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【厚生年金保険料】4月から6月にいっぱい残業をすると、保険料が増える」は本当か
公的年金の加入者が納付した保険料の一部は年金積立金となり、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)によって市場運用されています。
このGPIFはシリコンバレー銀行やシグネチャー銀行などの、経営破綻した金融機関の関連株式と債券で、年金積立金の一部を運用していたのです。
そのため運用の失敗による年金積立金の減少と、これによる年金の減額が懸念されました。
しかし公的年金の財源は長期的な平均で見ると、次のような割合になるため、年金積立金に対する依存は少ないのです。
これに加えてGPIFが運用している金額は、2022年3月末時点で約196兆円になりますが、経営破綻した金融機関の関連株式と債券の割合は、この中の0.03%程度にすぎないようです。
このような点から考えると、年金積立金の減少や年金の減額を、あまり心配する必要はないと思います。
またシリコンバレー銀行とシグネチャー銀行は、他の金融機関に買収されたため、経営破綻による影響は少なくなったと推測されます。
学生(定時制や休学中の学生などは除く)や、役員(労働者性が強い兼務役員は除く)などの一部の方以外は、次のような2つの要件を満たすと、雇用保険に加入する必要があります。
(1) 継続して31日以上、雇用される見込みがある
(2) 1週間の所定労働時間(雇用契約書や就業規則に定められた労働時間)が、20時間以上である
また従業員と事業主の両者が負担した雇用保険の保険料は、「失業等給付・育児休業給付」と「雇用保険二事業」の財源になるのです。
前者の「失業等給付・育児休業給付」の代表的なものとしては、雇用保険の一般被保険者が失業した時に支給される基本手当、いわゆる失業手当があります。
一方で後者の「雇用保険二事業」の代表的なものとしては、雇用調整助成金(休業させた従業員などに対して、事業主が支払った休業手当の一部を、国が助成する制度)があります。
2020年の初め頃に新型コロナの感染拡大が始まってからは、自粛生活を余儀なくされたため、経済が急激に悪化しました。
そのため政府は基本手当の給付日数を延長したり、雇用調整助成金の助成率や上限額を引き上げたりして、経済の急激な悪化による影響を抑えたのです。
こういった事由などによって、基本手当の支給が増えると、雇用保険の保険料だけでは財源不足になるため、経済が良くて失業率が低い時に積立した、雇用保険の積立金を取り崩して対応したのです。
また雇用調整助成金の支給が増えたことに対しては、経済が良くて休業者が少ない時に積立した、雇用安定資金を取り崩して対応したのです。
新型コロナの問題はなかなか終息しなかったため、基本手当や雇用調整助成金の支給は増え続けました。
これにより雇用保険の積立金や雇用安定資金の枯渇が、懸念されるようになったのです。
実際に雇用安定資金は一時的に枯渇したので、雇用保険の積立金からの貸出や、一般会計からの資金投入などで、財源不足を補ったのです。
こういった自転車操業の状態を、いつまでも続けるわけにはいかないので、政府は2022年4月、10月、2023年4月の3回に渡って、雇用保険の保険料を引き上げしました。
ただ従業員や事業主の反発を招かないように、段階的に少しずつ引き上げしたので、雇用保険の積立金や雇用安定資金の残高が安定するまでには、何年もかかると推測されます。
そのため欧米発の金融危機の発生によって、近いうちに経済が悪化した場合、新型コロナのピーク時と同じくらいまで、基本手当や雇用調整助成金の支給を増やすのは、かなり難しいのではないかと思います。
こういった点から欧米発の金融危機で減額が懸念されるのは、年金よりも雇用保険の給付金だと推測するのです。
新型コロナの問題で経済が悪化した際には、各市区町村の社会福祉協議会に申し込むと利用できる、「生活福祉資金貸付」などの公的な貸付制度が活用されました。
貯蓄型の生命保険に加入している方については、「契約者貸付」などの民間の貸付制度も活用できたようです。
日常生活費以外の例えば家賃については、就職に向けた活動を行うことなどを条件に、家賃相当額が一定期間だけ支給される、「住居確保給付金」という制度があります。
また医療費については、全日本民主医療機関連合会が低所得者などの生計困難者を対象にして実施する「無料低額診療事業」という制度があります。
このように基本手当や生活保護以外にも、各人の暮らしに役立つ制度があるため、欧米発の金融危機が発生した場合には、活用を検討したいところです。(執筆者:社会保険労務士 木村 公司)
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