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1つ目は、60歳から65歳未満の「在職老齢年金」で、年金がカットされる上限が変わりました。
今まで、働いて厚生年金に加入しながら給料をもらっている人は、60歳から65歳未満だと、給料と年金を合わせて28万円を超えると、超えた年金の一部がカットされました。
この上限28万円が47万円に引き上げられ、60歳を超えて働く人は、給料と年金を合わせて47万円を超えなければ、年金がカットされることはなくなりました。
2つ目は、65歳を過ぎて会社で働く場合、65歳から70歳の年金が少し増えます。
今までは、65歳以降に厚生年金に加入して働き続けても、収めた保険料が年金額に反映されるのは、厚生年金をやめるか、70歳になってからでした。
それが65歳からは、払った保険料が毎年年金額に反映され、年金が毎年少しずつ増えるようになりました。
3つ目は、75歳までなら、自分の都合で年金をもらい始める時期を選べるようになりました。
年金は、基本的には65歳からもらいますが、望めば60歳から75歳の間でもらうことができます。
65歳よりも早くもらう「繰り上げ受給」では、1か月もらう時期を早めるごとに支給額が0.4%下がることになりました。
いっぽう、65歳より遅くもらう「繰り下げ受給」は、受給を1か月遅らせるごとに年金支給額が0.7%増えます。
60歳と65歳から年金をもらう損益分岐点は80歳で、65歳と70歳で年金をもらう損益分岐点は81歳。
日本の男性の平均年齢は81.64歳ですから、平均年齢くらい生きるなら、いつからもらってもあまり損得はないということになります。
ただ、65歳からもらうのと75歳でもらうのの損益分岐点は86歳なので、平均年齢よりもかなり長生きしないと損をしそう。
ちなみに、女性の場合には、男性よりも6歳ほど平均年齢では長生きで、生命表を見ると2人に1人は90歳くらいまで生きているので、75歳支給でもいいかもしれません。
4月に変わる3つのことのほかに、5月からは、企業型確定拠出年金(DC)の加入年齢が70歳未満、iDeCoの加入年齢が65歳未満と、それぞれ5歳引き上げになります。
さらに10月からは、いままで「従業員数501人以上」に適用されていた、パートの社会保険の適用が、「従業員101人以上」に適用されることになり、約45万人が、厚生年金や健康保険に加入することになっています。
さらに、2024年10月からは、「従業員51人以上」への適用が拡大されていく予定です。
そのいっぽうで、年金の支給額は減っていて、21年度が0.1%減、22年度が0.4%減となっていて、どんなに物価が上がっても、働く人の給料が減っている現状では、もらえる年金も減っていくという現実を突きつけられたかたちになりました。
しかも、10月からは、75歳以上の医療費の自己負担が1割から2割に増えます。
単身世帯では年収200万円以上、高齢夫婦世帯では320万円以上がその対象になりそうで、厚生労働省の資産では、75歳以上の5人に1人が該当するようです。
立て続けの改訂ですが、こうした状況を一言でいうなら、「国は、なるべく健康で働けるだけ働いて、稼ぎながら長生きしろ」と言っているということです。
「人生100年」と煽るのも、そうした意図があるのでしょう。
そして、その向こうには、公的年金の70歳支給が待ちかまえています。
今は、その地ならしといったところでしょう。
70歳から年金支給ということになっても、50代は、ダイレクトにその影響は受けないかもしれません。
なぜなら、70歳支給になっても、すぐに65歳からもらえた年金が70歳からでないともらえなくなるという可能性は低いからです。
前回、60歳支給から65歳支給に支給年齢を引き上げた時には、まず老齢基礎年金を徐々に65歳に近づけ、老齢基礎年金が65歳になった後で老齢厚生年金を徐々に引き上げていくという方法をとりました。
そして、老齢基礎年金と老齢厚生年金の両方が65歳支給になるまでに、約30年かかっています。
もし、同じように手順を踏むなら、50代の年金については、まだそこそこにもらえるはずです。
大きな影響を受けるとしたら、40代以降。
真剣に、老後資金を考えていく必要がありそうです。(執筆者:経済ジャーナリスト 荻原 博子)
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