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「増えなくてもなくならないならそれでいい」
「他においておくところがないから」
銀行預金や郵便貯金を預けている多くの人の考えだと思います。
金融機関自体に魅力がないのも否定しませんが、なんといっても金利が低い、この一点に尽きると思います。
元本が保証され、しかも年利3%の確定利回りで運用成果が約束されている金融商品など存在しません。
「住宅ローンの繰り上げ返済をした場合と、同じ金額を運用した場合の比較」などで用いられる表現ですが、年利3%の確定利回りで元本保証のある金融商品など存在しない以上、シミュレーションをする意義があるのだろうか?と銀行員の私は疑問に感じてしまいます。
こうしたトークを勧誘時にしていたなら、私は実績をあげられないだけでなくお客様から「このひとは大丈夫?」と信用していただけないと自身を持って言えます。
闇バイトへの注意・警鐘している「そんなバイト、ないから!!」という言葉は、年利3%の確定利回りで運用成果が約束されている金融商品にも当てはまります。
元本と運用成果が約束されているのが、預金です。
ペイオフ(金融機関が破綻した場合、保護対象の預金は元本1,000万円とその利息は保護され、預金保険から支払われるが、ペイオフ対象外の預金は保護されない。*破綻処理の結果に応じ減額されても戻ってくる場合はある)を考えると絶対元本保証ともいい切れないのですが、それ以外は元本保証です。
現在の銀行普通預金の金利は年0.001%なので、単位としては「1糸(「し」と読む)になります。
これは「厘」の10分の1である「毛(もう)」のさらに10分の1で、1億円を1年間預けても1,000円の利息しかつかないことになります。
100万円なら利息は10円。
しかもここから容赦なく20%の税金が引かれるので、銀行に1億円預けても1年で800円しか増えないのがゆるぎない現実です。
1億円に対する1,000円が「利息」、税引き後の800円が「利回り」(元本に対し運用益と、それに必要な税金などの費用を差し引いて、純粋に元本から増えた額の割合)となります。
たとえ1億円で利息が年1,000円しか増えなくても「増えることは間違いない」ということです。
条件なしで約束・保証されているものです。
日常生活ではめったに使わないような単位の低金利でも、増えることは間違いありませんし、なくなることも減ることもない預金は安全な「資産」だと銀行員の私は本気で考えています。
使われなくなった預金が誰かのために使われることもあり、預金の「推し」ポイントの1つといえます。
私は銀行員として常日頃、預金と身近に接しているものですが、「長いあいだほったらかしの預金が誰かの役に立つ」ことには、個人的に賛成です。
「休眠預金」と呼ばれるものと、これと関連する「預金の時効消滅」について解説します。
ほったらかしの預金の行き先は「時効消滅」と「休眠預金活用」です。
郵便貯金は満期から20年2ヶ月経つと権利が消滅する場合があり、具体的には郵便局が民営化された2007年(平成19年)9月30日より前から郵便局に預けていた定額・定期・積立郵便貯金など満期のある預金は、満期後20年2か月が経過すると権利が消滅し払戻しができなくなるというものです。
参照:ゆうちょ銀行/長期間ご利用のない貯金のお取り扱いについて
民営化後の預金については、基本的に「休眠預金」と同様です。
毎年 1,200億円程度発生し、(500 億円は払い戻される)最終的に700億円という巨額の休眠預金が、しかも毎年生まれています。
この休眠預金(預金保険制度等による公的資金も合わせた資金)を、国民のために有効活用しようという趣旨で作られた「休眠預金等活用法」にもとづいて、休眠預金は一定期間、所定の手続きを経たあとで公共福祉やNPO法人などに分配され、それぞれ社会に役立てられています。
1.法律の背景
〇休眠預金等:預金者等が名乗りを上げないまま、10 年間放置された預金等 ⇒毎年 1,200 億円程度発生(その後 500 億円程度が払戻し)(平成26~28年度)
〇預金等の性質(①銀行等が公共的役割を果たすための原資、②預金保険制度等による公的資金 の活用も想定、③広く国民一般が利用)に鑑みると、預金者等に払い戻す努力を尽くした上で、 社会全体への波及効果の大きい民間公益活動の促進に活用することで休眠預金等を広く国民一 般に還元すべき。
