*12:03JST 網屋 Research Memo(3):データセキュリティ事業とネットワークセキュリティ事業の2軸で展開
■事業概要

(2) ネットワークセキュリティ事業
ネットワークセキュリティ事業は、網屋<4258>が創業以来手掛けてきた事業であり、長年培ってきたネットワーク技術と運用ノウハウを基盤として展開している。同事業では、クラウド型ネットワークサービスブランドである「Network All Cloud」を中心に、企業の通信インフラの設計・構築から運用・保守までを一貫して提供している。近年は、テレワークやハイブリッドワークの定着、クラウド利用の拡大を背景に、ネットワークとセキュリティを統合的に提供するSASE(Secure Access Service Edge)領域へ注力しており、同社の成長を牽引する重点事業の一つとして位置付けられている。

同社の強みは、企業ネットワークに必要なVPN※1ルータ、ファイアウォール※2、スイッチ※3、無線LANアクセスポイントなどの機器をクラウド上から一元管理できる点にある。従来のネットワーク運用では、機器設定や障害対応のたびに現地対応が必要となるケースが多かったが、「Network All Cloud」ではクラウド経由で遠隔管理を行うため、導入後の運用負荷を大幅に軽減できる。顧客は専用の管理画面を通じてネットワーク状況を可視化できるほか、運用・保守業務の大部分を同社へ委託することが可能であり、情報システム部門の省力化や運用品質の向上につながっている。

※1 Virtual Private Networkの略称。暗号化技術などによりインターネット上に作り出された仮想の専用ネットワークのこと。
※2 企業内にある内部ネットワークとインターネットなどの外部ネットワークの境界線上に設置し、通信を許可するか否かを判断し、制御する仕組みを持った装置またはソフトウェアのこと。
※3 スイッチングハブを指す。通信ネットワークにおいて通信を中継する装置の一つで、データを受け取り、宛先を識別して、関係する機器にデータ送信する機能を有する通信機器のこと。

顧客層は、多数の拠点を運営する企業や組織が中心である。小売業、外食チェーン、製造業、医療機関、教育機関、営業拠点を多数抱える企業などに導入が進んでおり、全国に分散したネットワークインフラを効率的に管理したいというニーズを取り込んでいる。近年はサプライチェーン全体のセキュリティ強化やDX推進を背景として、企業ネットワークに対する要求水準が高まっており、同社の提供するクラウド型ネットワークサービスへの需要も拡大している。

販売体制については、直接販売と間接販売を組み合わせたハイブリッドモデルを採用している。大手ベンダーやSIerとの協業に加え、OEM供給も行っており、同社技術を活用したサービスがパートナー企業ブランドとして販売されるケースもある。近年はキヤノンマーケティングジャパンなどとの資本業務提携を通じた協業も進展しており、今後の販路拡大や案件創出への寄与が期待される。

収益モデルは、機器販売によるフロー収益と、ライセンス・運用サービスによるストック収益を組み合わせた構造となっている。初期導入時にはネットワーク機器販売や構築費用が発生する一方、その後はクラウドサービス利用料や運用管理サービスによる継続課金収益が積み上がる。近年はSASEサービスの拡大に伴い、機器販売中心のビジネスモデルからサブスクリプション収益を中心としたモデルへの転換が進んでおり、ARRの成長を支える重要な事業となっている。

主力サービスの一つである「Verona」は、同社が提供するフルマネージドSASEサービスである。従来のVPNやファイアウォールなど個別に管理されていたネットワークセキュリティ機能を統合し、クラウド上で一元提供するソリューションとなっている。企業の拠点間接続やテレワーク環境における安全なアクセス環境を実現するとともに、ゼロトラストセキュリティの考え方に基づく高度な認証・通信制御機能を提供している。証明書認証やダイナミックポートコントロール機能などを備え、ネットワーク利用時のみ必要な通信を許可することでセキュリティリスクの低減を図る。近年は企業のクラウド活用が進むなかで、従来型VPNに代わる次世代ネットワーク基盤として導入が拡大しており、同社のARR成長を牽引する主力サービスとなっている。

同社によれば、「Verona」の受注は足元で着実に増加しており、ネットワークセキュリティ事業のARR成長率も高い水準を維持している。これは大型案件の有無による一時的な要因ではなく、契約件数の積み上がりによる構造的な成長であることが特徴である。また、研究開発投資による機能拡張も継続しており、従来不足していた機能の追加や性能向上を進めることで、海外大手ベンダー製品と競争可能なレベルまで製品力を高めている。

もう一つの主力サービスである「Hypersonix」は、クラウド型無線LANサービスである。オフィス、店舗、工場、学校、病院など多様な環境におけるWi-Fiネットワークの設計・構築・運用をクラウド上から実現する。一般的な無線LANサービスが単一メーカー製品に依存するケースが多いのに対し、「Hypersonix」は複数メーカーの機器を柔軟に組み合わせることができるため、顧客ごとの利用環境や要件に応じた最適なネットワーク構築が可能となる。

また、同社はグローバル市場で高いシェアを有する米国Ubiquiti Inc.製「UniFi」シリーズの国内販売代理契約を締結しており、同製品を活用したサービス展開や機器販売も行っている。価格競争力と運用性を兼ね備えたクラウドネットワーク環境を提供できることから、中堅・中小企業から大規模拠点網を持つ企業まで幅広い顧客層への提案が可能となっている。

ネットワークセキュリティ事業は現在、成長投資フェーズに位置付けられている。営業体制の強化やブランド認知向上を目的とした広告宣伝投資、SASE関連の研究開発投資を積極的に実施していることから、短期的には利益成長が抑制されている。しかしながら、ARRの拡大や戦略的提携先との協業本格化により、今後は収益性向上と利益成長の加速が期待される。国内におけるSASE市場は依然として発展途上であり、国産プレーヤーが限られるなかで、同社は有力なポジションを確立しつつあると評価できる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 茂木稜司)




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情報提供元: FISCO
記事名:「 網屋 Research Memo(3):データセキュリティ事業とネットワークセキュリティ事業の2軸で展開 」