仮想通貨(暗号資産)市場全体の時価総額に占めるビットコイン(BTC)の時価総額は足元64%と、アルトコイン(ビットコイン以外の仮想通貨の総称)に対して圧倒的なシェアを占めている。しかし過去には30%台に落ち込んだ時期もあった。ビットコインの時価総額シェアは、仮想通貨市場のセンチメントを測る手段のひとつとなる。過去のBTC価格の推移と時価総額シェアの推移を振り返りながら説明していく。

ビットコインの誕生から2017年1月頃までは、ビットコインの時価総額は仮想通貨市場全体の時価総額の80~90%を占めた。しかし、2017年1月以降、BTC価格の急上昇とICO(新規仮想通貨公開)プロジェクトの急増を背景にアルトコインに資金が流入し始めると、この市場バランスは崩れた。アルトコイン(特にイーサリアム[ETH])の時価総額が一斉に急成長することで、ビットコインの時価総額シェアは減少を続けた。ビットコインよりもリスクが高いとみなされるアルトコイン市場も大きく成長することでビットコインの寡占状態でなくなった仮想通貨市場は、リスクオンのムードが高まった時期だったといえよう。

過去最高値を更新したBTC価格の上昇を背景として、2017年7月以降は時価総額の市場シェアも一時回復したものの、2018年1月にBTC価格が暴落すると時価総額シェアは30%台へと急落した。その後2018年8月までビットコインの時価総額シェアは30~40%台を推移した。アルトコインの時価総額が高かったということもできる。しかし、2017年には右肩上がりの成長だったICOプロジェクトが2018年の下半期から急減すると、ビットコインの時価総額シェアは再び増加した。2018年11月にBTC価格が6,359ドルから3,821ドルへと下落した時、BTCの時価総額のシェアは50%台を維持した。これ以降足元に至るまで、BTC時価総額の市場シェアは50~60%と高めの水準を維持しており、2018年1月のBTC価格下落とICO人気の低下を経て仮想通貨市場はリスクオフへ傾いた。

今年1月から2月にかけて、BTC価格が1万ドル付近で推移していた期間にBTCの時価総額シェアはBTC価格の下落に先行して減少していた。この期間には、多くのアルトコインのBTC建ての価格が上昇してBTCが連れ高するという局面もあり市場にはリスクオンのムードがあったと捉えることもできる。しかし、2月24日を境にBTC価格が下落に転じると、BTCの時価総額シェアは再びわずかながら上昇しており、ビットコインの半減期を5月に控えながらも価格が伸び悩む中で様子見の状況が続いているといえる。

長期的な視点では、ビットコインの時価総額シェアは2017年以前までの80~90%から2020年4月現在には60%台まで減少している点に注目したい。BTC価格が市場全体に影響している事は変わりないものの、アルトコインの時価総額もビットコインとともに成長し、市場シェアは少しずつ成長している。新たな仮想通貨の登場によってビットコイン一強の形勢が今後変化できるのかという点も、今後の市場全体の成長性を占う注目点となる。



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情報提供元: FISCO
記事名:「 暗号資産の時価総額に占めるビットコインのシェアから見るセンチメント【フィスコ・暗号資産コラム】