【中国問題グローバル研究所】は、中国の国際関係や経済などの現状、今後の動向について研究するグローバルシンクタンク。中国研究の第一人者である筑波大学名誉教授の遠藤 誉所長を中心として、トランプ政権の ”Committee on the Present Danger: China” の創設メンバーであるアーサー・ウォルドロン教授、北京郵電大学の孫 啓明教授、アナリストのフレイザー・ハウイー氏などが研究員として在籍している。関係各国から研究員を募り、中国問題を調査分析してひとつのプラットフォームを形成。考察をオンライン上のホームページ「中国問題グローバル研究所」(※1)にて配信している。

◇以下、「中国に最も痛手なのは日本が外交的ボイコットをすること(1)【中国問題グローバル研究所】」の続きとなる。

上記の記者会見で香港の記者との質疑応答で提起された国連総会における決議は以下のようなものである。英語版に関してはUNGeneralAssemblyadoptsOlympicTruceforBeijing2022,highlightingthecontributionofsporttothepromotionofpeaceandsolidarity(国連総会が2022年北京大会のオリンピック休戦協定を採択、平和と連帯の促進に向けたスポーツの貢献をアピール)(※2)にあり、中国語版はこちら(※3)にある。

12月2日にニューヨークで開催された第76回国連総会において、193の全加盟国の内173の加盟国が共同提案した「BuildingapeaceandbetterworldthroughsportandtheOlympicideal(スポーツとオリンピックの理想による平和でより良い世界の構築)」と題した決議案を無投票で採択した。

193−173=20ヵ国が共同提案に加わっていない。

中国外交部報道官・汪文斌が言った「173ヵ国」はこの数値を指しており、中国としては強気なのである。上記の記者会見における中国外交部報道官の回答をできるだけ詳細に書いたのは、これら173ヵ国が、こういったセリフに惑わされていることを知っていただくためだ。

◆ボイコットに対するIOC声明
12月6日、IOCはアメリカの外交的ボイコット表明を受けて、IOCstatementontoday’sannouncementbytheUSgovernment(本日の米国政府の発表に対するIOCの声明)(※4)を発布した。

そこには概ね、以下のようなことが書いてある。

——政府関係者や外交官の出席は、各政府の純粋な政治的決定であり、政治的中立性を有するIOCはこれを完全に尊重します。同時に、今回の発表は、オリンピックと選手団の参加が政治を超えたものであることを明確にしており、私たちはこれを歓迎します。

選手とオリンピックへの支援は、ここ数ヶ月の間に何度も表明されており、最近では、先週ニューヨークで開催された第76回国連総会における国連決議でも表明されています。この決議は、2022年北京オリンピック・パラリンピック競技大会において、オリンピック競技大会開始である2022年2月4日の7日前から、パラリンピック競技大会終了の7日後まで、オリンピック休戦を遵守することを求めています。

また、「すべての加盟国に対し、オリンピック・パラリンピック競技大会の開催期間中およびそれ以降において、紛争地域における平和、対話、和解を促進するツールとしてスポーツを活用するための国際オリンピック委員会および国際パラリンピック委員会の取り組みに協力することを求める」としています。(引用ここまで)

中国外交部の発表によれば、国連決議を起草したのは「中国とIOC」であるとのことだ。

◆中国にとって最も痛手となるのは日本がボイコット宣言をすること
上述の国連における共同提案に参加しなかった20ヵ国の中に日本がある。

しかし日本はアメリカの外交的ボイコットに対して即応していない。

ボイコットの理由となっている新疆ウイグル自治区における人権問題に関わった当局者たちを罰することができる日本版マグニツキー法の制定も延期してきた。

12月9日のコラム<北京五輪ボイコットできない岸田政権の対中友好がクワッドを崩す>(※5)に書いたように、林外相は非常に積極的に日中友好を謳いながら王毅外相に接近し、来年の日中国交正常化50周年記念を中国と協力しながら祝賀したいと、自ら積極的に王毅外相に伝えている。

中国にしてみれば、どんなにアメリカから制裁を受けたり攻撃されたりしようとも、日米同盟で固く結ばれているはずの日本は、常に中国に友好的に動いていることを知っているし、また日本が対中友好的であるように中国は水面下で動いてきた。林外相が会長をしていた日中議連は、日中が国交を正常化する前から日中友好のために貢献してきた組織だ。中国が最も親中的だと位置付けている公明党とも岸田政権は連立を組んでいる。

かてて加えて今般は「東京大会開催時に日本は中国と水面下で互いに協力し支持し合うと約束していた」ことが判明している。

その日本が「中国との信義」を破って外交的ボイコットを宣言することは、中国にとっては大きな痛手となるだろう。日米が足並みを揃えたシグナルにもなるからだ。習近平のメンツも潰れる。

しかし、岸田首相も林外相も「中国に対して言うべきことは言う」と言っているのだから、今こそ明確に「外交的ボイコット」を宣言すべきだろう。

1989年6月4日の天安門事件後の対中経済封鎖を解除させたのは日本で、それにより中国はこんにちのような経済大国に成長した。あの愚を繰り返してはならない。言葉を濁して逃げ切れるものではないことを肝に銘じるべきだ。

日本国民は国際社会とともに、日本がいかなる発信をするかに注目している。


写真: ロイター/アフロ

(※1)https://grici.or.jp/
(※2)https://olympics.com/ioc/news/un-general-assembly-adopts-olympic-truce-for-beijing-2022
(※3)https://news.un.org/zh/story/2021/12/1095422
(※4)https://olympics.com/ioc/news/ioc-statement-on-today-s-announcement-by-the-us-government
(※5)https://news.yahoo.co.jp/byline/endohomare/20211209-00271845


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情報提供元: FISCO
記事名:「 中国に最も痛手なのは日本が外交的ボイコットをすること(2)【中国問題グローバル研究所】