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国民年金から支給される老齢基礎年金を65歳から受給するには、公的年金の保険料の納付済期間や免除期間などの合計が、原則として10年以上必要です。
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厚生年金保険の加入者のうち、このような老齢基礎年金の受給資格期間を満たしている方は65歳、満たしていない方は最長で70歳まで、国民年金の第2号被保険者になります。
この第2号被保険者に扶養されている、年収130万円未満などの要件を満たす20歳以上60歳未満の配偶者は、所定の届出によって国民年金の第3号被保険者になります。
また第3号被保険者になった期間は、国民年金の保険料を納付しなくても、保険料の納付済期間として取り扱われるのです。
こういった恩恵を受けるための労働時間の抑制により、人手不足などの問題が起きていたので、2023年10月頃に武見敬三厚生労働大臣は、制度の見直しについて言及したのです。
そのため2025年に実施される年金改正の際に、第3号被保険者が見直しされる可能性が出てきました。
もし廃止になった場合は保険料の負担増以外に、次のような3つの問題が懸念されると思います。
日本国内に住所がある20歳以上60未満のうち、第2号被保険者や第3号被保険者にならない方は、国民年金の第1号被保険者になります。
例えば自営業者、フリーランス、農林漁業者、無職の方、厚生年金保険の加入要件を満たさない短時間労働者などが、第1号被保険者に該当するのです。
第1号被保険者が納付する国民年金の保険料は、賃金や物価の変動率によって、新年度が始まる4月に金額を改定しますが、2024年度は月1万6,980円になりました。
これだけの金額を無職や低収入の方が納付するのは大変なので、所定の申請を実施すると、全額免除、納付猶予(50歳未満が対象)、一部免除を受けられます。
また全額免除や納付猶予を受けると、国民年金の保険料を納付する必要がなくなり、一部免除を受けると次のような金額まで、国民年金の保険料が減額されるのです。
・ 4分の3免除:月4,250円
・ 半額免除:月8,490円
・ 4分の1免除:月1万2,740円
しかも納付猶予以外には国庫負担(国からの補助)があるため、後日に追納(保険料の後払い)しなくても、次のような割合で老齢基礎年金の金額に反映されるのです。
・ 全額免除:月1万6,980円を納付した場合の「2分の1」
・ 4分の3免除:月1万6,980円を納付した場合の「8分の5」
・ 半額免除:月1万6,980円を納付した場合の「8分の6」
・ 4分の1免除:月1万6,980円を納付した場合の「8分の7」
第3号被保険者の廃止後は、第1号被保険者に移行すると仮定した場合、これらの免除を受ければ保険料の負担を軽減できます。
基本的には前年の所得が低いほど、保険料の負担が少ない免除を受けられますが、申請した本人の所得だけでなく、世帯主や配偶者の所得も審査の対象になります。
そのため申請した妻が専業主婦で所得が低くても、夫が正社員で所得が高い場合には、希望する免除を受けられなかったり、いずれの免除も受けられなかったりするのです。このように所得が低いにもかかわらず、免除による負担軽減を受けられない場合があるのは、負担増以外の問題のひとつだと思います。
冒頭で紹介した老齢基礎年金の受給資格期間を満たしたうえで、厚生年金保険の加入期間が1月以上ある場合、65歳になると厚生年金保険から老齢厚生年金が支給されます。
公的年金からは2つの老齢年金の他に、障害年金(障害基礎年金、障害厚生年金)や、遺族年金(遺族基礎年金、遺族厚生年金)も支給されます。
1986年4月に第3号被保険者の制度が開始するまで、会社員の夫に扶養されている専業主婦の妻は、国民年金に加入したい方だけが任意加入していました。
国民年金に任意加入していれば、一定の障害状態になった時に障害基礎年金を受給できますが、任意加入していない方が多かったので、無年金障害者が問題になったのです。
現在は20歳になると国民年金に強制加入しますが、無年金障害者の問題は今後も起きる可能性があります。
その理由として障害基礎年金を受給するには、初診日(初めて医師などの診療を受けた日)の前日において、次のような保険料の納付要件の、いずれかを満たす必要があります。
・ 診日の属する月の前々月までの、公的年金の保険料を納付すべき期間のうち、3分の2以上が保険料の納付済期間や免除期間であること
・ 2026年3月末までに初診日がある場合、初診日に65歳未満の方については、初診日の属する月の前々月までの1年間に保険料の未納期間がないこと
また第3号被保険者の廃止後は、第1号被保険者に移行すると仮定した場合、納付書などで各人が保険料を納付するため、保険料の未納が生じやすくなるからです。
このように無年金障害者になる可能性があるというのも、負担増以外の問題のひとつだと思います。
国民年金に加入したい方だけが任意加入していた時代は、会社員の夫に扶養されている専業主婦の妻が任意加入しなかった場合、離婚後に無年金になる可能性がありました。
現在は第3号被保険者になった期間は、国民年金の保険料を納付したことになるので、離婚後の無年金は生じにくくなっています。
2007年4月以降は離婚から2年以内に請求すると、夫の老齢厚生年金の一部が妻に分割されるため、離婚後の低年金も生じにくくなっています。
ただ妻が国民年金の保険料の未納を続け、冒頭で紹介した老齢基礎年金の受給資格期間を満たせなくなった場合、夫から分割された老齢厚生年金を受給できません。
また第3号被保険者の廃止後は、第1号被保険者に移行すると仮定した場合、納付書などで各人が保険料を納付するため、保険料の未納が生じやすくなるのです。
こういった点から離婚後の無年金や低年金も、負担増以外の問題のひとつだと思います。
2016年10月から新たな社会保険の加入基準が開始したので、次のような5つの要件をすべて満たすと、短時間労働者でも社会保険に加入します。
・ 週の所定労働時間(契約上の労働時間)が20時間以上
・ 給与の月額が8万8,000円(年収だと約106万円)以上
・ 雇用期間の見込みが2か月を超える
・ 学生ではない
・ 従業員数が101人以上(2024年10月以降は51人以上)の企業に勤務している
厚生年金保険の保険料は給与の金額によって変わりますが、給与の月額が8万8,000円だと保険料は月8,052円になるため、国民年金の半分程度の負担で済むのです。
また勤務先が給与から厚生年金保険の保険料を天引きして、各従業員の代わりに日本年金機構に納付するため、国民年金より未納が生じにくくなります。
そのため第3号被保険者の廃止後に、厚生年金保険に加入して第2号被保険者になると、保険料の負担が軽減されるだけでなく、負担増以外の問題にも対応できるのです。
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