「先生」ってなんであんなに魅力的にうつるのだろう。
自分が絶対的に教わる立場だからだろうか…?幼稚園生だって「先生スキー!」といっているのはよく聞くし、小学生のころ、交換ノートで相合傘の相手が先生になっているのはよく見た。中学生になると恋愛が身近に感じてきて、高校生になると本気で学校の先生と付き合い始める人もいる。

「たまたま運命の相手が先生だった」なんてことはない。そんなことも稀にあるかもしれないが、多くの場合、“先生だから”好きになっているのだ。
なぜ私がここまで断言できるのか。それは、私自身、先生を好きになったことがあるからだ。

大学1年生の時、友人と合宿免許に申し込んだ。そこの合宿免許は女性限定ということと、教官が担当制で、座学以外は卒業するまでずっと同じ人に教わることができるというのを売りにしていた。

その頃、合宿免許といえば、出会いの場として知られていて、彼氏持ちの友達と、彼氏持ちではないけれど周りに出会い目的だと思われたくなかった心の小さな私はその教習所がピッタリだった。

私の担当は、ちょっと髪の毛が寂しい長渕剛好きの50代男性。
その時、私とその教官は30以上の年の差だったが、なんと、恋に落ちた(私が一方的に)。
2、3週間ほど朝から晩までみっちり教習予定がはいっているため、車内でふたりっきりの時間が長かった。毎日運転を教えてもらいながら、お互いのことを話しているうちに、いつの間にか好きになってしまった。

特に危険講習がよくなかった。教官が急スピードでカーブを曲がるのを助手席で体験するのだが、助手席で教官の華麗なハンドルさばきを見た時は、もう、ときめき死ぬかと思った。

卒業の日、最後の挨拶をしに行くと、名刺の裏に個人用の携帯電話番号とTwitterのアカウントを書いて渡してくれた。一週間はその名刺を眺めていたが、一週間後、思い切ってTwitterをフォローしてみたら、過去の生徒たちとなかなか密にやり取りをしていて一気に冷めた。

今考えると、好きになったのもきっと勘違いだったのだろう。生徒と先生という絶対的に教わる立場で、自分ができないことを軽々とこなしている教官がとてもかっこよく見えたのだ。後は吊り橋効果的なものもあったのかもしれない。とにかく、今回この話を書くまでそんなことがあったのも忘れていたから、あまりに恥ずかしい勘違いに記憶から抹消したのだと思う。教官も迷惑だっただろうな…。

だが、先生に本気で恋して結婚した友人も知っているから、全ての人が勘違いの恋愛をしているとは言い切れない。五十嵐貴久先生が著した『学園天国』は、高校の女教師と高校生男子の夫婦が主人公だ。なんとこの夫婦、同じ高校の担任と生徒なのだが、もちろんまわりには隠して学校生活と結婚生活を両立している。しっかり者だけれどどこかぬけている先生と、甘えん坊だけど頼りになる生徒の夫婦は、誰もが応援したくなる。

と、ここまで読むとなんだか甘々な恋愛小説のようだが、教師と生徒という異なる立場で協力し、生徒に厳しい処罰をしている「教育指導部」に立ち向かっていくという、謎解きあり、ハラハラありと、最後まで一気読みしたくなる読み応えのある一冊だ。

実はこの著者、3月に『マーダーハウス』というホラーミステリーの新刊が出た。今回紹介した『学園天国』は恋愛要素が多く入っているが、もともとはホラーサスペンス大賞を受賞しデビューしているホラーの実力者。こちらもぜひ一緒に読んでみてほしい。著者の違った一面が見られるだろう。

私の教官への恋は勘違いで、『学園天国』のように結婚はしなかったけれど、人としてはとても好ましいと思うし、感謝もしている。

なぜ先生を好きになりやすいのか改めて調べてみると、「初めて」を共有すると、好きになりやすいらしい。(変な意味ではない。)

私の初めてをたくさん共有してくれた教官、ありがとう。
今、あなたのおかげで、無事故で運転できています。

(実業之日本社 コンテンツ・ライツ本部 鎌倉 楓)

『学園天国』 五十嵐貴久 著  722円+税 実業之日本社




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情報提供元: FISCO
記事名:「 「初めて」を共有すると好きになりやすいらしい【Book】