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所得控除とは、配偶者控除や寄附金控除など、所得金額から差し引く控除をいいます。
所得控除の種類によって控除できる金額は異なり、所得控除額が多くなるほど節税効果が期待できますが、所得控除の額がそのまま税金から差し引かれるわけではありません。
所得税の金額は、所得控除を差し引いた後の「課税所得金額」に税率を乗じて算出することになり、課税所得金額が大きい人ほど税率は高くなる仕組みです。
所得控除が10万円の場合、税率が5%なら所得税の節税効果は5,000円ですが、最高税率45%の対象になる場合の節税効果は4万5,000円と、課税所得金額が大きい人ほど所得控除の節税効果は大きくなります。
所得控除の有名な制度の一つに、「生命保険料控除」があります。
生命保険料控除は、生命保険料、個人年金保険料および介護医療保険料を支払っている場合、最大12万円を所得控除として差し引くことができる制度です。
生命保険等に加入している場合には、生命保険料控除を活用しない選択肢はありません。
しかし、生命保険料控除は支払った保険料に応じて控除額を算出しますので、制度を適用する際には必ず保険料の支払いが発生しています。
生命保険料控除の上限である12万円の控除を受ける場合、保険料は24万円以上支払わなければならず、所得税の税率が10%の方であれば、所得税の節税効果は1.2万円です。
支払った保険料以上に税金が戻ってくることはありませんので、節税目的で利用するのではなく、保険に加入した際に適用できる制度として認識した方がいいでしょう。
医療費控除は、医療費を支払った際に適用できる所得控除で、10万円を超えた部分の医療費(200万円が上限)がそのまま所得控除の対象となります。
所得金額が200万円以下の方については、所得金額の5%を差し引いた額を医療費控除の対象にできるため、医療費が10万円以内でも医療費控除を受けられる可能性があります。
医療費控除を適用するためには10万円が一つの基準となりますが、年間10万円の医療費は高額です。
月単位で考えた場合、毎月8,400円の医療費を支払っていないと10万円には達しませんし、医療費控除の対象となるのは10万円を超えた部分のみです。
そのため莫大な医療費が発生した年以外については、医療費控除を適用しても所得税を大きく節税することは難しいです。
セルフメディケーション税制とは、健康診断等を受けている人が特定一般用医薬品等を購入した場合、購入費等を所得控除として差し引くことができる制度です。
購入金額から1万2,000円を差し引いた金額が所得控除の対象となり、控除額の上限は8万8,000円(購入金額10万円)です。
医療費控除とは違い、セルフメディケーション税制は1万2,000円を超えれば所得控除の対象になりますので、支出額が少額であっても制度を適用することができます。
ただし、セルフメディケーション税制は医療費控除との併用適用は認められておらず、控除額も最大8万8,000円なので、大きな所得税の節税効果は期待できません。
節税効果の薄い所得控除を3つご紹介しましたが、費用対効果の高い所得控除も存在します。
費用対効果の高い所得控除とは、支出を伴わない制度です。
配偶者控除や扶養控除は対象者の所得金額が適用要件となっているため、適用するために支出が発生することはありません。
障害者控除については3つの区分が存在し、どの区分に該当するかによって控除額が異なります。
障害者と特別障害者の区分は所得税法上で定められていますので、該当される方がいらっしゃる場合には、どの区分に該当するか一度ご確認ください。
<障害者控除の区分>
区分 | 控除額 |
障害者 | 27万円 |
特別障害者 | 40万円 |
同居特別障害者 | 75万円 |
節税は手元に少しでもお金を残すために実施するものですので、節税による効果が薄いときは制度を利用しない方がいい場面もあります。
生命保険料控除は保険に加入している人であれば活用すべき制度ですが、節税額よりも保険料の方が多いので、生命保険料控除を適用するために保険に加入してしまうと手元のお金は減ってしまいます。
医療費控除やセルフメディケーション税制は、適用するために確定申告書が必要です。
会社員など確定申告が不要な方の場合、制度を適用するための申告手続きのコストが、節税額よりも大きくなることもあります。
節税額以上に支出が発生するのは本末転倒ですので、税金対策を講じる際は費用対効果についても考えてください。(執筆者:元税務署職員 平井 拓)
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