「貯蓄から投資へ」というスローガンが登場してから何年にもなりますが、投資をしている人はまだまだ少ないのが現状です。

投資をする人が増えない理由を考えてみました。

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「資産運用」という言葉の弊害

一般的に「投資」と聞くと、「資産運用」という言葉が思い浮かびます。

預金は1度銀行に預ければ、預けっぱなしで何もせずに利息を受け取れます。

これに対し「資産運用」は、資産を「運用」して増やすというように理解されています。

それでは「資産を運用する」と聞いて、多くの人はどのようなことを想像するでしょうか。

それは漠然とではありますが、

「もうかりそうな金融商品を探して、それを買ったり売ったりして利益を出す」

というようなイメージではないでしょうか。

こうした「資産運用」という言葉のイメージが、いくつかの短絡的な思考に結びついてしまっている気がします。

自分は何を買ってよいかわからず、またいつ買っていつ売ったらよいのかわからないから、投資はできないと思ってしまう人もいます。

また、金融商品の選択や売買はプロに任せれば安心と思ってしまう人などもその一例です。

「資産運用」と聞くと、自分で買ったり売ったりするか、プロに買ったり売ったりしてもらうかというように、何かしら売買を繰り返して売却益を獲得するというイメージを持ってしまうことが、この言葉を使うひとつの弊害ではないでしょうか。

「資産運用」ではなく「資産配置」をしよう

有望な銘柄、投資信託を探して、安く買って高く売ることを継続することは、非常に難しいことです。

また、そういうことができるプロ(投資信託)を事前に探すことも、同様に難しいことです。

もちろん、投資の勉強や研究をして、自分で有望な銘柄、投資信託を発掘し売買のタイミングも自分で判断できるという方もいます。

現在では、自分に適正なリスク許容度の範囲で、インデックスタイプの株式投資信託を長期・分散・低コストで保有することが、資産を増やす可能性が高いと言われています。

また、十分な長期間で見れば、元本割れする可能性は限りなくゼロに近づきます。

自分のリスク許容度に合った額を買っていく

投資の勉強をする時間や投資に費やす時間があまり取れない方は、この方法で投資することが資産形成への近道かと思います。

「資産運用」は難しいと思ってしまいますが、インデックスタイプの株式投資信託を買ってずっと持ち続けることは、それほど難しいことではありません。

重要なのは、自分のリスク許容度に合った額を買っていくことです。

株式市場はリーマンショックなどのように、瞬間的には1/3~1/2の値下がりをすることがあります。

このとき、怖くなって売ってしまわないような額が、自分のリスク許容度です。

どんなに評価損が出ても、絶対に売らないことが大切です。

さらに、値下がりしたときには多くの数量が買えますので、購入を止めないことも大切です。

買う金融商品は、

  • 全世界型のインデックスタイプの株式投資信託(海外や国内のインデックスタイプの株式投資信託を組み合わせてもよい。)で
  • できるだけコスト(信託報酬)の安いもの

を選びます。

このコストが、長期間の投資では運用成績に大きく影響してきます。

あとは毎月決まった額を買っていく(積立投資)だけで、預金と同様に1度買えばそのまま何もする必要はありません

自分のリスク許容度を考えて、資産のうちどれくらいをこの株式投信に回すのかを決め、買っていきます。(もちろん近い将来に使うことが決まっているお金は除きます。)

売却の必要はない

そして、老後や大きなライフイベントの資金に充てるとき以外は、売る必要はなく、売ってはいけません

つまり、

「投資は、資産の一定額を上述の株式投信というリスク資産に“配置”すること」

と言えるのではないでしょうか。

「運用」をしなくても「配置」さえしておけばよいのです。

配置する場所は、NISAやiDeCoなど税制優遇のある制度から検討してみてください。

投資は「資産運用」ではなく「資産配置」と考えると投資への第一歩を踏み出しやすいと思います。(執筆者:税理士、CFP、FP1級 犬山 忠宏)

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情報提供元: マネーの達人
記事名:「 投資は「資産運用」ではなく「資産配置」と考えよう