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マイナンバーカードの隠れたメリット 年金と雇用保険に便利な活用法を解説
退職によって収入がなくなった方は、税法上の扶養や健康保険の扶養に入れる場合があります。
税法上の扶養に入れた場合には、扶養している方の所得税や住民税の負担が、軽くなるというメリットがあります。
一方で健康保険の扶養に入れた場合には、その方は保険料を負担しなくても、健康保険から各種の保険給付を受けられます。
また健康保険に加入している方が納付する保険料は、給与(月給、賞与)の金額を元にして算出するため、扶養している方の保険料の負担は、親族が扶養に入った後も変わらないのです。
こういったメリットのある健康保険の扶養に入れるのは、次のような2つの要件を満たしている、3親等内の75歳未満(75歳以降は後期高齢者医療に移行)の親族のうち、原則として日本国内に住んでいる方です。
【健康保険に加入している方と扶養に入れようとする親族が同居】
・ 扶養に入れようとする親族の年収が、130万円(60歳以上の親族、障害厚生年金を受けられる程度の障害状態にある親族は180万円)未満である
・ 扶養に入れようとする親族の年収が、健康保険に加入している方の年収の2分の1未満である
【健康保険に加入している方と扶養に入れようとする親族が別居】
・ 扶養に入れようとする親族の年収が、130万円(60歳以上の親族、障害厚生年金を受けられる程度の障害状態にある親族は180万円)未満である
・ 扶養に入れようとする親族の年収が、健康保険に加入している方からの仕送り額より少ない
このように健康保険に加入している方と、扶養に入れようとする親族が同居か別居かで、要件が少しだけ変わってきます。
また別居であっても健康保険の扶養に入れるのは、配偶者、子、孫、直系尊属(父母、祖父母など)、兄姉弟妹といった、一部の親族だけになってしまう点に、注意する必要があります。
なお健康保険の扶養に入れる要件を満たしている、20歳以上60歳未満の配偶者は、所定の届出をすることによって、国民年金の第3号被保険者になれる場合があります。
この第3号被保険者であった期間は、国民年金の保険料を自分で納付しなくても、納付したものとして取り扱われるため、健康保険の扶養と同じようにメリットが大きいのです。
退職した後に受給できる雇用保険の基本手当、いわゆる失業手当は非課税になるため、税法上の扶養に入れるか否かを判定する際には、年収の中に含めません。
一方で健康保険の扶養に入れるか否かを判定する際には、基本手当を年収の中に含めます。
また基本手当日額(退職日の直前6か月間に支払われた給与の合計を、180で割って算出した賃金日額の45~80%程度)が、3,612円(5,000円)以上の場合は原則として、健康保険の扶養に入れません。
その理由としては「3,612円×360日=130万320円」、または「5,000円×360日=180万円」により、年収130万円(180万円)未満という要件を満たせなくなるからです。
実際に基本手当を360日分も受給できる方は、かなり少ないのではないかと思います。
それなのに基本手当日額が3,612円(5,000円)以上だと、健康保険の扶養に入れないのは、今後に受給できる可能性がある基本手当の総額ではなく、基本手当日額から推定される年収を元にして判定するからです。
基本手当日額が3,612円(5,000円)以上の場合は上記のように、健康保険の扶養には入れないため、国民健康保険などの他の公的医療保険に加入する必要があります。
ただ基本手当を受給する前の待機期間(7日間)や、給付制限期間(正当な理由のない自己都合退職の場合は2~3か月程度)については、健康保険の扶養に入れる場合があります。
また基本手当の受給が終わった後に、就職先が決まっていない時にも、健康保険の扶養に入れる場合があります。
こういったルールになっているため、わずか数か月の間に、次のような複数の公的医療保険に加入する方がいるのです。
・ 勤務先の健康保険に加入(退職するまで)→健康保険の扶養(待機期間や給付制限期間が終わるまで)→国民健康保険に加入(基本手当の受給開始から終了まで)→健康保険の扶養
そうなると健康保険証の受け渡しが、何度も必要になってくるため、手間がかかるのです。
こういった時にマイナ保険証を保有していると、健康保険証の受け渡しが不要になるため、役に立つと思います。
また自宅からパソコンやスマホなどで、国民健康保険の手続きができるようになったら、更に役に立つと思います。
なお国民健康保険に加入している期間中の、国民年金の被保険者の種別については、第3号被保険者ではなく第1号被保険者になるため、自分で国民年金の保険料を納付する必要があります。
ただ退職(失業)による特例免除などを申請することにより、全額免除や納付猶予を受けられる場合があるため、国民年金の保険料を納付しないで済むケースもあるのです。(執筆者:社会保険労務士 木村 公司)
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