新年度が始まる20224月からは、様々な年金に関する法改正が実施されますが、その中のひとつとして年金手帳の廃止があります。

 

これ以降は年金手帳が再発行されないため、紛失した時に何か不便なことが発生するのではないかという、不安を感じる方がいるかもしれません。

 

そこで年金手帳の役割と、この代わりになる制度について考えてみると、次のようになると思います。

 

年金金額が少ない人のための「年金生活者支援給付金」について

(1) 基礎年金番号の確認(基礎年金番号通知書)

新たな会社に入社した時には勤務先に対して、年金手帳の原本やコピーを、提出する場合があると思います。

 

この理由としては厚生年金保険に加入する時の書類に、年金手帳の中に記載された基礎年金番号(すべての公的年金制度で共通して使用する、一人に一つだけ発行される番号)を、記入する必要があるからです。

 

そのため年金手帳の役割のひとつは、自分や社会保険事務の担当者が、基礎年金番号を確認するための物なのです。

 

年金手帳が廃止された後に、初めて公的年金に加入する方、または年金手帳を紛失した方に対しては、基礎年金番号通知書が発行されます。

 

この中には基礎年金番号が記載されているため、年金手帳が廃止された後は基礎年金番号通知書が、年金手帳の代わりになるのです。

 

(2) 年金記録の調査(ねんきん定期便)

年金手帳の中には、国民年金の記録や厚生年金保険の記録を、記入する欄があります。

 

ここに厚生年金保険の「被保険者となった日(原則的には入社日)」などを、自分で記入しておくと、年金請求書に印字された年金記録に間違いがないのかを調べる時などに、参考資料として活用できるのです。

 

そのため年金手帳の役割のひとつは、年金記録に間違いがないのかを調べる時に、活用できる物なのです。

 

ただ20094月以降は誕生月になると、ねんきん定期便という年金記録に間違いがないのかを調べる時に活用できる物が、日本年金機構などから送付されるため、年金手帳に記入する必要性は薄れているのです。

 

またねんきん定期便の中身に間違いがない場合、これを年齢順に束ねて保管しておけば、国民年金の記録や厚生年金保険の記録を記入する欄の、代わりとして活用できるのです。

 

銀行はデジタル通帳への移行を促している

2021年頃から紙の通帳の発行に対して、手数料を徴収する銀行が出てきました。

 

ただ手数料が徴収される対象になるのは、この制度が開始された後に新規に口座を開設した方など、一部の方に限られている場合が多いようです。

 

また一定の年齢(例えば18歳)未満の方や、一定の年齢(例えば75歳)以上の方であれば、従来と同じように無料で、紙の通帳を発行できる場合が多いため、現在のところは影響が少ないようです。

 

銀行が手数料を導入した背景について調べてみると、紙の通帳を発行すると1口座あたり、年間で200円の印紙税を負担する必要があります。

 

一方でパソコンやスマホなどからログインして、取引履歴や預金残高を確認するデジタル通帳であれば、印紙税を負担する必要はありません。

 

銀行が手数料の制度を導入した理由のひとつは、紙の通帳からデジタル通帳に移行させ、印紙税というコストを減らしたいからのようです。

 

ただデジタル通帳に移行すると、記帳や繰越が不要になるため、利用者にとってもメリットもあります。

 

またデジタル通帳に移行した方に対して、現金をプレゼントするなどのキャンペーンを行い、この利用を促している銀行もあるので、通帳のデジタル化は進んでいくと予想されるのです。

 

ねんきんネットは「デジタル年金手帳」として活用できる

年金手帳は通帳と違って、紙からデジタルに移行させる計画はないのですが、デジタル年金手帳のような制度があります。

 

それはパソコンやスマホなどからログインすると、自分の年金記録などを確認できるねんきんネットになります。

≪画像元:日本年金機構

この制度がデジタル年金手帳になる理由としては、ログインすると基礎年金番号がわかるため、(1) のために活用できるからです。

 

またログインすると節目年齢(35歳、45歳、59歳)に送付される、封書形式のねんきん定期便と同じように、全期間の年金記録が表示されるため、(2) のためにも活用できるからです。

 

そのうえスマホからログインすれば、どこにいても基礎年金番号が確認できるため、年金手帳より携帯性の面で優れているのです。

 

ねんきんネットは年金手帳だけでなく、ねんきん定期便よりも優れている点があると思います。

 

それは例えば入社した会社がブラック企業だったため、厚生年金保険の加入手続きを、きちんと行っているのかが、心配になった時です。

 

ねんきん定期便が送付されるのは上記のように、年に1回(誕生月)だけになるため、すぐに調べることができません。

 

一方でねんきんネットであれば、最新の年金記録をいつでも調べられるため、誕生月まで待つ必要がないと同時に、入社日などの記憶が曖昧にならないうちに調べられるのです。

 

雇用保険の加入記録も確認できるマイナポータル

現在はマイナンバーと基礎年金番号が紐付けされているため、原則的には次のような手続き以外であれば、基礎年金番号の代わりにマイナンバーを記入しても良いのです。

 

・ 海外に住んでいる方の公的年金に関する手続き

・ 国民年金の保険料に関する口座振替の申出

 

そのため廃止になる年金手帳の代わりは、マイナンバーカードが良いと主張する方がおります。

 

もしマイナンバーカードを年金手帳の代わりに利用するなら、マイナポータルにログインして、ねんきんネットとの連携手続きを行った方が良いと思います。

 ≪画像元:マイナポータル

その理由としては、ねんきんネットの登録手続きをしなくても、これを利用できるようになるからです。

 

マイナポータルのもうひとつのメリットとしては、ログインすると雇用保険の加入記録も確認できる点です。

 

勤務先が雇用保険の加入手続きを、きちんと行っているのかが心配な方、または失業手当や育児休業給付を受給できるだけの、雇用保険の被保険者期間があるのかが心配な方は、マイナポータルを利用してみましょう。(執筆者:社会保険労務士 木村 公司)

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情報提供元: マネーの達人
記事名:「 廃止になる紙の年金手帳の代わりに「デジタル年金手帳」を活用しよう