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「住宅ローン金利はもう引き上げられていますか、それともこれからですか?」
「自分のローンは変動金利だけど、金利が上昇するときどうなるのかよくわからない!」
「ゼロ金利解除から金利のある世界へ」最近良く見聞きするこういったキーワードも、わかっているようでその内容をしっかりと把握できている人は決して多くないと思います。
それが自分にとってどのような影響があるかを考えるのも難しいです。
近年、世界的なインフレや各国の金融政策の変化を受けて、住宅ローン金利は上昇傾向にあります。
それは変動金利だけでなく、固定金利型の住宅ローンでも、長期金利の上昇に伴い、金利が引き上げられています。
住宅ローンを返済中の人は、自分のローンが今後どうなるのか不安
住宅購入を検討されている人にとっては、住宅ローン金利の動向が気になる
住宅ローンを組むのは得策なのか?と悩む
この記事では、銀行員が住宅ローン金利の状況や、今後の見通しについて、わかりやすく解説します。
住宅ローンの金利について考える前に、基本事項を解説します。
住宅ローン金利について、基本事項は以下のとおりです。
住宅ローンの金利は変動金利と固定金利という2種類があります。
変動金利は、定期的に金利が見直されるタイプです。
半年に一度のタイミングで利率が見直されるため、景気の動向に伴って金利が変動するのが注意点です。
固定金利はさらに2つに分かれます。
(1)返済がスタートしてから一定の期間は金利が変わらない「固定期間選択型」
(2)完済まで金利が変わらない「全期間固定金利型」です。【参考(1)】
変動金利型
住宅ローンで多数を占めるのが変動金利で、定期的に金利が見直されるタイプです。
基準になるのは「短期プライムレート」(信用力の高い企業に銀行が融資する際に適用される優遇金利のこと)です。
なおネット銀行は、独自の基準で変動金利を決定するところもあります。【参考(2)】
基準金利、適用金利、金利の優遇
住宅ローンの金利には、基準金利と適用金利があります。
(基準金利・店頭金利)
基準金利は店頭金利とも呼ばれ、市場金利などを基にして金融機関がそれぞれの基準で定めています。一般的な商品の「定価」にあたる金利です。
(適用金利)
適用金利は、基準金利から所定の利率を引き下げ、契約者それぞれに適用される金利で、借入金利とも呼ばれます。
(金利の優遇)
銀行などの金融機関は審査によって借り手の信用力を評価し、基準金利からどれだけ優遇するかを決めます。
金融機関の審査によって引下率は異なりますが、変動金利では最大2.1%程度の優遇があります。
変動金利の仕組み「5年ルール(返済額5年間固定方式)」「125%ルール」
最短でも5年ごとに返済額を見直す「5年ルール」と、金利の見直しによって返済額が増加する場合の一回の上昇幅は125%までという「125%ルール」が設けられています。
一部の金融機関は5年ルール、125%ルールを用意していない場合もあります。
【参考(1)】
金融政策
物価が上昇すると、相対的にお金の価値は下がります。
たとえば昨日まで100円で買えたハンバーガーが1,000円になればく値上がりであると同時に、円=お金の価値が10分の1になったとも考えられるのです。
これが「インフレ」の簡単な定義です。
国内経済の安定が使命である日本銀行は、インフレを抑えるために金利を引き上げる傾向があり、これが今般の「ゼロ金利解除、利上げ」につながります。
金融機関の資金調達コスト
金融機関の経営状況や資金調達コストの変化によっても、金利は変動します。
金利の上昇局面では預金金利も上昇します。
預金は銀行にとっての「仕入れ」(集めた預金をもとにして住宅ローンなど融資でお金を貸す・預金金利と融資金利の差額がいわゆる「利鞘・りざや」)なので、仕入れ価格が上げれば商品価格が上がるのと同じです。
そのため住宅ローン金利(銀行から見れば「商品の価格」)も引き上げをしないと、最終的に銀行の経営は成り立たないという理屈です。
【参考(1)】
【参考(2)】
【参考(3)】
今後の住宅ローン金利の動向は、世界経済や政府・日銀の金融政策など様々な要因に左右されます。
そのため、正確な予測は困難です。
しかし以下のような状況がことが専門家に予想されています。
変動金利は、日銀政策や動向に連動し、緩やかに上昇を続けると考えられる
固定金利は、長期金利の上昇に伴い、今後も上昇する可能性がある
住宅ローン金利の上昇は、住宅購入を検討している方にとって、以下のような影響が考えられます。
住宅購入費用の増加
金利上昇により毎月の返済額が増加し、住宅購入にかかる総費用も増加する
住宅購入の「様子見」
金利をにらみ購入のタイミングを「様子見」する人が増え、住宅市場が冷え込む可能性もある
変動金利型と固定金利型、どちらを選ぶべきですか?
