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投資の一種として、アパートやマンション1室などを賃貸し、その家賃を受け取るという不動産投資があります。
全額を手持ちの自己資金で行うなら問題はありませんが、銀行などから不動産投資の資金をローンで借りる場合は不正が発生します。
一般に不動産投資ローンの金利は、住宅ローンに比べると高めに設定されています。
不動産投資の金利が高いのではなく、住宅ローンが特別に低金利だからです。
自分と家族が住む家を手に入れる住宅ローンは、金利だけでなくいろいろな面で特別扱いされ、優遇されています。
この住宅ローンの低金利を狙い、本当は不動産投資なのに住宅ローンと偽って借り低金利で運用使用とするのが「住宅ローンで不動産投資を偽装」です。
フラット35による偽装の調査結果資料を参考に、住宅ローンで不動産投資を偽装した事例について紹介します。
参照:住宅金融支援機構 フラット35の不適正利用懸念事案に係る調査結果の公表(pdf)
≪画像元:住宅金融支援機構(pdf)≫
平成30年10月~令和元年8月までの間で、フラット35で不適正利用の疑いがある113件のうち、105件(92.9%)について不適正利用があることを確認しています。
「最初から投資目的で申込みをし、かつ住宅購入価格を水増しした」
という理由が圧倒的です。
調査対象になった融資のほぼ全てが投資を偽装していたと言えます。
銀行でも同様で、私の勤務する銀行でも偽装が発覚している現状があります。
≪画像元:住宅金融支援機構(pdf)≫
不動産投資というと、多くの土地を持つ高齢の資産家をイメージがありますが、調査結果から見えてくるのは
この点から「物件は多く出回っているタイプで、実際に住宅ローンで購入申し込みが良くある物件のタイプ」だと感じます。
参照:住宅金融支援機構 フラット35の不適正利用懸念事案に係る調査結果の公表(pdf)
勧誘を受けて、つい儲け話だと載ってしまった、というのが発端だとしても、偽装していたことを自分でわかっていたなら、純粋に被害者だと救済はしてもらえません。
住宅ローンや融資の契約を仕事にしている銀行員から見れば「最初から最後まで、まったく悪いことだとは知らなかった」と言う人がいても信じることはできません。
悪質な業者が不正を勧誘するのはもちろんいけないことですが、そこで毅然と断ることはできたはずです。
自分で住宅ローンを借りて、その家に住んでいなかったのですから、知らなかったとは言えるはずがありません。
銀行員として申し上げますが、住宅ローンで不動産投資を偽装したら必ずバレます。
銀行など住宅ローンを貸している金融機関側の基本姿勢は、「偽装もあり得る」と想定し、自衛手段を講じています。
住宅ローンは自分が住むための家や土地、マンションを買うためのローンであり、ローンを借りた人やその家族が住むのは当たり前のことですが、「ごく当たり前のこと」をわざわざ文章にしていることを「自衛手段」といいます。
住宅ローンの基本事項を説明する「商品説明書」「商品概要説明」といった文書で「お使いみち、資金使途」として本人が住むためのお金だと明言しているものです。
説明にも2種類あります。
「資金使途が本人の自宅購入用ですよ」と明言することで、投資や賃貸はできないと暗に表現するタイプです。
私が対応するなら、
参照:りそな銀行(pdf)
ハッキリと「投資や賃貸はダメ」と禁止しているものです。
私が対応するなら、
と、話します。
参照・みずほ銀行
シンプルにするため極端な表現ですが、
「前もって住宅ローンを不動産投資に使ってはいけないと説明してあるし、あなたもそのことを約束していますよね?」
「ですから、これからの対処によっては一括返済など要求することもありますけど、文句は言えませんよ」
と金融機関は自衛手段を講じています。
偽装発覚のよくあるパターンとして、住宅ローンを借りた家に、本人が住んでいない事実を金融機関が知るというのが発端です。
これは顧客宛の郵便が配達されなかったりして、露見するものです。
金融機関は偽装を見抜く方法やノウハウを持っているので、100%に近い確率で偽装を見抜けます。
偽装が発覚するとどうなるのでしょうか?
実際は個別のケースで内容は異なりますが、偽装が発覚した場合には原則として、
こちらの2パターンに分かれます。
住宅ローンで不動産投資を偽装するなど不正行為に関与した業者は「不芳業者(悪徳業者の意味)」などと当局に通報されることで、同じような商売は続けられなくなりますし、さらに悪質なら警察などに訴えられる場合もあります。
住宅ローンは他の融資同様、金融機関と顧客の契約で成り立っています。
お金を借りるうえで、双方が守るべき約束事を明記し、お互いに納得のうえで契約を結んでいるので住宅ローンでお金を借り入れる契約書類である、いわゆる借用金証書も正式には「金銭消費貸借契約証書」と呼ばれます。
契約証書には顧客(お金を借りる債務者)が守るべき約束事を守らなかった場合には、一括で全額返済を求められる場合があると明記されています。
住宅ローンをイメージすると、毎月決まった日に金利と元金を返済する約束を守っていれば何十年という長い期限でゆっくり返済する権利があります。
これを「期限の利益(この場合は、ゆっくり返済できる権利のこと)」と呼び、決まった返済を守れていれば問題はありません。
返済が何か月も遅れると、最終的には一括で返済しなければならなくなります。
一括で返済しなければならない状態を「期限の利益を喪失した」と呼びます。
住宅ローンではさまざまな約束事があり、その中でこの記事で取り上げている「偽装」も禁止事項なので、破れば期限の利益を喪失して一括返済を求められるのです。
一括返済まで悪質なレベルでないケースで想定される対応です。
すべてがローンの変更で済まされるとも限りませんが、一括返済を求めずにローンの種類を変更する可能性もあります。
ローンの種類が変更された場合、金利の優遇はなく、金利が大幅に引き上げられます。
私が対処したお客様でも、偽装が発覚し、毎回の返済額は以前の2倍近くになってしまいました。
私が対応した方は、
1. 自分も承知しながら住宅ローンで不動産投資を偽装したことが発覚
2. 一括返済を求められる
3. 返済するだけの自己資金なし
4. 家を売却も全額返済にはならずローンが残る
5. 自己破産
その家を賃貸して住んでいた人は、住宅ローンの偽装だとは知らず、普通の借家だと思っていたそうです。
賃貸している人がいたことも考慮し、銀行も関与して売却後もそのまま住み続けられることになっていましたが、退去しました。
住宅ローンで不動産投資を偽装したが発覚し、一括返済を求められたができずに本人は自己破産。
「知らなかった」は通用せず、不正は絶対にバレます。
重くツラい結末にならないよう、気を付けてください。(執筆者:銀行員一筋30年 加藤 隆二)
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