参照:金融庁/民間公益活動を促進するための休眠預金等に係る資金の活用に関する法律 概要(pdf)
自分の預金はしっかり自分で把握しておくことがなによりも重要です。
年齢に応じて銀行や口座は増えるもので、また転居などで使わなくなった口座も出てくるものです。
どこにいくらあるかわからなくならないように、自分でまとめておくようにしましょう。
方法は人それぞれですが、私の場合は預金だけでなく不動産から生命保険契約と、死亡したときの保険金額と手続きについて、またローンや借入をまとめ、やはり自分が死んだときに住宅ローンを団体信用生命保険で完済する手続き方法など言ってみれば「終活ノート」的なものを表計算ソフトでカンタンにまとめて打ち出してあります。
郵便貯金が権利消滅にならないためには、とにかく解約することです。また休眠預金にならないために、入出金など口座を「動かす」ことでその預金は休眠状態でなくなるので、休眠預金に活用されることも防止できます。
口座の入出金なども「無理せず対処できるなら」という前提です。
たとえば、その銀行に行くためには飛行機を使うしかないくらい遠くにある場合などは無理というものです。
「1,000円でも入金すれば大丈夫!すぐ銀行にいきましょう」といった説明もありますが、移動距離とかかるお金と浪費する時間まで考えているのか疑問で、良いアドバイスとは言えません。
転勤や転居などがあったときは、面倒がらず必ず金融機関に届け出るのも対策の一つです。
金融機関も休眠預金の対象者には複数回郵便などでお知らせするようになっていますが、転居の届けがなければこうした大事な連絡も届かないことになります。
権利消滅や休眠預金に関して、金融機関に転居など必要な届け出をしていなかったために通知されず知らなかった場合は、金融機関側に落ち度はないことになっています。
「残高なんて少ししかないから、届け出なんてめんどくさい」と考えていても、後々それが原因で自分に不利益になったなら面倒くさいなどと言っていられなくなりますから注意してください
私も使わなくなった古い通帳を数冊持っています。
これは学生時代に一人暮らししていたとき、親が仕送り用に作ってくれたもので、当時の都市銀行(今は複数回の合併でメガバンクに)の通帳などです。
残高はおそらくゼロだと思うのですが、もしかしたら1万円以上あるかも知れません。
もちろん後継の銀行に手続き方法を聞けば教えてもらえるのですが、面倒なのと交通費ももったいないのと、そして親から仕送りしてもらった思い出もあったので、結局そのままにして、もう休眠預金になっていると思います。
と納得しています。
考え方に正解はないので、銀行員個人の「推しポイント」ということです。
無駄遣いせずに貯蓄する意識が高い人を銀行的に表現すると「貯蓄性向あり」となります。
これは住宅ローンなど個人の融資審査をするうえで、とても大きなプラス要素です。
たとえば毎月数千円からでも積立預金や投資信託など定期的に貯蓄している人は無駄遣いせず貯蓄に励み、自分で考えて資産形成ができるしっかりした人であると、私なら住宅ローン審査の稟議書で確実に「推し」ます。
預金は誰でもできるローン審査の得点アップ法です。
勤務先や年収、所有財産などをすぐにランクアップするのはなかなか難しいのですが、貯蓄ならすぐできるからです。
具体的には銀行窓口で預金を作るか、ネット経由など自分で積立投信を始めるだけです。
貯蓄でお金が貯まるので、自分にとってはマイナスになりません。
投信の場合には評価損失の可能性はありますが、それでも積立形式なら短期に大損するような可能性は少ないと思われます。
投信という点で投資知識もある人だと、やはりプラスにみてもらえます。
これらはけっこう普通のことだと思いますが、ローン審査では大きなプラスです。
銀行は住宅ローンなどを融資する「金貸し」ですので、返済についていろいろ目を光らせ、そのため融資の審査はきびしくなります。
そのため少額の積立や口座の残金も、
「毎月3,000円も余裕資金があって、しかもコツコツためている」
「やりくりがしっかりできているから、赤字になるどころか毎月3万円も口座に残すことができる」
といったように金貸しの視点はプラス作用するのです。
ここまで説明したように、金利は期待できなくてもいくつかの「推し」ポイントがある預金はまだまだ存在意義があり、必要だと銀行員は考えています。
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