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遺族厚生年金を受給している方が65歳になり自分の「老齢厚生年金」を受給できるようになった場合はどうすればよいか
まず、繰り下げたことによる加算額の仕組みについて確認しましょう。
受給権が発生した時の年金額に、受給権を取得した月から繰り下げの申出をした日の属する月の前月までの月数に対して、0.7%を乗じて計算が行われます。
そして、実際に年金が支給されるのは請求した月の翌月からとなります。
現在は65歳の受給開始から75歳までと、受給開始は10年間もの選択肢があります。
仮に75歳まで繰り下げた場合は84%の増額となりますが、受給開始を遅らせることで損益分岐点も後ろになる点には留意が必要です。
なお損益分岐点とは、当該分岐点よりも長生きすることで
「繰り下げした方が多く年金を受給できる」
という分岐点です。損益分岐点は年金事務所でも試算してもらうことができます。
また、繰り下げの申出は老齢基礎年金、老齢厚生年金をいずれか一方または両方どちらでも可能です。
まず、遺族が代理で繰り下げ請求することはできません。
これは「遺族」であっても「本人」ではないためです。
年金の世界では、たとえ法律婚状態の配偶者であっても別人扱いとなり、亡くなったあとは本人の意思とはならないため、このような建て付けとなっています。
本事例の場合は、65歳の本来請求によって年金が決定されたうえで、「未支給年金」として遺族に対して支払われることとなります。
すなわち、繰り下げ請求とはならず、増額しない年金を65歳までさかのぼって計算されて支給されるという理解です。
また、亡くなった方が、役員並みの高収入であった場合は更に注意が必要です。
在職老齢年金制度によって、年金の全部が支給停止されている場合もあり得るためです。
繰り下げ請求後であっても誤解がある部分として、例えば在職老齢年金制度によって年金が全額支給停止されていた場合を例に挙げると、仮に繰り下げ請求せずに65歳から年金を請求されていたとしても、年金は支給停止によって受け取れていないことになりますので、繰り下げ請求した場合であってもそもそも増額対象の年金がありませんので、繰り下げたとしても年金は増額しません。
老齢年金は終身年金であり、死亡する月まで支給対象となります。
実際に死亡する月の年金は、本人が受け取ることはできませんので、遺族が未支給年金として受け取ることにはなりますが、遺族に対して少しでも多くの年金をのこせるに越したことはありません。
また、日本人の平均余命は男性で約81歳、女性で約87歳と、女性の方が長いデータとなっています。もちろん、このデータが全ての方に当てはまるということはなく、夫婦としても逆のケースになってしまうことはあり得ますが、統計上、繰り下げ制度は女性にとってより身近な制度とも言えます。
年金額はこれまでの人生の鏡と言われ、過去の職歴や給与体系、家族構成により年金額は大きく異なります。
また、医学の専門家であっても自身の寿命を明確に予測することは難しく、その時点で何がベストなのかは難しいと言わざるを得ません。
そこで、最低でも自身に関連のある制度の仕組みをおさえておくことで、「このようなはずではなかった」を回避できると考えます。(執筆者:社会保険労務士 蓑田 真吾)
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