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名義人死亡で凍結された銀行口座の相続手続きと「相続預金の払い戻し制度」について解説
あげたい人にお金や財産を確実にのこすためには、遺言書の作成が良いでしょう。
しかし、ドラマに登場する遺言書は
というように、具体的な金額や不動産が書かれています。
「まだまだ生きる予定だから、預貯金の残高は変わる。まだ遺言書は書けない」と思う人も多いようです。
しかし、遺言書には具体的な金額を書く必要はありません。
銀行名と支店名と口座番号だけでもかまいません。
口座を特定できる情報があれば良いのです。
例えば
と書くこともできます。
また、遺言書を作成したからといって、書かれた口座のお金が引き出せなくなるということもありません。
「あげる金額」を書かないことにはメリットがあります。
それは、場合に応じて「あげる金額」を動かせるということです。
例えば、先の例ならば長男により多くお金をのこしたくなったら、お金をB銀行からA銀行に移動させます。
いちいち遺言書を書き直す手間が省けます。
あげたい人にそのときに応じたお金をのこすためには、あえて金額は入れない遺言書を作っておくこともひとつの方法ではないでしょうか。
遺言書には
・ 自筆証書遺言
があります。
文房具店でみかけるエンディングノートは遺言書にはなりません。
誤送金のニュースをきっかけに、暗号資産が再び注目されました。
ニュースでは
がしきりに話題になっていました。
実は、相続でも同じことが言えるのです。
暗号資産とは、仮想通貨と呼ばれていたもので、ビットコインやイーサリアムが有名です。
暗号資産は、通帳も手で触れるお金もなく、データ上に存在します。
つまり、誰にも存在を伝えていなければ、誰にも発見されることなく放置される可能性が高いのです。
実際に筆者が暗号資産を取引しても、口座を開設したときに取引所から届いたたった1枚のはがき以外、一切手元に残るものはありませんでした。
暗号資産はお金と同じように相続できます。
暗号資産には中央銀行はありませんが、暗号資産を取引する拠点になる「取引所」があります。
取引所さえわかれば、所定の手続きをすることで相続可能です。
ただし
・ 取引所が海外であったり、
・ 金融庁に登録されていない取引所だったりする場合
は、素人では手続きが難しいかもしれません。
あげたい人に暗号資産をのこすためには、相続の流れができあがっている金融庁登録済みの取引所を選び、存在を伝えておくことが大切です。
あげたい人が1人ならば、問題は起きにくいのかもしれません。
しかし、複数人の相続人がいる中で「平等ではない振り分け方」をするときには注意が必要です。
例えば、親が3人の子どもに100万円のお金をのこそうとします。
長男には80万円、次男と三男には10万円ずつと遺言書に書きました。
このままでは、次男と三男が納得しない可能性があります。
そこで親は、遺言書とは別にお手紙を書くことにしたのです。
と「お手紙」を書き、署名と日付を書き込みました。ついでにハンコも押しておきました。親はきちんと気持ちを「お手紙」にすることで、次男も三男も納得してくれると思ったのです。
しかし、この「お手紙」は単なるお手紙ではなく、立派な自筆証書遺言になる可能性があります。
日付が遺言書よりも新しければ、遺言書の撤回を意味していると判断されることもあるのです。
気持ちをのこすときには、お手紙ではなく動画が良いでしょう。
動画や音声は、遺言書としての効力はありません。
あげたい人にお金をのこすためには、周囲の感情を予測してなだめる必要もあります。
それはあたたかい心ですが、お金がからめば、必ずしもあたたかい心があたたかく解釈されるとは限りません。
お金については、あたたかさの中に冷静さをもつことも大切です。
お金は「稼ぐ」「貯める」「使う」、最近は「(お金を)働かせる」「増やす」というように、さまざまなことができます。
しかし最後はどんなお金も「消える」か「のこす」で終わります。
ギャンブルで消えても悲しいですが、誰にも気づかれず放置されたり、想定外の人にのこすことになったりしても残念でしょう。
お金を稼いだり使ったりすることと同じように、「のこし方」についても考えてみてはいかがでしょうか。(執筆者:式部 順子)
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