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金融引き締めになると金利が上昇するので、変動金利の住宅ローン金利や、新規の住宅ローン固定金利も上昇します。
でも、まだ住宅ローン金利は上昇していません。
最近見かける記事の見出しで「住宅ローン金利が上昇」とあるのは、これから住宅ローンを借りる人向けの新規固定金利が上昇傾向にあるというもので、今返済中の住宅ローン変動金利が上昇しているわけではないのです。
まず金融引き締めと住宅ローン金利について、少しおさらいしてみましょう。
金融引き締めとは、国や政府により景気や物価を安定させるための「金融政策」の一つです。
日本の場合は中央銀行である日本銀行が金利を上昇させる施策を講じるのが「金融引き締め」で、逆に金利を低下させるよう誘導するのが「金融緩和政策」となります。
具体的な金利誘導の手段としては、日本銀行によるオペレーション(「公開市場操作」とも)があります。
日銀が保有する国債などを売却し市場の資金を吸収(売却したお金は日銀が受け取る=吸収)する「資金吸収オペレーション」(いわゆる「売りオペ」)と、その反対に日銀から市中の金融機関などに資金を貸付けたり、国債を買入れたりすることで資金を供給(購入するため日銀が市場にお金を払=供給)する「資金供給オペレーション」(いわゆる「買いオぺ」)があります。
金融政策は景気や物価にどのように影響を及ぼすのですか?
一方、金利が上昇すると、金融機関は、以前より高い金利で資金調達しなければならず、企業や個人への貸出においても、金利を引き上げるようになります。
そうすると、企業や個人は、資金を借りにくくなり、経済活動が抑制されて、景気の過熱が抑えられることになります。また、これに伴って、物価に押し下げ圧力が働くことになります。
このように、景気の過熱を抑えるために行われる金融政策は、金融引締め政策と呼ばれます。(引用元:日本銀行)
これは金融引き締めについての日銀による解説です。
文面にどことなく、金融引き締めへのネガティブな印象が込められている、と感じるのは私の考えすぎでしょうか。
ちなみに省略した部分では「経済活動がより活発となり、景気を上向かせるために行われる金融政策は、金融緩和政策」となっています。
こちらはポジティブに表現しているように、やはり個人的には感じてしまいます。
とはいえここで大事なのは日本銀行(そして政府)が金融政策を転換しない限り、金利は急激に変わることはないという原則があるという点です。
現在(記事執筆2022年11月)のところ、金融政策の転換といったニュースはありません。
このような情勢で、一介の銀行員が金利予想などできるわけがありません。
しかし、その一介の銀行員は「すぐではないにしても、金利上昇に向かっていくんだろうなあ、いやだなあ」とあきらめに近い予想をしています。
それは、ここにきて金利上昇が騒がれ始めたのも一つの要因で、やはり「機運が高まっている」と思うのです。
「金融政策は為替、物価、景気と国民の金利負担などを、総合的に検討し判断していくべきものである」
「日銀が金融政策を判断しているのが現状だが、政府として投機的な動きや急激な為替変動は好ましくないと考えている」
「日銀と連携しながら、過度の変動については、適切に対応していく」
これを見て銀行員の私には総理が「すぐに金融引き締めはしないけど、いつまでも金融緩和政策は続かないよ(続けさせないよ)」と言っているように感じられたのです。(個人的見解です)
記者会見の発言も、はっきり言って何を言っているのかわからないのですがこれも「言語明瞭、意味不明瞭」で政治家としてはむしろさすがというべきなのかも知れません。
参照:首相官邸
予想というか予想できないというか、これくらいにして現実にもどりましょう。
冒頭申し上げた通り、心配するより知ること、準備することが大事なのです。
住宅ローンの変動金利では、金利が上昇する場合は理論的にどこまでも上昇しますし、下がるときも底はなく、それが変動金利です。
しかし、万一急激な金利上昇があり、しかも金利上昇で返済額が急増すると生活も成り立たなくなります。
そこで、金利の変動は止められないけれど、金利上昇に備えた「防御機能」と言える仕組みがあります。
それが「返済額5年間固定方式」と「返済額125%ルール」です。
変動金利は原則として、定期的に金利を見直しています。
