- 週間ランキング
最初に結論を申し上げますと、相続人だけで相続税の申告書を作成することは可能です。
ただ申告書を作成する難易度は、各家庭ごとに違うと思ってください。
相続税の申告書を作成する際に大変なのが、亡くなった人の財産価値を算出する作業です。
相続財産が預金のみであれば、相続税評価額の計算はほとんどないため、該当する税率を適用すれば納税額を算出できます。
しかし相続財産を数多く保有している方は、評価額を算定する財産の量が増えますし、土地の評価額は専門知識がないと正しい評価額を計算するのが難しいです。
相続税には、相続税評価額を減額する特例や、納税額を減額またはゼロにする制度が多く存在します。
税理士に依頼しなくても相続人だけで相続税の申告書を作れますが、相続税の節税の観点で考えると相続税の専門知識は必須です。
相続税の特例の存在を知らないと適用できませんので、申告書を作成する人は相続税に関する知識を身につける必要があります。
たとえば小規模宅地の特例は土地の評価額を最大80%減額する制度ですが、適用要件を満たさないと特例は適用できません。
一つでも要件に該当しない場合には特例を利用できませんし、小規模宅地の特例にはいくつか種類がありますので、種類ごとの適用要件を把握することも相続税を節税するためには欠かせません。
相続人が作成した申告書と税理士が作成した申告書を比較した場合、申告内容に誤りがある可能性が高いのは、相続人が作成した申告書です。
調査担当者は申告誤りを指摘し、少しでも多くの税金を集めることが仕事なので、誤りがある可能性の高い申告書を優先的にチェックします。
適切に相続税の申告書を作成できていれば、指摘されることはありません。
しかし初めて申告する方がミスなく申告書を作成するのは大変なので、作成することが難しいと感じましたら、時間と労力を節約するために税理士へ依頼することも選択肢となります。
相続が発生してから行える相続税対策は限られていますので、生前から準備する必要があります。
生前贈与で相続人に財産を渡しておけば、相続税の対象となる財産を減らせますし、贈与税の特例制度を適用することで、1,000万円以上の財産を非課税で贈与することも可能です。
また小規模宅地の特例は土地用途も要件となっていますので、特例を活用したい場合は、土地を自宅の敷地や貸付用など特定の用途に供してください。(執筆者:元税務署職員 平井 拓)