会社員(正社員、嘱託社員、パート、アルバイトなど)に対して、1月以降に支給される給与からは、この金額が少ない場合を除き、概算額の所得税が控除されます。

なぜ概算額を控除するのかというと、各人に課税される所得税は、年間に支給された給与の合計を元にして算出するため、年内最後の給与が支給されるまで、正しい金額がわからないからです。

また勤務先は年間の給与の合計が確定する12月になったら、正しい金額の所得税を算出します。

この正しい金額の所得税と、1月以降の給与から控除した概算額の所得税の合計を比較し、「正しい金額の所得税<概算額の所得税の合計」になっていたら、勤務先は取り過ぎた分を還付するのです。

一方で「正しい金額の所得税>概算額の所得税の合計」になっていたら、勤務先は足りない分を徴収するのです。

こういった過不足を精算する手続きが年末調整になりますが、一般的には多めに控除されているため、還付される可能性が高いのです。

また年末調整が終わった後の、翌年1月以降に支給される給与からは、概算額の所得税が再び控除され、12月になったら年末調整で精算というサイクルを、従業員が退職するまで繰り返していきます。

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概算額の所得税は扶養する親族の人数に応じて低くなる

年末調整の直前になると勤務先から、次のような3つの書類が配布されると思います。

(A)給与所得者の保険料控除申告書

(B)給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書

(C)給与所得者の扶養控除等(異動)申告書

この中の(A)と(B)は年末調整の際に、正しい金額の所得税を算出するために使用します。

一方で(C)は翌年1月以降の給与から控除する、概算額の所得税を算出するために使用します。

例えば親族を扶養している方が、その親族の情報を(C)に記入して勤務先に提出すると、扶養している親族の人数に応じて、概算額の所得税が低くなります。

その理由としては「配偶者控除」や「扶養控除」などの所得控除を、計算過程で適用したうえで、概算額の所得税を算出するからです。

また勤務先が概算額の所得税を算出する際は、「給与所得の源泉徴収税額表(月額表)」を使用する場合が多いのです。

この表の中に記載された税額は、金額が低い「甲欄」と、金額が高い「乙欄」に分かれており、

  • (C)を提出した方は「甲欄」、
  • (C)を未提出の方は「乙欄」

が適用されます。

そのため(C)を未提出というだけで、翌年1月以降の概算額の所得税が高くなってしまうため、独身で扶養する親族がいない方や、共働きで配偶者を扶養していない方なども、提出した方が良いのです。

注意1. 年金を受給している会社員が年末調整の前に注意すべき点

公的年金から支給される3種類の年金のち、遺族年金(遺族基礎年金、寡婦年金、遺族厚生年金など)や、障害年金(障害基礎年金、障害厚生年金など)は、非課税という取り扱いになります。

一方で老齢年金(65歳から支給される老齢基礎年金と老齢厚生年金、経過措置で60~65歳までの間に支給される特別支給の老齢厚生年金など)に対しては、所得税が課税されます

ただ所得税が課税されるのは、

  • 65歳未満は老齢年金の合計が「年間で108万円以上」
  • 65歳以上は老齢年金の合計が「年間で158万円以上」

の場合です。

この要件を満たす方については、偶数月の15日に老齢年金が支給される時に、ここから所得税が控除(源泉徴収)されます。

また翌年の老齢年金から控除する所得税を算出するため、毎年9月以降になると日本年金機構などから、「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」という書類が送付されます。

例えば親族を扶養している方が、その親族の情報を記入して提出すると、「配偶者控除」や「扶養控除」などの所得控除を、計算過程で適用したうえで、老齢年金から控除される所得税が算出されます。

そのため「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」を提出しなかった場合より、老齢年金から控除される所得税が低くなるのです。

逆に言えば提出を忘れると、所得税が高くなってしまうため、忘れずに提出したいところです。

勤務先に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出する人は要注意

しかし、(C)の「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を勤務先に提出する予定がある方は、

「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」の提出を控えた方が良い

のです。

その理由としては両方の書類を提出した場合、給与だけでなく老齢年金に対しても、「配偶者控除」や「扶養控除」などの所得控除が適用されるため、重複適用になってしまうからです。

また重複適用によって課税される所得税が、本来よりも低くなった場合には、その分を追加で納税する必要があります。

こういった点は年金を受給している会社員の方が、年末調整の前に注意すべき点だと思います。

注意2. 確定申告の際には「給与所得の源泉徴収票」が必要になる

2011年分の所得税から、「年金所得者に係る確定申告不要制度」を利用できるため、次のような2つの要件を満たしている年金受給者は、自分で確定申告をしなくても良いのです。

(1)年間の公的年金等の合計(課税対象になる老齢年金などの合計であり、遺族年金や障害年金は含まない)が400万円以下で、かつ、その公的年金等のすべてが、源泉徴収の対象になっている

(2)公的年金等に係る雑所得以外の所得(例えば生命保険の満期保険金の受け取りによる「一時所得」、勤務先から受け取った「給与所得」など)の合計が、年間で20万円以下になっている

会社員として働いているため、給与所得がある年金受給者については、(2)の要件を満たせるかに注目した方が良いのです。

この給与所得を算出する際は、年間に支給された給与の合計から、会社員の必要経費にあたる給与所得控除額を差し引きます。

また給与所得控除額の最低額は55万円になるため、年間に支給された給与の合計が75万円以下であれば、「75万円-55万円=20万円」により、年間の給与所得は20万円以下になります。

このように(2)の要件を満たせる年間の給与の合計は、75万円以下が目安になるため、年金を受給している会社員の多くは、確定申告が必要になるのです。

年末調整の後に発行される「給与所得の源泉徴収票」は要保管

また確定申告の際には、年末調整の後に発行される「給与所得の源泉徴収票」の情報を参照するため、これを捨てないで保管しておくというのが、年末調整の後に注意すべき点です。

なお所得控除の重複適用によって、課税される所得税が低くなった場合は上記のように、その分を追加で納税する必要があります。

確定申告の際には給与と老齢年金を合計したうえで、課税される所得税を再計算するため、実際にいくら納税するのかがわかります。(執筆者:社会保険労務士 木村 公司)

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情報提供元: マネーの達人
記事名:「 【年末調整】年金受給しながら働いている会社員が前後で注意すべき点2つ