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また年齢別の「人口に対する交付枚数率」を見てみると、10代は30%台、20~50代は40%台に止まっております。
一方で60歳以降を見てみると、次のように50%を上回っている場合が多いため、10~50代よりは交付枚数率が高めなのです。
・ 60~64歳:52.7%
・ 65~69歳:49.0%
・ 70~74歳:50.4%
・ 75~79歳:52.2%
・ 80~84歳:51.7%
・ 85~89歳:45.6%
・ 90歳以上:37.6%
この理由について考えてみると、例えば高齢になって運転免許証を返納した後に、顔写真付きの身分証明書がなくなる場合があります。
マイナンバーカードを取得していれば、こういった状況になっても、困らずに済むからだと推測されます。
個人的には次のような3つの理由により、60歳になってからではなく、60歳になるまでに、マイナンバーカードを取得した方が良いと思います。
マイナンバーカードの隠れたメリット 年金と雇用保険に便利な活用法を解説
遺族年金(遺族基礎年金、寡婦年金、遺族厚生年金など)や、障害年金(障害基礎年金、障害厚生年金など)は、非課税という取り扱いになります。
一方で原則65歳から支給される老齢基礎年金と老齢厚生年金、経過措置で60~65歳までの間に支給される特別支給の老齢厚生年金には、所得税などが課税されるのです。
ただ「年金所得者に係る確定申告不要制度」があるため、次のような2つの要件を満たす場合には、確定申告(所得税を自分で計算して納付する手続き)を、実施しなくても良いのです。
・ 公的年金等(老齢基礎年金、老齢厚生年金、特別支給の老齢厚生年金など)の収入金額の合計が400万円以下で、かつ、その公的年金等のすべてが源泉徴収の対象になっている
・ 公的年金等に係る雑所得以外の所得(例えば労働によって得た給与所得、生命保険金の受け取りによる一時所得など)の合計が、20万円以下である
60歳以降に会社員として働いているため、公的年金等の他に給与収入がある場合には、給与所得が20万円以下という要件を満たせるか否かが、ポイントになってくると思います。
給与所得を算出する際は、年間(1~12月)の給与収入の合計から、給与所得控除額(会社員の必要経費)を差し引きますが、これの最低額は55万円になります。
そのため年間の給与収入の合計が75万円以下であれば、「75万円-55万円=20万円」により、給与所得が20万円以下という要件を満たせるのです。
一方で年間の給与収入の合計が75万円を超えると要件を満たせず、確定申告が必要になるため、60歳以降に老齢年金を受給しながら、会社員として働いていると、確定申告が必要になる場合が多くなります。
これを負担に感じる方がいるかと思いますが、マイナンバーカードを取得し、パソコンやスマホを使ってe-Taxで確定申告すると、税務署まで行くための手間や時間などを省けるのです。
またマイナンバーカードの取得者が利用できるマイナポータルと、e-Taxの情報連携によって、医療費通知情報のデータがe-Taxに自動入力されるため、医療費控除を受けるための手間や時間なども省けます。
こういった理由から60歳までに、マイナンバーカードを取得した方が良いと思うのです。
60~70歳までの間に厚生年金保険に加入している方、または70歳以降に厚生年金保険の適用事業所で働いている方は、老齢厚生年金の全部または一部が、支給停止になる場合があります。
こういった支給停止が始まるのは、給与(月給+直近1年間の賞与の総額÷12)と、老齢厚生年金の月額の合計が、一定の基準額(現在は47万円)を超えた場合です。
また一定の基準額を超えるほど、支給停止になる老齢厚生年金は増えていき、最後は全部が支給停止になります。
自分で計算するのは難しいと感じる方は、マイナンバーカードを取得した方が良いと思うのです。
その理由としてはマイナンバーカードを使って、マイナポータルにログインし、簡単な連携手続きをすると、ねんきんネットを利用できるようになります。
またねんきんネットに対して、60歳以降に勤務先から受け取れそうな給与の金額を入力すると、支給停止になる老齢厚生年金の目安額を、試算してくれるからです。
このような試算を60歳になる前に行い、支給停止にならない給与の範囲がわかったら、60歳以降はそれを参考にして、働き方などを決めれば良いと思います。
高齢になるほど病気やケガになりやすくなるため、医療費の負担が重くなります。
こういった負担を軽減するため、1か月あたりの医療費の自己負担が一定の上限額(自己負担限度額)を超えた場合には、各人が加入する公的医療保険から、高額療養費が支給されます。
そのため「自己負担限度額を超えた支払いは手続きによって後日に還付」、または「医療費の支払いは自己負担限度額まで」の、いずれかの取り扱いになるのです。
この自己負担限度額は70歳を境にして金額が変わるだけでなく、各人の所得水準によっても金額が変わりますが、例えば70歳以上の方の自己負担限度額は、次のような金額になります。
≪画像元:厚生労働省(pdf)≫
例えば「一般」に該当する方の自己負担限度額は、月5万7,600円(外来だけの上限額は月1万8,000円)です。
また「住民税非課税等」に該当する方の自己負担限度額は、月2万4,600円か1万5,000円(外来だけの上限額は月8,000円)です。
このように「住民税非課税等」であれば、月1~2万円程度の自己負担で済むのですが、入院する前などに「限度額適用・標準負担額減額認定証」の交付を受け、これを病院などの窓口に提示する必要があります。
もし提示がなかった場合は「一般」に該当する方と、自己負担限度額が同じになるため、数万円は自己負担が上がってしまうのです。
もちろん手続きを行い、後日に還付を受ければ良いのですが、その分だけ手間と時間がかかります。
こういったデメリットを解消してくれるのが、健康保険証としての登録を済ませたマイナンバーカードなのです。
その理由としてはマイナンバーカードを、健康保険証として使える病院などであれば、「限度額適用・標準負担額減額認定証」の交付を受けなくても、「住民税非課税等」の自己負担限度額が適用されるからです。
マイナンバーカードを健康保険証として使える病院などは、まだ少ないのですが、今後に使える機会が増えれば、取得しておいて良かったと思えるはずです。(執筆者:社会保険労務士 木村 公司)
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