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毎年1回、誕生月(1日生まれの方は誕生月の前月)になると、ねんきん定期便が送付されますが、これには2つの欠点があると思います。
節目年齢(35歳、45歳、59歳)には、全期間の年金記録が記載されたものが、A4判の封書に入って送付されます。
節目年齢以外になると、直近1年間の年金記録だけが記載されたものがハガキで送付される点は、1つ目の欠点だと思うのです。
例えば過去に免除を受けていた国民年金の保険料を、追納したいと思った場合、節目年齢に送付されるA4判のねんきん定期便であれば、どの年に何か月の免除期間があるのかが、すぐにわかります。
しかしハガキのねんきん定期便には、直近1年間の年金記録だけしか記載されていないため、過去の分を捨ててしまった場合には、こういった免除期間の情報がよくわからないのです。
また追納を実施すると、その期間に関しては免除期間から、納付済期間に変わります。
ただ40歳の時に一部の期間だけ追納を実施した方が、ねんきん定期便で変わったのを確認できるのは、次の節目年齢の45歳になります。
そのため例えば42歳の時に、残りの期間の追納を実施する場合、追納した期間のメモを取っていないと、どこが免除期間のままになっているのかが、よくわからないのです。
こういった理由などから、節目年齢以外はハガキで送付される点は、ねんきん定期便の1つ目の欠点だと思います。
50歳以上60歳未満の方に送付される、ねんきん定期便を見てみると、現在の加入条件が60歳まで継続すると仮定した場合の、老齢年金(老齢基礎年金、老齢厚生年金など)の見込額が記載してあります。
厚生年金保険から支給される老齢厚生年金の金額は、勤務先から支払われた給与(月給、賞与)の平均額と、厚生年金保険に加入した月数で決まります。
こういった仕組みのため、60歳までの給与の変動が少なかった場合には、老齢年金の見込額と実際の受給額は、かなり近くなるのです。
一方で50歳未満の方に送付される、ねんきん定期便を見てみると、これまでの加入実績に応じた、老齢年金の金額が記載してあります。
そのため加入実績が短い20~30代の方は特に、老齢年金の金額が少なく記載されているので、この部分を見ても老後の生活を、イメージできない場合が多いのです。
公的年金の不足を補うために、老後資金として準備する金額もイメージできない場合が多いため、50歳未満だと老齢年金の見込額が記載されていない点は、ねんきん定期便の2つ目の欠点だと思います。
マイナンバーカードを利用して、マイナポータルにログインすると、ねんきんネットとの連携手続きができます。
この手続きが完了すると、ねんきんネットのユーザIDを持っていなくても、マイナポータルにログインした後に、ねんきんネットを使えるのです。
実際にねんきんネットを使ってみると、節目年齢のねんきん定期便と同じように、全期間の年金記録がわかります。
そのうえ追納が可能な期間がどこにあるのかを、ねんきんネットが教えてくれるだけでなく、追納を実施すれば免除期間が納付済期間に変わるため、追納を検討している方にとっては、かなり便利だと思います。
またねんきんネットであれば、50歳未満の方であっても、現在の加入条件が60歳まで継続すると仮定した場合の老齢年金の見込額を、試算することができます。
もちろん加入条件に変化があれば、老齢年金の見込額が変わるため、次のような加入条件の変化があった時には、改めて試算してみるのが良いと思います。
なお60歳以降も厚生年金保険に加入しながら働く場合、給与と老齢厚生年金の合計が一定の基準額を超えると、老齢厚生年金の全部または一部が支給停止になるのです。
ねんきんネットに対して、60歳以降に受け取れそうな給与の金額を入力してみると、支給停止になるか否かだけでなく、支給停止になる老齢厚生年金の目安もわかります。
また繰上げ受給(老齢年金の受給開始を早める)した時の減額の目安や、繰下げ受給(老齢年金の受給開始を遅くする)した時の増額の目安もわかるため、とても便利だと思います。
雇用保険の失業手当(65歳未満の基本手当、65歳以上の高年齢求職者給付金)や、育児休業給付などを受給するには、雇用保険の加入期間が一定以上は必要になるため、加入漏れがあると受給できない場合があります。
そのため雇用保険の加入記録などが間違っていないのかを、定期的に調べた方が良いのです。
しかし今のところ雇用保険には、ねんきん定期便のような制度がないため、これを調べるためにはハローワークまで、足を運ぶ必要があります。
こういった欠点を解消し、雇用保険を便利してくれるのが、マイナンバーカードではないかと思います。
その理由としてマイナンバーカードを利用し、マイナポータルにログインすると、雇用保険の加入記録などがわかるからです。
これを調べてみた時に、雇用保険の加入漏れがあった場合、遡って加入する手続きを、勤務先にお願いしてみるのです。
また例えば基本手当を受給するには、雇用保険の加入期間があと少し足りないことがわかった場合、退職日を遅らせるなどの対策を、検討してみるのが良いと思います。(執筆者:社会保険労務士 木村 公司)
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