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投資というくらいなので、ローンを借りてアパートを建てたり、分譲マンションを購入して賃貸したりして、入ってくる家賃で返済と経費を差しひいた残りが投資の果実となります。
ところが、思い描いていた計画通りに家賃が入らずに行き詰まってしまうのがこのケースです。
不動産投資ローンは投資であり、かつ事業である点が、住宅ローンやマイカーローンと言ったいわゆるローンとは一線を画す部分です。
アパートを数棟持つ富裕層も、マンション1室から始めているサラリーマンも、同じ不動産賃貸業として確定申告が必要になります。
同じ投資でも、証券投資やFXなどと違い、不動産賃貸業という事業であるという点です。
住宅や自動車など、個人が使うものを「消費財」と表現しますが、消費財を購入することから、住宅ローンなどは「消費性(消費者)ローン」とも呼ばれるのに対して、不動産を賃貸する事業である不動産投資ローンは「事業性(事業者)ローン」と呼ばれ、一般的なローンとは区別されているのです。
このように、不動産投資ローンについては、銀行では事業であると認識していますので、返せなくなるということは、事業に失敗したとみなされるだけで、住宅ローンのようにリスケなどの優遇は、なかなかしてもらえないのが実情です。
こういった不動産投資ローンの側面を知ったうえで、これから紹介する実例を読んでいただければと思います。
1. 収入の安定したサラリーマンのAさんは、投資に積極的で、株式投資やFXなどの経験がありました。
もっと有効な投資はないか?と探していたところ、知人を介して不動産投資の話しを聞きました。
2. その内容は「駅近のビル所有者が高齢で手放したい。テナントの入居も順調で安定した家賃収入が期待できる」というものでした。
3. 仲介業者と話しを進め、家賃の内訳や現状の金額などを示した資料(レントロールと呼びます)を見て「これならいける」とAさんは銀行から購入資金の約約4分の3融資を受け、晴れてビルオーナーになりました。
4. ところがその後、線路を挟んで駅の反対側に大型ショッピングモールが進出し、人の流れは大きく変わりました。
Aさんのビルもテナントの退去が相次ぎ、しかも次のテナントは決まらず、家賃が減り返済が滞るようになっていきました。
5. 「聞いていた話と違うじゃないか?」Aさんは仲介業者に苦境を訴えましたが、
「テナントの入居がどうなるか?」
「家賃収入がどうなるか?」
といった予想も含め購入したAさんの自己責任である、として取り合ってもらえませんでした。
6. テナントは決まらず家賃は減るいっぽう、かといって返済は迫ってくるので、仕方なくAさんは自分の投資していた株式を売却し、また給料も返済に回すなど資産をつぎ込んでいきましたが、やがてそれも限界を迎えました。
7. 手もとのお金が尽き、Aさんにはこれ以上対処する手段がなくなりました。
せっかく手に入れたビルは、ローン返済ができず担保として競売(ケイバイと読みます)になりました。
8. 不動産投資で手にしたビルを失い、借金だけが残ったAさんは、自宅も売却するなど資産すべての失い、自己破産を選びました。
そうした結末に至るまでに家族の関係も悪化していたので、一家は離散したとのことでした。
Aさんは投資に関する知識やリスクも充分持っていました。
そのため、自分の判断で不動産投資を決め、苦労したにもかかわらず最悪とも言える結末を迎えてしまいました。
Aさんは不動産投資を「安定した不労所得を得られる投資」と考えていたようです。
ビルを購入するときも、家賃や物件の維持管理、そしてテナントの入退去まで業者が請け負ってくれるところに魅力を感じたそうです。
つまり「オーナーになったあとは、自分がなにもしなくても安定した家賃が確保できて、面倒なことは業者がすべてやってくれる」と考えていました。
しかしながら、現実は甘くありません。
不労所得とは「労働をしなくても得られる所得」と表現できますが、肉体労働など汗水垂らして働かなくても得られる収入(たとえば家賃収入)といった意味であり、決して「なにもしなくても得られる所得」ではないのです。