1年に1回・10月に見直したり、4月と10月の年2回見直し、あるいは毎月見直す銀行があったりとさまざまです。
ですから変動金利住宅ローンを利用中の人は、いまも定期的に金利の見直しは行われており、ただ金利が変更する状況ではないので変わっていないだけなのです。
金利が上昇した場合も、基準とする日(直近の10月1日としている銀行が多い)の返済額から5年間は、返済額を固定して増減させないのが「返済額5年間固定方式」(*)です。
*返済額5年毎見直しルール:りそな銀行、返済額5年間一定ルール:三井住友銀行といった呼び方もあります。
返済額(通帳から引き落とされるローン支払い額)は5年間変わりませんが、金利上昇が続けば水面下で自分のローン金利も上昇していることになります。
固定されているのは毎回の返済額であって、金利は固定されず、変動金利のままという点は覚えておいてください。
上記した「5年間固定方式」があっても、金利が急激に上昇し続ければ、次の5年間は返済額も増加してしまいます。
ただしその場合でも、以前の5年間の返済額から125%を越える返済にはしない
のが「返済額125%ルール」(返済見直し125%ルール:りそな銀行、三井住友銀行とも)です。
例)現在の毎回返済額が10万円の人は、どれだけ金利が上昇しても12万5,000円(125%)の返済でとどまる
ただし、こちらも返済額が125%でストップされるだけで金利の変動は止まりません。
上記した防御機能は、生活を安定させるための仕組みであり、変動金利を固定化するものではありません。
というより、金利が変動して返済額も上昇するリスクを背負う代わりに低金利というメリットを享受しているのです。
現在「変動金利か固定金利か?」といった記事も多いのですが、この記事では主題から逸れるので触れません。
変動金利は変動金利として受け止め、今から金利上昇に備えてできることを考えていきましょう。
金利上昇に備えて今できることの一つ目は「返したつもり」で貯金することです。
これは特にそういった預金があるわけではありません。
要は考え方として、とにかく金利上昇に備えて積み立てておこうという考えです。
「固定金利を選んだ場合と比べると、自分の返済は毎月2万円少ない。だったらその半分の1万円を貯金していこう」
「金利が想定外に急上昇し、住宅ローン返済を毎月3万円多く返したつもりで、その3万円を積立預金する」
理由付けや金額は自由です、ひとそれぞれ考えて楽しみながら積み立てていければいですね。
上記した「返したつもり貯金」を、もう一歩進めて、たとえばまだ投資経験がない人は、今を一つのタイミングとして投資に踏み込んでみても、いいのではないでしょうか。
たとえば返したつもり積み立てを預貯金ではなく、積立型の投資信託にしてみる。
あるいはいきなりでは心配だから、返したつもりが毎月2万円なら、半分だけ投資に回すといった考え方もいいでしょう。
積立型の投資信託なら「つみたてNISA」(*)が利用できる商品もあるので、投資に踏み込む最初の一歩としておすすめです。
*つみたてNISA:毎年40万円を上限とし、要件を満たした特定の投資信託で得た利益は20年間課税されないという、少額からの長期・積立・分散投資を支援するための非課税制度
参照:金融庁
金利上昇が話題にのぼるほど、心配になるのは当然のことですし、私自身も変動金利住宅ローンを返済しているので、文字通り「ひとごと」ではないのです。
でも、変動金利である以上金利が上昇すればいつかは返済が増えるときが来るかもしれません。
それがいつで、どのくらい増えるか予想できないので余計なやましいのですが、やはり大事なことは住宅ローンの金利が上昇したらどうしようと心配するよりも、上昇したら何が起こるか知ること、そして上昇したときに備えて今できることを考えるべきということです。
一介の銀行員にすぎない私は、精緻な金利情勢を予想する能力や、高度な投資運用理論など持ち合わせてはいません。
ですが、お客様と長年向き合ってきた経験があります。
そして、自分も変動金利住宅ローンを返済してきた「仲間」です。
金融引き締めがあるかどうか?あるならそれはいつかなどわかりませんがとりあえず、そんなに急変はしないと思いますから、今準備できることを始めていきましょう。(執筆者:銀行員一筋30年 加藤 隆二)
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