国民年金の保険料は2年連続で上昇のため、厚生年金保険が節約に役立つ

日本国内に住んでいる20歳以上60歳未満のうち、個人事業主、厚生年金保険の加入要件を満たさない非正規雇用者、大学生、無職の方などは、国民年金の第1号被保険者になります。

住民税の支払いはいつ?納付時期、納付方法、滞納した場合のペナルティを解説

一方で厚生年金保険に加入する会社員や公務員のうち、原則として65歳未満の方は、第2号被保険者として国民年金に加入しています。

また第2号被保険者に扶養される、年収130万円未満などの要件を満たす20歳以上60歳未満の配偶者のうち、所定の届出を実施した方は、第3号被保険者として国民年金に加入しています。

この中の第2号被保険者と第3号被保険者の国民年金の保険料は、厚生年金保険の保険料から賄われているため、各人が納付する必要はありません。

それに対して第1号被保険者の国民年金の保険料は、納付書や口座振替などを活用して、各人が納付する必要があります

また第1号被保険者が納付する国民年金の保険料は、申請して一部免除などを受けなければ、収入にかかわらず同額です。

ただ賃金や物価の変動に合わせて、年度ごとに金額を改定しているため、ずっと同額というわけではありません。

近年は賃金や物価が大幅に伸びているため、国民年金の保険料は上昇が続くと予想されます

このような状況だと厚生年金保険が節約に役立つと思うのですが、その理由は次のようになります。

国民年金の保険料は上昇が続くと予想されます

国民年金の保険料は2年連続で大幅に上昇する

2024年度の国民年金の保険料は、前年度より月460円ほど引き上げされ、月1万6,980円になりました。

国民年金には2年分の保険料を前納すると、この金額の一部が割引になる制度があるため、すでに厚生労働省からは2025年度の保険料も発表されています。

それによると2025年度の国民年金の保険料は、前年度より月530円ほど引き上げされ、月1万7,510円になるそうです。

このように2年連続で大幅に上昇するだけでなく、2年連続で過去最高額を更新するため、かなり負担が重くなるのです。

なお2019年4月に産前産後期間の保険料免除制度が導入された際には、財源を確保するために国民年金の保険料が、月100円ほど引き上げされました。

現在は更なる子育て支援のため、育児期間の保険料免除制度の創設が検討されています。

そのため今後に国民年金の保険料が上昇する要因は、賃金や物価の伸びだけではないのです。

保険料の上限で賄える範囲に年金額が調整される

日本の年金制度は積立方式ではなく、賦課方式で運営されているため、年金制度の加入者が納付した保険料の大部分は、その時点の高齢者などに年金として分配されます。

この賦課方式のデメリットとしては、年金を受給する高齢者などが増えていくと、それに応じて保険料を増やさないといけないので、年金制度の加入者の負担が重くなる点です。

そこで政府は年金制度の加入者が納付する保険料に上限を設け、この上限で賄える範囲内に、年金額を自動的に調整する仕組みにしたのです。

また上限に達するまで、厚生年金保険は毎年0.354%ずつ、国民年金は毎年280円ずつ、保険料を引き上げていきました。

厚生年金保険の保険料の引き上げは2004年から始まり、2017年9月に上限に達しています

一方で国民年金の保険料の引き上げは2005年から始まり、2017年4月に上限に達しています

そのため現在は年金制度の加入者に負担を求めるよりも、高齢者などが受給する年金を保険料の上限で賄える範囲内に調整して、年金制度の維持を図っているのです。

例えば2023年度が始まる際には0.6%、2024年度が始まる際には0.4%の年金の減額が実施されました。

上限に達しても保険料の上昇が止まらない国民年金

2016年10月に新たな厚生年金保険の加入基準が導入され、その後に何度か改正が実施されたため、現在は次のような5つの要件をすべて満たすと厚生年金保険に加入します

・ 給与の月額が8万8,000円(年収だと約106万円)以上である

・ 所定労働時間(契約上の労働時間)が週20時間以上である

・ 2か月を超えて雇用される見込みがある

・ 学生ではない(定時制や休学中の学生などは加入対象)

・ 従業員数が101人以上(2024年10月以降は51人以上)の企業に勤務している

月給から控除される厚生年金保険の保険料は、給与の月額に比例して増えていきますが、この金額が8万8,000円だった場合、2024年4月時点の保険料は月8,052円です。

2017年9月に上限に達した時点の保険料も同額になるため、厚生年金保険の保険料は約7年に渡って変わらないのです。

一方で国民年金については、2017年4月に上限に達した時点の保険料が月1万6,490円なのに対して、2025年度の国民年金の保険料は月1万7,510円になります。

つまり上限に達した時点から、月1,020円(年間だと1万2,240円)ほど、保険料が引き上げになっているのです。

この理由として国民年金は賃金や物価の変動に合わせて、保険料の金額を改定しているだけでなく、産前産後期間の保険料免除制度が導入されたからだと思います。

いずれにしろ上限に達したといいながら、保険料の上昇は現在も続いているため、個人的には納得できない気持ちになるのです。

厚生年金保険が節約に役立つ理由

厚生年金保険の保険料は上昇が止まっているのに、国民年金の保険料は現在も上昇が続き、かつ近年は上昇が加速しています。

そのため国民年金から厚生年金保険に移ると、給与の金額が変わらなければ保険料の上昇が止まる場合が多いため、厚生年金保険が節約に役立つのです。

厚生年金保険の保険料は給与の月額に比例して増えていきますが、この金額が8万8,000円の場合は上記のように、国民年金の半分程度の月8,052円で済みます

しかも厚生年金保険の保険料の一部は、国民年金の保険料として活用されているため、両者の保険料を納付したことになるのです。

給与の月額が増えていき、「17万5,000円以上18万5,000円未満」の範囲内になった場合、厚生年金保険の保険料は月1万6,470円になります。

そのため給与の月額が増えたとしても、18万5,000円未満の範囲内に収まっていれば、2024年度の国民年金の保険料(月1万6,980円)より安くなるのです。

こういった点から考えると、例えば130万円の壁を超えて第3号被保険者から外れるなら、第1号被保険者になるよりも厚生年金保険に加入した方が良いと思います。

また国民年金に加入する非正規雇用者の方が、厚生年金保険に加入した場合、給与の金額によっては前納より保険料が安くなるため、貯蓄などに回せるお金が増えるのです。

4月から6月の給与額が増えると税負担が重くなるのは本当?

2024年中に緩和される「年収の壁」と2024年から注意が必要な「年収の壁」

住民税非課税世帯とは 該当要件と判定する際の注意点

情報提供元: マネーの達人
記事名:「 国民年金の保険料は2年連続で上昇のため、厚生年金保険が節約に役立つ