2022年4月以降は新規発行されないため、事実上の廃止になった年金手帳。

老齢基礎年金を満額受給できない場合、年金額を増やす「国民年金の任意加入制度」について

年金手帳の2つの役割

役割1:基礎年金番号の確認

例えば企業が社会保険の加入要件を満たす従業員を採用した場合、厚生年金保険の加入手続きを行います。

この時に年金事務所に提出する被保険者資格取得届という書類には、基礎年金番号(すべての公的年金で共通して使用する1人に1つの番号)を記入します。

そのため企業は採用した従業員に対して、基礎年金番号の確認できる物の提出を求めるのです。

表紙が青色の年金手帳には基礎年金番号が記載されているため、この原本やコピーを従業員から受け取ると、企業は基礎年金番号を確認できるのです。

表紙がオレンジ色などの古い年金手帳を保有している方には、1997年1月に基礎年金番号の制度が始まる時に、各人の番号を通知する基礎年金番号通知書が送付されました。

これを年金手帳に張り付けて保管している方が多いと思うので、表紙が青色以外の年金手帳でも基礎年金番号を確認できるのです。

役割2:記録のメモ

国民年金や厚生年金保険の記録をメモする欄が、年金手帳の中に設けられています。

このメモ欄に厚生年金保険の「被保険者となった日(一般的には入社日)」や、「被保険者でなくなった日(一般的には退職日の翌日)」などを、メモしておいた方が良いのです。

60歳以降に送付される老齢年金(老齢基礎年金、老齢厚生年金)の請求書には、公的年金に初めて加入してから現在までの、すべての年金加入記録が印字され、これに間違いがある場合には訂正する必要があります。

年金手帳に残っているメモと、老齢年金の請求書に印字された年金加入記録を照らし合わせると、間違いを見つけやすくなるため、記録のメモが大切になるのです。

年金手帳や基礎年金番号の代わりになる物が整備されている

年金手帳が廃止された2022年4月以降に、新たに公的年金に加入した方や、年金手帳を紛失した方などに対しては、基礎年金番号が記載された基礎年金番号通知書が発行されます。

現在は海外居住者などの一部を除いて、基礎年金番号とマイナンバーが紐付けされているので、基礎年金番号の代わりにマイナンバーを記入できる場合が多いのです。

基礎年金番号の確認のために提出する物は、年金手帳でなくても良いだけでなく、企業が基礎年金番号を確認する必要性が薄れたのです。

2009年4月以降は毎年誕生月になると、ハガキ(35歳、45歳、59歳だけは封書)で、ねんきん定期便が送付されています。

これを見れば年金加入記録が正しいのか否かを、年に1回のペースで調べることができます。

年金加入記録に間違いがあった場合、訂正請求の手続きなどを実施すれば、数か月で訂正ができます。

老齢年金の請求書に印字された年金加入記録に、間違いが生じにくくなったので、照らし合わせなどのためにメモをとっておく必要性が薄れたのです。

このように年金手帳や基礎年金番号の代わりになる物が整備された点や、メモをとっておく必要性が薄れた点から考えると、年金手帳が廃止されたのは当然の結果だったのかもしれません。

ねんきんネットを利用した方が良い理由

  1. 基礎年金番号通知書
  2. マイナンバーカード(通知カード)
  3. ねんきん定期便

という3つのアイテムを、きちんと保管しておけば、年金手帳が手元になくても困ることはないと思います。

3つのアイテムの保管に加えて、パソコンやスマホで年金加入記録を確認できたり、将来に受給できる老齢年金の見込額を試算できたりする、ねんきんネットを利用してみるのです。

ユーザIDやパスワードを入力して、ねんきんネットにログインすると、各人の基礎年金番号が表示されます。

そのため年金手帳や基礎年金番号通知書を万が一に紛失しても、パソコンやスマホがあれば、すぐに基礎年金番号を確認できるのです。

ねんきん定期便を見る時には、

  • 月給を元にして算出された標準報酬月額や
  • 賞与を元にして算出された標準賞与額

間違っていないのかを、きちんと調べた方が良いのです。

その理由として厚生年金保険から支給される老齢厚生年金は、

標準報酬月額と標準賞与額の平均額を元にして算出

するため、この2つの金額が間違っていると、正しい年金額が算出されないからです。

賞与が支給された月と、ねんきん定期便の送付月が掛け離れていると、賞与の金額などの記憶が曖昧になりやすく、もし曖昧になったら調べるのが難しくなります。

一方で最新の年金加入記録をいつでも確認できる、ねんきんネットを利用できれば、賞与の金額などの記憶が曖昧になる前に調べられます

電子証明書の機能をスマホで利用できる

政府は2024年秋頃を目途にして、紙やプラスチックの健康保険証を原則廃止し、マイナ保険証(健康保険証としての利用登録を済ませたマイナンバーカード)に一本化する方針です。

こういった政府の方針や、健康保険証を廃止するスケジュールなどは、新聞やテレビなどがよく報道しているため、知っている方は多いのではないかと思います。

それに対して2023年5月から、マイナンバーカードに搭載された電子証明書の機能を、スマホで利用できるようになったことは、あまり知られていない印象があります。

今のところ対応しているのはAndroidの一部の端末だけであり、iPhoneについては交渉中のようです。

電子証明書の機能をスマホで利用できるようになっても、今のところは利用できるサービスが限られています。

こういったデメリットがあるため、あまり知られていないのだと思いますが、来年あたりには急速に普及していく可能性があります。

その理由として電子証明書の機能を利用できるスマホを、病院などの窓口にあるカードリーダーにセットして、所定の手続きを行うと、受付が完了する仕組みが、2024年4月頃に始まる予定だからです。

これが可能になったらマイナンバーカードがない時でも、スマホがあれば1~3割の自己負担で診療を受けられるため、とても便利だと思います。

ねんきんネットを簡単に利用する方法

年金手帳が廃止された後は、この代わりに基礎年金番号通知書が発行されますが、ねんきんネットの登録を済ませ、スマホで基礎年金番号を確認できるようにしておくのです。

健康保険証が廃止された後は原則的に、マイナンバーカードを使いますが、これを持ち歩く機会が増えると紛失しやすくなるので、電子証明書の機能をスマホで使えるようにして、持ち歩く機会を減らすのです。

いずれについても廃止対象の物が担っていた役割を、スマホに移しているので、健康保険証の廃止後にやるべきことは、年金手帳の廃止後にやるべきことと、同じではないかと思います。

マイナンバーカードを保有している方は、これを使ってマイナポータルにログインした後に、「年金記録・見込額を見る(ねんきんネット)」を押して連携手続きを行うと、ねんきんネットが開始されます。

そのためユーザIDなどを取得する必要がないため、ねんきんネットを従来よりも簡単に利用できるのです。(執筆者:社会保険労務士 木村 公司)

免除期間の国民年金の保険料を追納するなら、入社直後か2023年が良い理由

老後の不安と年金受給者の手間は、マイナンバーカードが軽減してくれる

国民年金保険料の免除制度を利用した場合の老齢基礎年金の受給額

情報提供元: マネーの達人
記事名:「 健康保険証の廃止後にやるべきことは、年金手帳の廃止後と同じである