そして、不労所得を得るためには自分で調べ、考え、ときには自分の手で汗水垂らして不労所得を維持する努力が必要なのです。
不労所得を得る投資目的といった色合いが近く、銀行でも返済を軽減するリスケの対応はしてもらえませんでした。
「濡れ手に粟」とまではいかなくとも、不動産投資には自助努力が必要だと考えて欲しかった例です。
昨今、不動産投資に関連して融資の不祥事も多発してきました。
そうした背景から、銀行も不動産投資のローンには以前より積極的ではなくなっています。
その理由としては、悪質な案件を掴まされないように、銀行の融資審査がきびしくなっていることが1つ。
そしてもう1つの理由は、審査が通って融資を受けた物件でも計画通りに家賃が入らないという、紹介したような事例が増えてきているからです。
不動産投資を取り巻く環境はきびしいことと、融資審査もきびしくなっている現状だという点は、ぜひ覚えておいてください。
1. 3代続く商店主のBさんは、先祖代々にわたり駅前の店を守り続けてきました。
2. 店が駅前に立地していることから、店の立地を活かした有効活用を、複数の不動産業者やハウスメーカーが頻繁に提案してきましたが、本業だけを続けたいBさんは耳を貸してきませんでした。
3. しかし景気の悪化で売上は減少を続け、融資取引がある銀行とも相談し、不動産の有効活用に活路を見いだすことにしました。
4. これまでの提案の中で将来の見通しなどが保守的かつ現実的な業者の案を選びました。
その案とは、1階は店舗のままで最上階をBさんの自宅、そのあいだの階をマンションとして賃貸するもので、銀行融資も受けられて建設しました。
5. しかしその後、駅が高架下されBさんのビルは駅前とは言えなくなってしまい、売上と入居者の両方が減っていきました。
6. 先祖代々の店と土地を守りたかったBさんは、銀行に相談して返済額を減らすリスケをしてもらうことになりました。
銀行や税理士とも相談して、しっかりとした再建計画を作ったことが、リスケを受けられた理由でした。
7. たとえば、家族経営の店とは言え、これまで支払っていた家族への給料はBさん含め全員無給としたり、会社員だった長男が戻り、やはり無給で働くことで従業員を減らしたりと家族一致団結する姿勢も銀行に評価されました。
8. Bさんは改善努力を続け、リスケを終わらせて元通りの状態に戻すことを励みに、家族でがんばっています。
Bさんの不動産投資は、店を守りたいという動機から始まったものでした。
Bさんがリスケを受けられたことは救いですが、そもそも返済が困難になりリスケしてもらうのは、不動産投資としては失敗です。
そこで、たとえば駅前の土地は思い切って売却し、店と自宅を別の場所に建てると言う選択肢もあったと思います。
こうすれば、土地と店の両方を守るのは無理でも、店と家は確保されます。
また売却ではなく、駅前は純粋な賃貸物件とし、店と自宅は別に建てる計画で融資を受ける選択肢もありました。
これなら駅前賃貸物件の家賃収入が思わしくなければ、売却して融資の返済に充てることもできるからです。
この記事では、不動産投資ローンが返せなくなってしまったケースを解説しましたが、私は銀行員として、不動産投資ローンを真っ向から否定するつもりはありません。
実際、私のいる銀行業界でも不動産投資のローンは取り扱っていますし、不動産投資に関する書籍や記事も数多く目にします。
ということは、それだけ不動産投資のニーズはあるのです。
ただし、大事なことは不動産投資という投資を、自ら選び、自らの意思で始めるという点です。
不動産投資をすすめる記事には華やかな成功例が並んでいますが、この記事のように失敗したケースから学べることもあると思います。
この記事が、不動産投資を含めたあなたのマネープランの参考になれば幸いです。(執筆者:銀行員一筋30年 加藤 隆二)
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