経済格差は世界的に拡大していると言われています。

世帯所有の金融資産額や個人の所得額から見て、どのようになっているのでしょうか。

金融資産と総所得について上位1%が占める割合、エンゲル係数、ジニ係数、貧困率について解説します。

歴史的には、戦争や革命や疫病などで不平等が一時的に縮小し、平等化などを繰り返しながら変動、現在は世界的に格差拡大傾向にあります。

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世帯の金融資産で比較

※「2019年全国家計構造調査 家計資産・負債に関する結果」のデータを筆者が集計

【表1】【グラフ1、2】世帯の金融資産額別で世帯数、保有金融資産総額を集計しています。

 

世帯の金融資産総額は合計約1,180兆円、上位1%(約50万世帯)は世帯あたり約1.6億円以上、合計約241兆円で総額の20%相当額を保有しています。

次の4%(約200万世帯)は世帯あたり約9,000万円~1.6億円、合計約252兆円で総額の21%額を保有しています。

ボリュームゾーンの36%(約1800万世帯)は世帯あたり約500~3,000万円、合計約241兆円で総額の21%額を保有しています。

45%(約2,250万世帯)は世帯当たり 約500万円以下、合計約44兆円で総額の4%額を保有しています。

まとめると、

  • 上位1%の世帯が日本の金融資産総額の20%、
  • 上位5%で40%、

上位10%で57%保有していることになります。

所得額で比較

(1) 上位1%所得、(2) ジニ係数、(3) 相対的貧困率、(4) エンゲル係数 を不平等の指標として、世界9か国と比較しています。

(「世界ランキング(sakura.ne.jp)」「暴力と不平等の人類史:ウォルター・シャイデル著」「厚労省2019年国民生活基礎調査」「総務省統計研究研修所」データを筆者が集計)

1. 上位所得1%が占める割合【グラフ3、4】

 

日本と米国は第2次世界大戦前15~20%あり不平等が高い国だったといえますが、戦争で大幅に減少し日本は1945年6.4%へダウン

その後は、微増の傾向です。

2010年の段階では不平等上位の国は米国、南アフリカ。次にドイツ、イギリス。日本、イタリア。

比較的低いのはスウェーデンです。

2. ジニ係数【グラフ5、6】

ジニ係数とは所得格差を示すときによく使う指標で、0~1で示します。

  • 1人が全てを持っていれば「1」
  • 全員が同等の資産なら「0」です。

不平等が高いほど1に近づきます

求め方は、所得の低い順番に並べ、世帯数累積を横軸に、所得累積を縦軸で所得分布をグラフ化(ローレンツ曲線)して計算します。

日本は第2次大戦前で0.5と高いレベルでしたが戦争で0.35程度に低下し、2019年では0.24と低下しています。

南アフリカは高いレベルで米国もやや高め、スロバキアは低い傾向です。

3. 相対的貧困率【グラフ7、8】

相対的貧困率」とは、世帯の所得がその国の等価可処分所得の中央値の半分(貧困線)に満たない割合を示し、住んでいる国の大多数の人より相対的に貧しい割合を示します。

厚生労働省の「国民生活基礎調査」2018年の日本における貧困線は127万円、相対的貧困率は15.4%、日本人口の6人に1人は、相対的貧困の状態とみなされ世界でも上位に位置しています。

南アフリカが28%で非常に高く次に米国、日本、イタリア、イギリス

次にドイツ、スウェーデン、フランス、スロベニアです。

【グラフ9】相対的貧困率とジニ係数は高い相関関係を示しています。

4. エンゲル係数【グラフ11、12、13】

エンゲル係数」とは、家計の消費支出にしめる食料費の比率(%)のことで、生活水準を示す「貧困指標」としています。

ドイツの社会統計学者エンゲルが論文で

「所得の上昇につれて、家計費にしめる食料費の割合が低下する傾向にある(エンゲルの法則)」

を1858年に発表しています。

戦後すぐは、日本全体が貧しかったのでエンゲル係数は60%台でした。

経済成長で生活が豊かになり低下し2005年は22.9%で最低値でしたが、その後は徐々に上昇しています。

データから読み解く「4つの考察結果」

  1. 日本の金融資産は、上位1%の世帯が資産総額の20%、上位5%で40%、上位10%で57%保有していることになります。
  2. 世界での日本の位置は「上位1%所得シェア」は中位、「ジニ係数」「相対的貧困率」「エンゲル係数」でみる貧困度は下位グループに属しています。
  3. 歴史的には、戦争や革命や疫病などで不平等が一時的に縮小し平等化などを繰り返しながら変動、現在は世界的に格差拡大傾向にあります。
  4. 日本の格差は世界的にみれば中位置ですが、貧困度は高いと考えられます。

実体経済では金融格差を減らすために、資産の再分配や社会政策を実施していますが短期的な視点での政策が多く、市場の状況をみながら行き過ぎた行為を抑制する対応が必要です。

個人資産が自分の所得だけでは考えられないくらい膨大になるのは、特権階級への富の集中に原因があるのでしょう。

また、格差拡大の原因の1つにグローバル化があげられ、新たなテクノロジーでますます格差が拡大する可能性があり、成長、格差抑制をバランスをとって行う必要があるでしょう。(執筆者:1級FP技能士 淺井 敏次)

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情報提供元: マネーの達人
記事名:「 日本の経済格差は「拡大傾向」を示す4つのデータ 上位1%の世帯が家計金融資産の20%、総所得の10%を占める