<回答>
優劣はありません、選択は自由です。
変動金利と固定金利はそれぞれに特徴やメリット・デメリットがあります。
そのためどちらを選ぶべきかは、自身で決めるしかありません。
変動金利:金利が変動するリスクがあるが、固定金利より金利は低い
固定金利:金利が変動するリスクがないが、変動金利より金利は高い
金利が有る世界に突入しても、まだ変動金利は低水準が続き、更に選択は悩ましいところです。
【ケーススタディー】
純粋な変動金利を選んだあとで、どうしてもミックス型の固定金利にしたいと要望されたお客様がいました。
変更はできないことを説明しましたが、どうしても変えたいと強く希望され、このケースでは最初に説明で不足な点があったこともあり、特別に変更対応をしました。
このケースでは新しくミックス型の住宅ローンを借りて、いままでの変動型住宅ローンを完済するという、同じ銀行内での借り換えとして対処です。
手続き上、担保を新たに設定してから古い担保を抹消したり、新たに住宅ローン保証料を払うことになり、お客様の負担は数十万円という大きな金額になりました。
そのあと数ヶ月してから、今度はまた変動金利にしたいとの依頼がありましたが、再度の変更は対応できないとお断りしました。結局、納得できず他の銀行に借り換えをされました。
事後処理で、これまで払った諸費用と差し引きにより、損失のほうが大きい結果だと思われました。
繰上返済は、どのようなメリットがありますか?
<回答>
借入が減るので、支払うお金が減るという事実は間違いありません。
金利上昇局面では借金は少ないほうが、支払う金利も少なくて済みます。
しかし、この当たり前のことを、特別なことのように表現するような記事には注意が必要です。
「繰り上げ返済のメリットは借入が減ることです。いっぽうデメリットは、繰り上げ返済することで手元資金が減ることです。」
このような文章は、そのあと「ですから、繰り上げ返済せずに投資でお金を増やしましょう。繰り上げ返済せずに、年利3%で運用した場合、これだけ増えます!」と続きます。
しかし年利3%のリターンが確約されているような運用商品は、私の知る限り存在しません。
【ケーススタディー】
私が繰り上げ返済を受け付けたお客様がいました。
事務的な手続きをして返済も完了したのですが、数週間後に「この前の繰り上げ返済を取り消して、お金を返してほしい」というご依頼がありました。
繰り上げ返済をしたあとで、まとまった金額が必要になる事情が発生して、手元に残ったお金だけではどうしても足りなくなり、銀行に頼みに来られたようでした。
しかしながら、一度繰り上げ返済した借入をもとに戻し、お金も返却することは不可能です。
預金であれば解約して取り戻せますが、住宅ローンは借金、借りているお金の一部をまとめて払っただけなので、解約や払い戻しはできません。
あやふやな予想や断言には要注意です。
その結果についてはいっさい責任を取ることはありません。
金利がどうなるかなどを正確に予想することは不可能だと銀行員の私は考えています。
そのため「金利は◯◯になります!」と断言している事に賛同はできません。
情報の出どころはどこなのか?
ただの個人的見解ではないか?
などを見極める事が重要です。
危機感をあおるような記事は「このままだとマズイので、これがおすすめです!」などとサービスなどに誘導する形式も目立ちますので、注意が必要です。
私が記事を執筆するときには、政府や日銀など公的な情報源で関連する事項がないか探します。
今回のように住宅ローンなど金融機関が関連する場合では銀行公式ページで情報を調べています。
いま、住宅ローンを返済中の人なら、金利がどうなるか様子を見ると決めた場合には取引銀行の公式ページを見るようにしてください。
住宅ローンの金利についてなら「お知らせ」「ニュース」「プレスリリース」などに関連情報があるはずです。
これらは利用者に対して伝えるべき情報や注意喚起をするもので、商品への誘導と言った意図がないので信用できます。
【参考】
三井住友銀行/お知らせ/【住宅ローン】変動金利の基準金利見直しのお知らせ
【住宅ローン】変動金利の基準金利見直しのお知らせ|みずほ銀行
住信SBIネット銀行/ニュース/円預金金利およびローン金利の改定について
中央労金/重要なお知らせ/労金変動型住宅ローンプライムレートおよび短期プライムレートの利率改定について
労金変動型住宅ローンプライムレートおよび短期プライムレートの利率改定について
とにかく焦らない事が大事です。
危機感をあおるのは誘導の意図があるケースもあり、そうした意図に踊らされないことが重要です。
金利の上昇は歓迎すべきではありませんし、住宅ローンを検討している人にも、返済中の人にとっても大きな変化です。
だからこそ焦って行動せず、しっかりと正しい情報を掴み、慎重に考えていく必要があります。
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