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公的年金(国民年金、厚生年金保険)から支給される年金は、老齢年金、障害年金、遺族年金の3種類に分かれています。
年金を貰いながら働くと年金額がカットされる?「在職老齢年金」の現状と今後の見直しの可能性とは
この中の老齢年金とは原則65歳から支給される年金であり、国民年金から支給される老齢基礎年金と、厚生年金保険から支給される老齢厚生年金があります。
現在は老齢厚生年金の支給開始を段階的に、65歳に引き上げしているため、62~64歳(生年月日などで変わる)から65歳になるまでの間に支給される、特別支給の老齢厚生年金もあります。
これらの老齢年金の支給額が減ると、国民から不満の声が挙がるため、政府は減ったように見えない工夫を施しているのです。
そのため公的年金の悪化度合いは次のように、タイパ(かけた時間に対して得られた効果)やコスパ(かけた費用に対して得られた効果)で、測った方が良いと思います。
20歳から60歳までの40年(480月)の間に、公的年金の保険料の未納期間や免除期間が一度もなく、すべてが保険料の納付済期間であると、老齢基礎年金は満額に達します。
また老齢基礎年金などの公的年金から支給される年金は、毎年4月になると賃金や物価の変動率で金額を改定するため、満額の老齢基礎年金は年度ごとに金額が変わるのです。
すでに厚生労働省や日本年金機構からは、2024年度の満額の老齢基礎年金が発表されていますが、その金額は次のようになります。
年額81万6,000円(月額に換算すると6万8,000円)
年額81万3,700円(月額に換算すると6万7,808円)
ここ最近の急激な賃金や物価の上昇を受けて、2024年度の改定率は+2.7%になったため、いずれについても前年度より金額が増えています。
ただ2004年の法改正で導入されたマクロ経済スライドが発動されなければ、2024年度の改定率は+3.1%になっていたので、こっそりと0.4%の減額が実施されているのです。
マクロ経済スライドとは公的年金の加入者の減少と、平均余命の伸びに合わせて、年金の給付水準を調整する制度になりますが、少しずつ目立たないように減額します。
そのうえマクロ経済スライドによる減額が実施されても、2024年度のように名目上の金額は前年度より増えているのです。
このように政府は支給額が減ったように見えない工夫を施しているため、公的年金の悪化度合いは支給額だけではわからないのです。
国民年金の保険料は賃金や物価の変動率を元にして、毎年4月に金額を改定しています。
ここ最近の急激な賃金や物価の上昇を受けて、2024年度は過去最高のとなる月1万6,980円になりました。
20歳から60歳までの40年(480月)に渡って、同額の保険料を納付したと仮定した場合、合計額は次のようになります。
1万6,980円×480月=815万400円
また815万400円という生涯分の保険料を、68歳以下の老齢基礎年金の満額(81万6,000円)で割ってみると、結果は次のようになります。
815万400円÷81万6,000円=9.9882…
そのため65歳で老齢基礎年金の受給を始めてから、約10年で元が取れる試算になるため、後は長生きするほどお得になるのです。
一方で68歳以下の老齢基礎年金の満額(81万6,000円)を、国民年金の保険料を納付する40年(480月)で割ってみると、結果は次のようになります。
81万6,000円÷480月=1,700円
こういった計算を実施してみると、国民年金の保険料を1月納付するごとに、老齢基礎年金は1,700円増えるとわかるのです。
国民年金の加入上限を60歳から65歳に5年延長して、生涯の加入期間を45年(540月)にするという改正案があるのです。
2024年度と同額の保険料(月1万6,980円)を、45年(540月)に渡って納付したと仮定した場合、合計額は次のようになるため、現在より101万円ほど負担が増えるのです。
1万6,980円×540月=916万9,200円
また916万9,200円という生涯分の保険料を、68歳以下の老齢基礎年金の満額(81万6,000円)で割ってみると、結果は次のようになります。
912万9,200円÷81万6,000円=11.2367…
このように元が取れるまでの期間は、現在の約10年から約11年に延びるため、1年ほどタイパが悪化するのです。
一方で68歳以下の老齢基礎年金の満額(81万6,000円)を、国民年金の保険料を納付する45年(540月)で割ってみると、結果は次のようになります。
81万6,000円÷540月=約1,511円
60歳まで保険料を納付する場合は上記のように、1月納付するごとに老齢基礎年金は1,700円増えます。
これが計算結果のように約1,511円まで減額すると、同額の保険料を納付しているのに受け取れる金額が少なくなるので、月200円ほどコスパが悪化するのです。
ただ国民年金の加入期間の5年延長は、まだ詳細が決まっていないので、計算の中に登場する「68歳以下の老齢基礎年金の満額」は、ある程度は金額が増える可能性があります。
こういった時こそ名目上の増加に惑わされず、タイパやコスパという基準を使って、公的年金の悪化度合いを客観的に分析したいところです。
厚生年金保険の加入期間がある場合には、老齢基礎年金の上乗せとなる老齢厚生年金が支給されます。
各人に支給される老齢厚生年金の金額は、厚生年金保険に加入していた期間中の給与(月給、賞与)の平均額や、厚生年金保険に加入した月数で決まります。
また給与から控除される厚生年金保険の保険料は、原則として給与の金額に比例して増えるため、年金額や保険料に大きな個人差があるのです。
そのため厚生年金保険の加入期間がある場合、タイパやコスパという基準を使うのは難しいのですが、過去のねんきん定期便が手元にある時には、これらの基準を使える可能性があります。
例えば50歳未満の場合には、
「これまでの保険料納付額(累計額)」と
「これまでの加入実績に応じた年金額(年額)」が、
ねんきん定期便の中に記載されています。
また前者の金額を後者の金額で割ってみると、どのくらいの期間で元が取れるのかを試算できるのです。
こういった計算を数年分のねんきん定期便で実施すると、タイパの悪化度合いがわかるため、ねんきん定期便の役割は年金記録や見込額の確認だけではないのです。
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