残高を減らし、将来支払う利息を減らすことができます。
住宅ローンの繰り上げ返済には2つの方法があります。
返済額軽減型(減らすのは毎回の返済額)
返済期間短縮型(減らすのは返済期間・回数)
返済額軽減型は繰り上げ返済の金額分、毎回の返済額を減らす方法です。そのため返済期間は変わりません。
返済期間短縮型は繰り上げ返済の金額分、返済期間(回数)を減らす方法です。そのため毎回の返済額は変わりません。
繰上げ返済では、返済期間短縮型の方が利息を減らす効果が大きく、また少しでも早く繰り上げ返済したほうが利息を減らす効果が大きいと言われています。これをシミュレーションで比較してみましょう。以下の住宅ローンをモデルとします。
<モデル例>
借入額3,000万円・35年返済ボーナスなし・金利0.5%・毎回返済額77,875 円
◎繰上げ返済なしで最終回まで返済した場合の総支払利息額2,707,500円(*金利変更なしと仮定)
返済期間短縮型と返済額軽減型の比較
【返済額期間短縮型の場合】
残り返済期間 30年→26年4ヶ月 毎回返済額77,875 円→77,875円で変わらず
減少する利息額:452,570 円
【返済額軽減型の場合】
残り返済期間 30年→30年で変わらず 毎回返済額77,875 円→68,876 円
減少する利息額 230,584 円
このように返済額軽減型より返済期間短縮型の方が、減少する利息型は大きいことがわかります。
繰り上げ返済するタイミングの比較
【5年経過時に300万円繰り上げ返済の場合】
残り返済期間 30年→26年4ヶ月
減少する利息額:452,570 円
【10年経過時に300万円繰り上げ返済の場合】
残り返済期間 25年→21年5ヶ月
減少する利息額:368,100 円
このように5年経過時の方が10年経過時よりといったように、少しでも早く繰り上げ返済した方が利息が減る効果は大きいことがわかります。
一般的に返済額軽減型は毎月の返済額を減らしたい人や、将来的に収入が減少することを心配している人に向いています。例えば家計に余裕を持たせたいとか、育児・教育費用の負担が増える時期に備えるためなどに選ばれることが多いものです。
次に返済期間短縮型ですが、こちらは早くローンを完済したい人や、将来の金利上昇リスクを避けたい人に向いています。例えば早く完済することで、その後の旅行や趣味など、他の目的に資金を使いたい場合に適しています。ただし、どちらが自分に向いているのかは、その人の考えや生活スタイルなどにより様々ですので、最終的には自分が何を目指しているかを重視して決めるべきでしょう。
繰り上げ返済を検討する際、「繰り上げ返済と運用、どっちがいいの?」という疑問を持つ方もいるかもしれません。そこで銀行員である私は、基本的に繰り上げ返済をおすすめしています。
その理由は2つあります。
理由1.運用よりも、繰り上げ返済の方が確実だと言えるから
運用は、必ずしも利益が出るとは限りませんし、元本割れのリスクもあります。いっぽう繰り上げ返済では確実にお借入残高を減らし、利息を減らすことができます。
理由2.繰り上げ返済を希望する人に運用を提案すると、責任が生じるから
お客様が繰り上げ返済を希望されている場合、「運用の方がお得ですよ」と安易に提案することはできません。なぜなら運用にはリスクが伴うため、お客様の状況を十分に理解した上で、慎重に判断する必要があるからです。もちろん、お客様のリスク許容度やライフプランによっては、運用をおすすめする場合もあります。しかし、基本的には、繰り上げ返済を希望される方には、繰り上げ返済をおすすめしています。
繰り上げ返済には、メリットだけでなく、デメリットや注意点もあります。
繰り上げ返済を行うことで、住宅ローンの残高が減り、将来支払うべき金利が減ります。
繰り上げ返済によって返済期間が短縮されれば、借金生活から解放される時期が早まります。これにより、老後資金の準備や、新たな投資など、未来の選択肢が増えます。
繰り上げ返済は、早ければ早いほど効果的です。返済期間が残りわずかになってから繰り上げ返済を行っても、利息軽減効果は小さくなってしまいます。
金融機関によっては、繰り上げ返済に手数料や違約金がかかる場合があります。事前に確認しておきましょう。
住宅ローン減税を受けている場合、繰り上げ返済によって返済期間が10年未満になると、控除が受けられなくなる場合がありますので、注意が必要です。
住宅ローンには、団体信用生命保険(団信)が付帯しているのが一般的です。団信は、契約者が死亡した場合、住宅ローンの残債が免除される制度です。繰り上げ返済によって返済期間が短縮されると、万が一の際に団信の保障を受けられる期間が短くなってしまいますので、この点も考慮して、繰り上げ返済のタイミングを決めるようにしましょう。
住宅ローンの繰り上げ返済は、計画的に行うことで、大きなメリットを得ることができます。しかし、注意点もありますので、しっかりと理解した上で、ご自身の状況に合わせて判断することが大切です。この記事が、あなたの住宅ローン繰り上げ返済の判断材料になれば幸いです。