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サラリーマンAさんは、勤続35年務めた会社を60歳に退職し、一時金として2,000万円を受取る予定です。
それと同時にDC (加入期間15年)を一時金として540万円を受取る予定です。
DCは、企業型が事業主掛金月額2万円、個人型の掛金月額1万円で試算、運用益は織り込んでいません。
退職所得額の計算:{(2,000万円+540万円)-800万円+70万円×(35年-20年))×1/2}
退職所得額345万円
負担すべき税額60万7,500円(所得税:26万2,500円+住民税:34万5,000円)
(A) 退職所得額の計算:{(2,000万円-800万円+70万円×(35年-20年))×1/2}
退職所得額75万円
負担すべき税額11万2,500円(所得税:37,500円+住民税:75,000円)
(B)DC額の計算:{(540万円-退職所得控除額:0円)×1/2}
退職所得額270万円
負担すべき税額44万2,500円(所得税:17万2,500円+住民税:27万円)
負担すべき税額合計(A)+(B) 55万5,000円
(A) 退職所得額の計算:{(2,000万円-800万円+70万円×(35年-20年))×1/2}
退職所得額75万円
負担すべき税額は、11万2,500円(所得税:3万7,500円+住民税:7万5,000円)
(B) DCの計算:{(540万円-40万円×15年)×1/2}
退職所得額△30万円
負担すべき税額は、0円(所得税:0円+住民税:0円)
負担すべき税額合計(A)+(B) 11万2,500円
※所得税の復興特別税および住民税の均等割はそれぞれ含めていません。
※退職一時金で税の優遇(退職所得控除)を受けるためには、「退職所得の受給に関する申告書」を税務署に提出する必要がありますが、通常、勤務先が行ってくれます。また、それは、個人の確定申告においても可能です。
以上のように、退職金およびDCを一時金(退職所得)として受取る場合、退職所得控除が適用されるため支払う税金(所得税および住民税)は、大きく軽減されます。
(1) の場合は、次のような注意が必要です。
それは、勤続年数とDCの加入年数の重複する期間分が調整されるので、DCの加入期間に応じた退職所得控除が発生しません。
したがって、退職所得控除は勤続年数に応じた金額となりますが、DCの加入年数が考慮されない分その負担は大きくなります。
2.のように、DCの加入期間に応じた退職所得控除は発生しませんが、退職一時金とDCの受取る時期をずらすと、退職所得額が減るため税負担は(1) より軽減されます。
15年後とする理由は定かではありませんが、「DCの一時金を受給する年の前年以前14年内に退職一時金を受けている場合は、退職所得控除額が調整される」というルールがあります。
よって、3.の場合は、15年後(75歳)に受取るので、加入年数に応じた退職所得控除額となり、税金が掛かりません。
この方法が一番“得”ですが、このルールはあまり現実的ではありません。
15年という期間はあまりに長すぎます。
退職金の5年ルールと同様にせいぜい5年~10年短くなることを期待したいものです。
このケースは、老後資金が潤沢、家計収支に余裕があるなどの場合を除き、あまりお勧めできません。
退職金やDCを年金として受取る場合は、老齢基礎年金や老齢厚生年金などと同じ雑所得に分類され、公的年金等控除の対象となります。
公的年金等控除は、給与所得より控除額が大きいため所得金額を少なく抑えるという利点もあります。
しかし、この場合は、年金収入が増えるので雑所得も増え、それに比例して国民健康保険料や介護保険料などの社会保険料、および住民税(所得割分)の負担が増加するので、これを考慮する必要があります。
また、この場合、事業主が負担している退職金やDCの事業型の掛金は、所得控除の対象でないため、税の軽減効果はDCの個人型の掛金だけに限定されます。
これは、「3. 退職金の一時金を60歳の時点で、DCの一時金を75歳で受取るケース」が効果大です。
しかし、この方法においては、「2.退職金の一時金を60歳の時点で、DCの一時金を※翌年(暦年ベース)受取るケース」が最も現実的です。
これは、積立投資期間中の所得控除の節税効果が少なくなるばかりか、年金受給によって所得額が増えることで、税負担も増加するため、このケースは、余りお勧めできません。
退職金だけを一時金とすることで退職所得控除をフルに使えることやDC個人型の掛金に対して所得控除が得られるなど、このケースは、それぞれの利点を取り入れた形となるため、上の2つと比べ税負担の軽減効果は大きくなります。
以上、ここでは、上の前提条件をベースに試算した結果です。
ケース毎の具体的な数値把握は、より詳細な個人データを収集して試算する必要があることを付け加えておきます。(執筆者:CFP、1級FP技能士 小林 仁志)
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