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毎月の社会保険料(厚生年金・健康保険)は報酬に保険料率をかけて計算されます。そしてその月分の保険料は翌月の給与から徴収されます。
しかし、毎月支払われる報酬は残業代などを考慮すると毎月同じ額が支払われるということは稀です。
そこで、報酬を区切りの良い幅で区分したものを標準報酬月額と定義し、保険料額が定められています。
尚、民間企業については厚生年金の保険料率は法律上上限に達しており、法律の改正がなければ保険料率については現行のままとなります。
まずは改正前後を確認しましょう。
健康保険:1等級5万8,000円~50等級139万円
厚生年金:1 等級8万8,000円~31等級62万円
【2020年9月から】
健康保険:1等級5万8,000円~50等級139万円
厚生年金:1等級8万8,000円~32等級65万円
改正部分は厚生年金の上限とされていた等級のみであり、2020年8月までは厚生年金の31等級が標準報酬月額の上限であったものの32等級(65万円)が加わったということです。
厚生年金保険法では全被保険者の標準報酬月額平均の200%に相当する額が最高等級の額を超える状態が継続すると認められるときは標準報酬月額の改定を行うと定められています。
結論としては、高所得層に対して標準報酬月額の上限が追加されたとの理解です。
既に62万円を超える報酬を得ていた場合で、かつ、実際の報酬とはかけ離れた額であったとしても上限に固定されることとなり、変更後は62万円から65万円になっています。
然るべきタイミングで加入記録などを確認しておくことが良いでしょう。
これは、年金額は平均標準報酬額を用いて計算されます。
よって、高所得者層については、これまでと同様の報酬額を得ていたとしても年金額が変更となる可能性があります。
賞与についても保険料徴収の対象となるだけでなく、年金額の計算時にも用いられます。賞与については平均賞与額として、健康保険は年度の累計額が573万円、厚生年金は1か月あたり150万円が上限となっています(平均賞与額については改正なし)。
具体的には所得税などを控除する前の賞与総支給額から1,000円未満を切り捨てた額が標準賞与額となります。
また、育児休業中の社会保険料免除を受けていた期間に支払われた賞与についても標準賞与額に含まれることとなります。
尚、賞与の保険料徴収の考え方は、賞与支給月に支給額に応じた保険料を徴収するということです(毎月の給与はその月の保険料は翌月の給与から徴収)。
よって、毎月の給与とは異なり、賞与支給額が代われば都度保険料も変動し得るということです。
近年、働き方の多様化が見られ、標準報酬の対象となる報酬とはどのようなものが含まれるのか?という議論が起きています。
端的には基本給や家族手当、残業代など労働の対償として会社から支給されるものとして定義されています。
通勤手当は税法上では一定額まで非課税となりますが、社会保険では報酬として扱われます。
また、年4回以上賞与を支払うと標準報酬月額の対象となる報酬として扱われることから注意が必要です。
国民年金から支給される老齢基礎年金は報酬によって年金額が決まるというものではありません。
端的には20歳から60歳までの間にどれだけ保険料を納付したかによって老後の年金額が決まってきます。
受けた報酬によって、年金額が決まるのはあくまで厚生年金側の話となりますが、加入月数も年金額の計算の基礎となることから、高報酬でかつ、加入期間が長い場合に、年金額も比例して高額になるという理屈です。(執筆者:社会保険労務士 蓑田 真吾)