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相続税の連帯納付義務とは、同一の被相続人(亡くなった人)から相続・遺贈により財産を取得したすべての人は、相続により取得した財産に対する相続税を互いに連帯して納付しなければいけない制度です。
相続人である長男・次男のうち、長男が相続税の支払いをしなかった場合、次男が長男の相続税を支払わなければいけません。
ただし連帯納付義務は、相続により受けた利益の価額に相当する金額を限度としますので、相続した財産以上に相続税を支払うことはないです。
連帯納付義務の対象外となるのは、相続放棄をした場合です。
相続放棄とは、被相続人の権利・義務を一切引き継がないことをいい、相続の開始があったことを知ったときから3か月以内に、家庭裁判所へ相続放棄の申請手続きを行う必要があります。
(「相続の開始があったことを知ったとき」は、基本的には相続が発生した日です。)
注意点として、遺産分割協議により相続財産を何も取得しないケースは、相続放棄には該当しません。
法律は「知らなかった」が通用しませんので、他の相続人が滞納する可能性がある場合は弁護士などの専門家に相談した方がいいでしょう。
相続税は、相続が開始した日の翌日から10か月以内に申告・納税を行うことになり、期限までに相続税を支払わなかった場合、税務署から滞納者へ督促状が送付されます。
相続人の一人が相続税を滞納しても、すぐに他の相続人が代わりに相続税を支払うことにはなりません。
しかし相続税を滞納している人が督促状を無視し、未納状態が継続している場合には他の相続人へ完納されていない旨の通知が送られてきます。
税務署が連帯納付義務者に支払いを求める際は、納税通知書が送付され、2か月経過しても完納されない場合は督促状が届きます。
相続税には延納や物納による納税方法も用意されていますが、これらは納付期限までに申請を行った場合にのみ適用できる制度です。
したがって連帯納付義務を履行する際は、現金で一括納付することになります。
他の相続人が滞納者の代わりに相続税を負担した場合、負担した人は滞納者に対して返済を求めることができます。
親族間の関係性などを考慮し、返済を求める求償権を放棄することもできますが、相続税の返済を免除すると、その免除額が贈与とみなされ贈与税が課される可能性があります。
そのため相続税の滞納が起こりそうな場合は、遺産分割の時点で納税資金相当額の預金を相続させるなどの対策も必要です。(執筆者:元税務署職員 平井 拓)