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相続税・贈与税関係で 2024年1月から変更があります。
相続税の生前贈与(生前加算年数が3年以内から7年以内に延長)や相続時精算課税制度の改正です。
相続税対策を考える時の注意点について解説します。
例をあげて説明します。
1次相続:夫が亡くなり夫の財産1.2億円を3人で分け、妻が7,000万円 子2人が2,500万円づつ相続
2次相続:妻が亡くなり妻の財産2,000万円+夫の相続分7,000万円=9,000万円 子2人が4,500万円づつ相続
1次相続 1.2億円を、妻が7,000万円 子2人が2,500万円づつ相続
(1) 課税遺産総額の計算 課税価格合計(1.2億円)-基礎控除額(3,000+600×3)=課税遺産総額(7,200万円)
(2) 相続税総額の計算 7,200万円を 法定相続配分で「あん分」し相続税の総額算出 合計960万円
(3) 各人の納税額の計算 実際の相続割合(妻:7,000 子:2,500 子:2,500) で「あん分」各人の納税額を算出
相続税納税額 妻 1.6億円税額控除でゼロ 子 200万円 子 200万円 合計 400万円
2次相続 妻財産2,000万円+夫の相続分7,000万円=合計9,000万円を子が4,500万円づつ相続
(1) 課税遺産総額の計算 課税価格合計(9,000万円)-基礎控除額(3,000+600×2)=課税遺産総額(4,800万円)
(2) 相続税総額の計算 4,800万円を 法定相続分で「あん分」し相続税の総額算出 合計620万円
(3) 各人の納税額の計算 実際の相続割合(子:4,500 子:4,500) で「あん分」各人の納税額を算出
相続税納税額 子1 310万円 子2 310万円 合計620万円
総計納税額 1,020万円
3つのケース(妻の財産 0円、2,000万円、4,000万円)で妻への配分を変えた時の合計納税額
<ケース1-3>
シュミレーション計算では、総計納税額の差は以下の様になり財産配分の方法によっては、納税額は500万円から1,000万円程度差がでます。
法定分割割合(妻1/2,子1/4,子1/4)相続が必ずしも納税額が低いとは限りません。
総計納税額を減らすには妻への配分を減らします。
総計納税額が多くなる配分は「配偶者の税額軽減」1.6億円控除を使い全額妻に配分すると、1次相続では納税額が減りますが、2次相続で納税額が多くなり結果的に総計納税額が増えます。
実際には、それぞれのケースで個別に計算する必要がありますので、自分の財産額がどの程度の相続税になるのかを計算した上で対策を検討しましょう。
加算される生前贈与の年数が相続発生3年以内から7年以内になります。
暦年贈与は、基礎控除額の「年110万円」までは贈与税がかかりませんが、被相続人が亡くなってから3年以内の贈与は持ち戻し(相続財産への加算)が、7年以内へ延長されます。
激変緩和措置で、2030年までは4~7年前の贈与は100万円までの非課税措置があり、実質7年は2031年からになります。
孫への贈与は一世代飛び越しで資産を移転でき相続税を1回減らすことができますし、孫が法定相続人でなければ「持ち戻し」は適用されません。暦年贈与の場合、税務署が「定期贈与」と見なすと総額に課税されますので注意が必要です。
「定期贈与」とは、「1,000万円を毎年100万円づつ贈与すると取り決め」行った生前贈与のことで、贈与した合計額に対して贈与税が課税されます。
相続時精算課税制度は、下記の要件で2,500万円まで贈与税を非課税にできます。
(1) 贈与者が贈与の年の1月1日において60歳以上であること。
(2) 受贈者が同日において18歳以上で、かつ、贈与時において贈与者の直系卑属である推定相続人又は孫であること。
贈与した財産分は、相続時に相続税の計算に含め税額を精算します。
相続財産が相続税の基礎控除以下なら相続税の納税はありませんので、そもそも相続税を納める必要のない人にとってはメリットの大きい制度と考えられます。
注意すべきは、相続時精算課税制度を選択すると暦年贈与に戻すことはできません。
2024.1月の改正で基礎控除110万円が創設され、毎年110万円の贈与は非課税となり「持ち戻し」は適用されません。
この制度で暦年贈与の110万円控除は使えませんが、今回、累積2,500万円とは別に毎年110万円基礎控除が新設されています。
贈与者、受贈者の規定は特になく、手続も不要です。
持ち戻し期間が延長になりましたが、毎年110万円までの基礎控除が活用できます。
「定期贈与」とみなされない為の注意が必要です。
贈与者、受贈者の規定があり、「相続時精算課税選択届」の提出が必要です。
累積2,500万円とは別に毎年110万円の基礎控除が非課税になります。
相続税を納める必要のない人にとってはメリットの大きい制度です。
被相続人の死亡による生命保険金や損害保険金(保険料を被相続人が負担していた場合)は、相続等により取得したとみなされ相続税の課税対象として非課税限度額まで課税されません。
この死亡保険金の非課税限度額=500万円 × 法定相続人の数 となります。
直系尊属(父母や祖父母など)からの贈与で受贈者(18歳以上でその年の所得が2,000万円以下)が、「自分の住宅取得や増改築費用」として一括贈与を受ける場合、一定の要件を満たすときは贈与税が非課税となります。
非課税限度額は、省エネ等住宅の場合には1,000万円まで、それ以外の住宅の場合には500万円まで。
令和8年(2026年)12月31日まで適用が延長されています。
直系尊属(父母や祖父母など)からの贈与で受贈者(18歳以上50歳未満)が、「結婚・子育て資金」として一括贈与を受ける場合、1,000万円(結婚関係は300万円)までは贈与税が非課税となります。
金融機関等と「結婚・子育て資金管理契約」の手続きが必要です。
令和7年(2025年)3月31日まで。
直系尊属(父母や祖父母など)からの贈与で受贈者(30歳未満で前年の所得が1,000万円以下)が、金融機関等と「教育資金管理契約」に基づき教育資金を受ける場合、受贈者が金融機関等の営業所等に「教育資金非課税申告書の提出等をすること」により、贈与税が1,500万円(学校以外は500万円)まで非課税となります。
令和8年(2026年)3月31日まで。
相続した宅地で一定の要件(被相続人と生活を共にしていた、自分で住む、基準面積以下など)を満たせば、土地の相続税評価額を最大80%まで減額できます。
不動産の相続税評価額は、実勢価格より低く、賃貸用不動産は自家用不動産よりも相続税評価額が低くなります。
賃貸用建物を他人に貸すと、借地借家法が適用され借主の権利が強く貸主の権利が制限され評価額が下がります。
このため、賃貸用不動産の評価額は、実勢価格の60%程度になり課税価格を引き下げることができます。
節税につながる代表的な方法を簡単に列記しました。
実際に利用する場合は、運用上の要件が複雑なものもありますので詳細な確認が必要です。
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