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2022年10月からは後者の新基準の中にある(D)と(E)が、次のように改正されます。
(D)雇用期間の見込みが1年以上→雇用期間の見込みが2か月超
(E)厚生年金保険の適用対象者が501人以上→厚生年金保険の適用対象者が101人以上
また2024年10月からは(E)が、次のように改正されるため、2段階で社会保険の適用が拡大されるのです。
(E)厚生年金保険の適用対象者が101人以上→厚生年金保険の適用対象者が51人以上
第1段階の改正があと少しで実施されるため、新たに社会保険に加入する従業員がいる会社では、説明会を行うなどの対応をとっているようです。
また説明を受けた従業員は次のような3つの中から、希望するものを選択する場合が多いようです。
(1)従来と変わらない所定労働時間で働く
(2)社会保険料の控除による手取りの減少を防ぐため、従来よりも所定労働時間を増やす
(3)社会保険への加入を避けるため、1週間の所定労働時間を20時間未満に抑える
この中の(3)を選択した場合には、次のような問題が起きる可能性があると思います。
社会保険に加入していないパートやアルバイトであっても、雇用保険には加入している場合があります。
また現在は加入年齢の上限がなくなっているため、次のような3つの要件を満たしていれば、何歳になっても雇用保険に加入します。
(A)1週間の所定労働時間が20時間以上である
(B)31日以上雇用される見込みがある
(C)学生ではない(夜学や休学中の学生などは加入対象)
この中の(A)や(C)については、社会保険に加入する新基準と重なっているのです。
そのため1週間の所定労働時間を20時間未満に抑えると、社会保険に加入しないだけでなく、雇用保険にも加入しなくなります。
雇用保険から支給される保険給付としては、失業手当(65歳未満を対象にした基本手当、65歳以上を対象にした高年齢求職者給付金など)の他に、例えば次のようなものがあります。
1歳(所定の要件を満たせば1歳6か月または2歳まで延長可能)未満の子を養育するため、育児休業を取得した時に、最大で休職前の賃金の7割程度(6か月以降は5割程度)が支給される制度です。
一定範囲の家族を介護するため、介護休業を取得した時に、最大で休職前の賃金の7割程度が支給される制度です。
社会保険への加入を避けるため、1週間の所定労働時間を20時間未満に抑えると、こういった雇用保険の保険給付を受給できなくなる点は、将来的に問題になる可能性があるのです。
雇用保険の保険給付を受給できなくなるという問題の対策としては、副業があると思います。
例えば本業の会社の1週間の所定労働時間が15時間、副業の会社の1週間の所定労働時間が10時間の場合、合計の所定労働時間は25時間になります。
しかし社会保険に加入するか否かは、2社の所定労働時間を合計したものではなく、それぞれの所定労働時間で判断するため、この例のように両社とも20時間未満であれば、社会保険には加入しないのです。
また雇用保険に加入するか否かも原則として、2社の所定労働時間を合計したものではなく、それぞれの所定労働時間で判断し、いずれか一方のみで加入するため、この例では雇用保険にも加入しないのです。
ただ片方の会社を退職してももう一方の会社では働けるため、失業手当を受給できなくても収入はゼロにはなりません。
こういった理由から副業は、雇用保険の保険給付を受給できなくなるという問題の、対策になると思うのです。
なお65歳以上の方については、合計の所定労働時間が20時間以上(片方は5時間以上20時間未満)であれば、ハローワークに対する申出によって雇用保険に加入できる、マルチジョブホルダー制度があります。
この制度を利用して雇用保険に加入できた場合には、片方の会社を退職した時に、失業手当を受給できる可能性があるのです。
他社でパートやアルバイトとして働く副業の他に、自宅で従業員を雇わない、小規模な個人事業を行う副業もあります。
こういった小規模な個人事業の事業所は、社会保険の適用事業所にはならないため、副業の労働時間が何時間になっても、個人事業の方では社会保険に加入しません。
また育児や介護によって、働きに出るのが難しくなっても、自宅での小規模な個人事業なら、稼げるチャンスが残されているため、育児休業給付金や介護休業給付金を受給できなくても、収入がゼロになりにくいのです。
そのため副業を実施するなら、他社でのパートやアルバイトだけでなく、自宅での小規模な個人事業も検討してみるのです。
もちろん個人事業で稼ぐのは簡単なことではありませんが、家賃や電気代などの一部を必要経費にして節税するなど、パートやアルバイトでは難しい節税策を実施できるので、やってみる価値はあると思います。(執筆者:社会保険労務士 木村 公司)