2024年は社会保険の適用拡大によって、倒産と失業者がさらに増えていく
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次のいずれかの要件を満たしている事業所は、社会保険(健康保険、厚生年金保険)の強制適用事業所になります。

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・ 従業員数が常時5人以上の個人の事業所(農林漁業、サービス業などの一部の業種は除く)

法人(株式会社、有限会社、合同会社など)の事業所

後者の法人には従業員数の要件がなく、事業主だけの企業でも強制適用事業所になるため、企業が求人を出している場合、原則的には社会保険完備なのです。

また強制適用事業所に雇用される方が、後述する加入要件を満たした場合には、加入する意思がなくても社会保険に加入します。

社会保険の保険料の計算方法を簡潔に説明すると、給与(月給、賞与)に保険料率を乗じて算出し、それを事業主と従業員が半分ずつ負担します。

そのため算出した保険料が例えば2万円だった場合、従業員の給与から1万円が天引きされるだけでなく、事業主も1万円を拠出し、両者を合わせたものを納付するのです。

この事業主負担が企業の経営に悪い影響を与え、2024年は倒産と失業者がさらに増えていくと予想するのです。

2024年はさらに社会保険の適用が拡大されます

財産の差し押さえによって倒産する企業が増えている

2023年の終わり辺りに、社会保険の保険料の納付を滞納したため、財産を差し押さえられる企業が増えているというニュースが、複数の新聞に掲載されていました。

例えば2023年度の上半期(4~9月)は、約2万6,300社が財産を差し押さえられたようです。

2022年度を通じての差し押さえは約2万7,800社だったので、2023年度は上半期だけで、前年度と同程度の差し押さえが実施されています。

また財産の差し押さえをきっかけにして、倒産する企業も増えているそうです。

こういった問題が起きている背景については、新型コロナの感染が拡大していた頃に納付を猶予された社会保険の保険料の徴収を、日本年金機構が強化したことを挙げていました。

個人的には日本年金機構が徴収を強化したことに加えて、次のような3つが背景にあると推測するのです。

背景1:社会保険への加入が強化された

強制適用事業所の要件を満たしているのに、社会保険に加入していない企業はいくつも存在しました。

このような状態を厚生労働省が見逃してきた理由のひとつは、社会保険への加入を強化すると、企業によっては事業主負担で資金繰りが悪化し、倒産する可能性があったからです。

また企業が倒産すると、そこで働いていた方は仕事を失い、失業者になってしまうからです。

しかし厚生労働省は2012年度辺りから、法人登記簿情報などを活用して未加入の企業を把握し、加入指導を実施するなどの方法で、社会保険への加入を強化したのです。

こういった取組みによって未加入の企業は減ったのですが、厚生労働省が懸念していたように、事業主負担が資金繰りを悪化させ、それが滞納や倒産を招いた可能性があります。

背景2:厚生年金保険の保険料率が引き上げされた

日本の公的年金は現役世代から徴収した保険料の大部分を、その時点の年金受給者に年金として支給する、賦課方式という仕組みを採用しています。

この賦課方式の主な欠点としては、年金受給者が増え続けた場合、それに応じて現役世代から徴収する保険料を増やさないと、制度を維持するのが難しくなる点です。

また現役世代の保険料の負担が重くなるほど、給与の手取りが少なくなるため、生活が苦しくなるのです。

こういった問題を解消するため、現役世代から徴収する保険料に上限を設定し、その上限の範囲内に年金額を調整する保険料水準固定方式が、2004年の年金改正で導入されました。

そのため現役世代に負担を求めるだけでなく、支給する年金を減らすようにして、制度を維持するようになったのです。

また厚生年金保険は18.3%という上限に達するまで、毎年9月に保険料率を0.354%ずつ引き上げていきました。

2017年に上限に達したため、すでに引き上げは終わったのですが、もともとは13.58%だった保険料率が18.3%になったので、引き上げ前よりも約5%の負担増になったのです。

例えば従業員の月給が30万円だった場合、引き上げ前と引き上げ後の厚生年金保険の保険料は、次のように月1万4,000円くらいの差があります

・ 引き上げ前:30万円×13.58/100=4万740円

・ 引き上げ後:30万円×18.3/100=5万4,900円

厚生年金保険の保険料の半分は事業主負担になるため、保険料率の引き上げが事業主負担を増やし、それが滞納や倒産を招いた可能性があります。

厚生年金保険の保険料率が引き上げされました

背景3:社会保険に加入する新基準が開始された

パートやアルバイトなどの非正規雇用者が、社会保険に加入するのか否かは、従来は次のような4分の3基準で判断しました。

・ 1週間の所定労働時間(契約上の労働時間)および、1か月の所定労働日数(契約上の労働日数)が、同じ事業所で同一の業務に従事する正社員の4分の3以上

しかし2016年10月に新基準が始まり、その後に何度か法改正が実施されたため、現在は次のような5つの要件を満たす場合にも、社会保険に加入するのです。

・ 月の給与が8万8,000円(年収だと約106万円)以上

・ 2か月を超える雇用の見込みがある

・ 所定労働時間が週20時間以上

・ 学生ではない

・ 従業員数が101人以上の企業、または社会保険への加入についての労使合意がある101人未満の企業に勤務している

例えば正社員の所定労働時間が週40時間の場合、その4分の3は週30時間になるため、4分の3基準では週30時間以上が、非正規雇用者が社会保険に加入する目安になります。

一方で新基準の場合は週20時間以上が、非正規雇用者が社会保険に加入する目安になるため、社会保険の加入者が増えるのです。

また社会保険の加入者が増えると、その分だけ事業主負担が重くなるため、新基準が滞納や倒産を招いた可能性があります。

2024年10月から社会保険の適用が拡大される

2016年10月に新基準が始まった時は、従業員数が501人以上の企業を社会保険の加入対象にしていました。

しかし2022年10月からは従業員数が101人以上の企業になり、2024年10月からは従業員数が51人以上の企業になるため、社会保険の適用が拡大されるのです。

これによって資金に余裕がない小規模の企業も、社会保険の事業主負担を求められるため、滞納や倒産が更に増える可能性があります。

また企業が倒産すると従業員の方は仕事を失うため、失業者もさらに増える可能性があります

こういった事態を心配する方は、未払賃金立替払制度、生活福祉資金貸付、生活困窮者自立支援制度などの失業後に役立ちそうな制度を、事前に把握しておくのです。

また勤務先が滞納した後に倒産した場合には、それまでの年金記録が正しいものになっているのかを、ねんきん定期便(ねんきんネット)で確認した方が良いと思います。

情報提供元: マネーの達人
記事名:「 2024年は社会保険の適用拡大によって、倒産と失業者がさらに増えていく