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公的年金の保険料を納付した期間や、国民年金の保険料の納付を免除された期間などが原則として10年以上あると、老齢基礎年金の受給資格を満たします。
また老齢基礎年金の受給資格を満たしたうえで、厚生年金保険の加入期間が1月以上ある方には、老齢基礎年金の上乗せとして老齢厚生年金が支給されます。
これらの支給開始は原則として65歳になりますが、減額になっても良いのなら、最大で60歳まで受給開始を繰上げできるのです。
一方で受給開始を最大で75歳まで繰下げして、これらの金額を増やすこともできます。
前者の繰上げ受給と後者の繰下げ受給のどちらが良いのかは、昔から論争になってきました。
この論争を日本人の近年の平均寿命と国民性という視点で考えると、繰上げ受給の方が良いと思うのですが、その理由は次のようになります。
繰下げ受給は例えば老齢基礎年金は70歳から受給して、老齢厚生年金は75歳から受給するというように、受給開始の時期を分けられます。
一方で繰上げ受給は老齢基礎年金と老齢厚生年金を、原則として同じ時期から受給する必要があるのです。
繰上げ受給を利用した時の1月あたりの減額率は0.5%だったので、例えば60歳まで受給開始を繰上げした時の減額率は30%(0.5%×12月×5年)になります。
しかし2022年4月に改正が実施されたので、1月あたりの減額率は0.4%まで低下しました。
そのため例えば60歳まで受給開始を繰上げした時の減額率は、24%(0.4%×12月×5年)になります。
ただ0.4%という新しい減額率が適用されるのは、改正後に60歳の誕生日を迎える、1962年4月2日以降生まれの方です。
こういった事情があるため、現在は0.5%と0.4%の方が混在していますが、将来的には0.4%に統一されます。
それぞれの年齢の方が平均して、あと何年くらい生きられるのかを示している、平均余命という指標があります。
平均余命の中で重要なのは0歳児の平均余命であり、これは平均寿命と呼ばれています。
また繰下げ受給を推奨したり、繰上げ受給を否定したりする方は、日本人の平均寿命が年々上昇していることを、理由のひとつに挙げています。
そこで今のところは最新のデータである、2023年の日本人の平均寿命を調べたところ、男性が81.09歳、女性が87.14歳でした。
日本人の平均寿命は次のように男女を問わず、2020年に過去最高を記録した後は下降に転じたため、2023年は3年ぶりの上昇になったのです。
2020年:81.64歳
2021年:81.47歳
2022年:81.05歳
2020年:87.74歳
2021年:87.57歳
2022年:87.09歳
ただ3年ぶりの上昇といっても過去最高は更新していないので、もしかしたら日本人の平均寿命はピークを迎えたのかもしれません。
厚生労働省は日本人の平均寿命が下降に転じた理由を、新型コロナ感染症による一時的な現象と分析すると共に、これからも上昇すると予想しています。
その予想のひとつを紹介すると、2040年の日本人の平均寿命は男性が83.27歳、女性が89.63歳になるそうです。
確かに平均寿命は上昇していますが、数年前に話題になった「人生100年時代」を実現するような、大きな上昇ではないのです。
繰上げ受給と繰下げ受給のどちらが良いのかを議論する際には、損益分岐点という言葉がよく登場します。
繰上げ受給にとっての損益分岐点は、原則通りに65歳から受給を始めた方に、年金の受給総額が追い付かれる年齢になります。
1月あたりの減額率が0.4%の方が、60歳から繰上げ受給した場合の損益分岐点は、一般的には81歳くらいが目安です。
つまり81歳くらいよりも長生きするのなら、繰上げしないで65歳から受給した方が良かったのです。
この辺りは迷ってしまう点ですが、日本人の平均寿命が2020年にピークを迎えていたとしたら、追い抜かれても大きな差は付かない可能性があります。
また平均寿命から考えると男性は女性よりも差が付きにくいので、特に男性は繰上げ受給を検討した方が良いのです。
2024年8月5日に日経平均株価(東京証券取引所プライム市場に上場する225社の平均株価)が、4,451円安という過去最大の下げ幅を記録したのです。
その日の夜にニュース番組を見ていたら、大きな損失を出した日本人の個人投資家を取材していました。
ただ東京証券取引所で株式を売買しているのは、6~7割くらいが外国人投資家になるため、日本人よりも外国人の方が大きな損失を出した可能性があります。
このように日本人が他国の方よりも株式投資を好まず、資産の大部分を預貯金などの安全資産に回している理由のひとつは、損失を回避したい国民性だと思うのです。
日本では掛け捨て型の生命保険よりも、貯蓄型の生命保険が好まれる傾向があります。
また家賃を支払い続けても資産は残らないので、住宅ローンを組んでマイホームを持ちたいと考える方が多いのです。
こういった傾向や考え方も、損失を回避したい国民性の表れではないかと推測するのです。
60歳以降は給与が減少する場合が多いため、繰上げ受給に対するニーズはあると思うのですが、実際はあまり利用されていません。
おそらく損失を回避したい国民性のため、繰上げ受給を利用した時の1月あたり0.4%~0.5%の減額が、もったいないと思うのかもしれません。
ただ受給開始が遅くなるほど、「生涯に納付した公的年金の保険料の総額>生涯に受給した年金の総額」の状態で、亡くなってしまう可能性が高まります。
つまり元がとれないのですが、その他にも元をとるのが難しくなるケースがあります。
それは例えば年金制度の破綻を先延ばしするために政府が、年金の支給開始年齢を引き上げたり、年金額を大幅に減らしたりした場合です。
いずれかによって元をとるのが難しいとわかったら、損失を回避したい国民性の日本人は、他国の方より納得できない気持ちになると思います。
そのため1月あたり0.4%~0.5%の減額があったとしても、少しでも早く元をとるために、年金は繰上げ受給した方が良いのです。
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