(この記事は、「DMM Bitcoin 田口社長インタビュー Vol.2:岐路に立つ仮想通貨交換業」からの続きです)

マネックス証券×コインチェック 松本CEOの野望とは?

マネックスグループは12日、都内でメディア向け事業説明会を開催。松本氏は、米国事業、クリプト事業、日本事業について次のように説明した。

「USとクリプト事業が大変絶好調、あるいは大きな期待があるという中で、日本に関しましては残念ながらマーケットがなかなか拡大していかない」

「資本市場が常にしっかりしていて、色んなことが起きてもすぐに戻る」米国市場でのビジネスは、「絶好調」。仮想通貨ビジネスも、仮想通貨のトレーディングの他、「新しい資産クラスとしての仮想通貨、新しいペイメントとしての仮想通貨、新しいデータベースとしてのブロックチェーン技術の展開など多くのビジネス機会がある」。しかし、マネックスにとって「屋台骨」である日本でのビジネスには「逆風が吹いている」状況だという。

「逆風」の日本市場に対して、今後どのような姿勢で臨むのだろうか?また、コインチェックから入ってくる仮想通貨投資家は、どのように関わってくるのだろうか?松本氏に聞いた。

松本氏によると、新規口座の開設のペースで、実はコインチェックの方がマネックスをわずかに上回っている。コインチェックに関しては、全く宣伝していないにもかかわらずだ。またコインチェックは、金融庁に交換業者として登録を完了しておらず、「みなし業者」の状態が続いている。仮にコインチェックが金融庁に正式に登録されれば、伸び代はまだありそうだ。

さらに、マネックス証券のメインユーザーが40代や50代である一方、コインチェックの抱える170万人のユーザーの中心は20代から30代と若者が中心。松本氏には若い投資家を仮想通貨だけでなく株式の世界に引き込みたいという狙いがある。

そんな松本氏が一つの目標に掲げたのは、「個人投資家をアクティビストにする」ことだ。コインチェックから若い仮想通貨投資家が入ってくることについて、松本氏は「仮想通貨一辺倒でいいのか?」「分散投資もあるぞ?」というテクニカル面での教育だけでなく、株主になることの意義を啓蒙する機会と捉えている。

「株式って単なる値や取りじゃないんですよ。株は本来、会社の株主であり議決権があり会社に対して意見が言える。しかし仮想通貨はそうではない。(中略)仮想通貨から入ってきた人に、『株式っていうのは株主になることなんですよ』とちゃんと啓蒙活動していかないとだめだと思う。日本株がだめなのはそこがなっていない。いつまで経っても、株主に対するリスペクトが足りない」

資本市場の主役は個人投資家であると考える松本氏。昔、英国のサッチャー元首相がブリティッシュ・テレコムの民営化をした際、資本主義を生んだイギリス国民に資本主義を忘れさせないように電話代の請求書に切り取り線のような形でBT株の売り出しを行なった例をあげた。対照的に日本はそもそも「株式資本主義的な感覚は低い」。それにもかかわらずサッチャーのような啓蒙活動がされておらず、株投資は怖いものというイメージが先行。「貯蓄から投資」への移行は進まず、国民が株投資から遠ざかってしまっているのが現状だ。

「(資本主義が)行きすぎちゃった国がやるなら分かるんですけどね…。日本はそもそも株式カルチャーがない。まずはそれを広めないとだめですよね。そうしないと日銀ばかりが株を買っちゃって…」

啓蒙活動を通じて自立した個人投資家に対して松本氏が期待することの一つは、会社のチェック機能の強化だ。

「アクティビストっているじゃないですか?香港とかに。そうではなく、個人がもっとアクティビスト的に会社に対して『何やっているんだ』と言った方が良い」

松本氏は、例えば東芝の粉飾決算やオリンパス事件の際も、最初に問題に気づいたのは個人投資家であって機関投資家ではなかったと指摘した。

「個人の目の方が絶対しっかりしてるんですから。(中略)機関投資家もやっているのは個人なので。そうしたら1人の個人と100万人の個人だったら、100万人の目の方がはるかにいろんなものを見つけるんですよ」

コインチェックの金融庁登録に向けた機運が高まりそうな来年。12日の説明会でコインチェックの勝屋敏彦社長が「来年は決済や送金手段としての仮想通貨のニーズが高まるだろう」という見通しを語っていたが、コインチェック発で社会的に有用な仮想通貨の使われ方が登場する可能性があるだろう。そして、コインチェックをきっかけに仮想通貨投資を始める若者をアクティビストにする啓蒙活動。来年、松本氏の野望が本格的に動き出すかもしれない。

(記事提供:コインテレグラフ日本版)
コインテレグラフ日本版は世界中で読まれている仮想通貨ニュースメディア大手「Cointelegraph」の日本語版です。新聞社やTV局出身者で構成される編集部が海外チームと連携しながら、仮想通貨相場を動かすニュースを発信し続けています。



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情報提供元: FISCO
記事名:「 「投資家よ、アクティビストたれ」マネックス松本CEO が仮想通貨投資家に伝えたいこと Vol.2