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過去最多となる9人が立候補した自民党の総裁選挙の投開票が、2024年9月27日に実施されました。
個人的には年金支給開始80歳という改正案を、過去に主張したと話題になった小泉進次郎氏に注目していたのですが、新総裁には石破茂氏が選出されました。
また2024年10月1日に召集予定の臨時国会で石破茂氏は、次の総理大臣に指名される見通しです。
この後は衆院解散・総選挙が話題になるため、年金支給開始80歳は忘れられると思いますが、数年後に再注目される可能性があります。
もうひとつの注目点としては、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)によって運用されている年金積立金になりますが、その理由は次のようになります。
原則65歳から支給される老齢年金には、
国民年金から支給される老齢基礎年金と、
厚生年金保険から支給される老齢厚生年金があります。
前者の受給資格を得るには、公的年金(国民年金、厚生年金保険)の保険料を納付した期間や、免除を受けた期間などの合計が、原則として10年以上必要になります。
一方で後者については老齢基礎年金の受給資格があれば、厚生年金保険の加入期間がひと月だけでも受給資格を得られるのです。
ただ勤務先から受け取った給与(月給、賞与)の平均額や、厚生年金保険の加入月数を元にして老齢厚生年金を算出するため、加入期間が短いと金額が少なくなります。
こういった方が2つの老齢年金を増やす方法のひとつとして、繰下げ受給の制度があります。
また受給開始を65歳から繰下げした時のひと月あたりの増額率は0.7%、繰下げできる上限年齢は75歳です。
かつては上限年齢が70歳だったのですが、法改正によって2022年4月からは、1952年4月2日以降生まれの方であれば、最大で75歳まで繰下げできます。
これにより2つの老齢年金の最大の増額率は、42%(0.7%×12月×5年)から84%(0.7%×12月×10年)に改善したのです。
一方で老齢年金の金額が減ったとしても、65歳より早く受給したい方のために、繰上げ受給の制度があります。
また受給開始を65歳から繰上げした時のひと月あたりの減額率は0.4%、繰上げできる下限年齢は60歳です。
かつては減額率が0.5%だったのですが、法改正によって2022年4月からは、1962年4月2日以降生まれの方であれば、減額率が0.4%まで下がります。
これにより2つの老齢年金を繰上げ受給した時の最大の減額率は、30%(0.5%×12月×5年)から24%(0.4%×12月×5年)に改善したのです。
小泉進次郎氏が立候補を表明したばかりの頃、年金の支給開始は80歳でも良いと過去に主張していたというのが、SNSなどで話題になりました。
この発言について調べてみると、繰下げ受給の上限年齢が70歳だった頃に、75歳や80歳に引き上げしても良いと主張した可能性が高いので、誤った情報だと思います。
また繰下げ受給の上限年齢は前述のように、70歳から75歳に引き上げされたので、小泉進次郎氏の主張は現実になったのです。
そうなると今後の注目点は、繰下げ受給の上限年齢が80歳に引き上げされるのかになりますが、中長期的には可能性があると思います。
厚生労働省は5年ごとに実施している年金の財政検証のオプションで、次のような改正案を実施したと仮定した時の、年金の給付水準の変化などを試算しました。
現在は60歳になっている国民年金の加入上限を、65歳に引き上げする改正案
現在は70歳になっている厚生年金保険の加入上限を、75歳に引き上げする改正案
また年金制度の歴史を振り返ってみると、財政検証の中で試算が行われた改正案は、実現する可能性が高くなるのです。
国民年金の加入上限を65歳に引き上げする場合、制度全体のバランスをとるため、次のいずれかの改正を実施する必要があると思います。
繰上げ受給を廃止する(60歳から65歳までの間は、国民年金の保険料を納付する期間になるため)
老齢年金の支給開始は70歳、繰上げ受給の下限年齢は65歳、繰下げ受給の上限年齢は80歳というように、それぞれを5歳ずつ引き上げする
もし後者のように年金制度が改正された場合、小泉進次郎氏の主張が再び現実になるので、年金支給開始80歳が再注目されると思ったのです。
石破茂氏が総裁選挙の際に主張していたのは、株式の売却などで発生した金融所得に対する課税の強化でした。
そのため石破茂氏が新総裁に決まったと報道されると、夜間取引できる日経平均の先物は、現物の終値比で2,000円を超える下落になったのです。
また株価の下落を受けてSNSのトレンドには、「石破ショック」というキーワードが登場しました。
このような株価の下落が続くようだと、株式を保有していない方の生活にも悪い影響を与えます。
その理由として年金積立金は安倍総理の時代に、株式の割合が引き上げされたため、現在は次のような資産配分を目標にして運用を行っています。
国内債券:67%、外国債券:8%、国内株式:11%、外国株式:9%、短期資産:5%
国内債券:25%、外国債券:25%、国内株式:25%、外国株式:25%
また年金積立金は年金の財源として活用するため、株価の下落で年金積立金が目減りすると、年金の財源として使える金額が減ってしまうからです。
こういった点から石破茂氏の経済政策だけでなく、年金積立金の運用成績に注目すべきだと思います。
年金積立金の運用成績が悪くなると、マスコミは批判的な報道を繰り返しますが、運用成績が良い時にはあまり報道しないのです。
そのため年金積立金の運用成績は悪いという印象を持っている方が、意外に多いかもしれません。
しかしGPIFのウェブサイトを見てみると、2001年度に市場運用を始めてから、2024年度第1四半期までの運用成績は+4.47%(年率)になるため、かなり良いと思います。
また年金の財源は長期的な平均でみると、次のような割合になると試算されています。
公的年金の加入者から徴収した保険料:約7割
国庫負担(国の税金):約2割
年金積立金:約1割
このように年金積立金の割合は少ないため、運用成績の悪化で年金が減ってしまう可能性はあっても、年金制度の崩壊までは行かないと推測します。
いずれにしろ年金積立金の運用成績が気になったら、不安を煽りたいマスコミやSNSではなく、GPIFのウェブサイトから情報を収集した方が良いのです。
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