*16:30JST ファーストアカウンティング :株価にアップサイドポテンシャル、経理人材不足とAI収束性で切り拓く成長戦略
■概要
日商簿記受験者数の減少に象徴される経理人材の構造的不足を背景に、ファーストアカウンティング<5588>は「経理シンギュラリティの実現」を掲げる。汎用AIが得意な「探索性」に対し、同社は10年にわたる大企業経理部門との伴走で培った「経理判断資産」を武器に、監査・説明責任を伴う「収束性」で差別化する。中核製品Stewardは自社モデル「Deep Dean」の高い会計知識と、OK・NG・グレーの三分類による業務収束の仕組みで自動処理率を高め、顧客増加とともに基盤が強化される正のフィードバック構造を築く。「SaaSの死」懸念から株価は上昇分を吐き出したが、汎用AIの進化はむしろ同社の強みを引き立てる補完関係にあり、中長期の増益ポテンシャルに着目したい。

1.事業の概要
ファーストアカウンティングは、経理領域に特化したEnterprise AI Company。 コンピュータービジョンを中心とした文字認識技術によるサービス開発を行い、 多くの大企業や会計ベンダーに提供している。 また、生成AIなどの最新技術を研究し世界の学術会議で論文発表を行い、新サービスの開発を行っている。具体的には、API連携の経理業務AIモジュール「Robotaシリーズ」(領収書・請求書・確認・仕訳・台紙切取・振分の各Robota)、GUI型の請求書処理プラットフォーム「Remota」、API型のデジタルインボイス送受信サービス「Peppolアクセスポイント」、経理AIエージェント「Steward」(支払照合・経費照合・新リース会計基準対応)で構成され、経理DX・AI活用サービスを提供している。経理業務自動化のニーズに合わせ、必要な製品を選択し、組み合わせ可能である。SaaS型のクラウドサービスであり、課金体系は、原則として1年以上の月額課金(MRR:Monthly Recurring Revenue)と読み取った帳票枚数に応じて変動する従量課金で構成されている。

2.業績の推移
2026年12月期は、売上高で前期比31.2%増の3,109百万円、営業利益で同6.9%増の312百万円が見込まれている。第2四半期までの累計売上高は前年同期比16.3%増の1,298百万円、営業利益は同49.9%増の170百万円と順調な推移となっている。ストックビジネスである故に下半期偏重の売上高となっており、利益の達成率が高いものの下半期には人的投資や開発投資を見込んでいるものと思われる。

3.中長期の目標と株価
目標として掲げる売上高100億円を達成した際の利益は、M&Aや投資の状況によっても変動するが、現状の営業利益率10%は最低限の実力値として認識して良いと思われる。2028年12月期の営業利益が10億円となれば、営業利益のCAGRは+80%近い。PER80倍評価だと時価総額で150億円が試算され、当該水準の2028年12月期の営業利益10億円の際のPERは25倍程度である。利益成長の実力値のみならず、AI関連銘柄としても高PER評価は許容される水準となる。

OpenAI時代にファーストアカウンティングは生き残れるのか」という問いに対する答えは明快

日商簿記の実受験者は2010年から2024年にかけて1級で39%減、2級で28%減と、経理人材の供給が構造的に崩壊しつつある。採用難を経営課題と認識する企業は36%に達し、この人材不足は今後さらに深刻化する見通しだ。ファーストアカウンティング<5588>はこの社会課題をビジネス機会と捉え、「経理シンギュラリティの実現」をミッションに掲げる。

OpenAIをはじめとする汎用AIは「探索性(幅広い可能性を発散的に提示する能力)」に優れる。しかし、経理業務が本当に必要とするのは「収束性」、すなわち監査・説明責任が伴う中で企業固有の正解に辿り着く能力だ。ファーストアカウンティングの価値の核心はモデルそのものではなく、創業以来10年にわたって大企業経理部門と伴走することで磨いてきた「経理判断資産」と、それを判断手続として再利用可能な形で展開できる「経理業務基盤」にある。顧客が増えるほど判断データが蓄積され、基盤が強化されるという正のフィードバック構造が競合他社の追随を困難にしている。

この戦略を具現化した製品がStewardである。自社モデル「Deep Dean」は日商簿記2・3級で正答率100%、1級で99.8%、公認会計士一次試験でも全科目満点を達成し、会計知識面での技術的優位は実証済みだ。Stewardの核心的な設計思想は「AIが全て判断する」のではなく、OK・NG・グレーの三分類による業務収束にある。ルールに適合するものは根拠を記録して承認、適合しないものは却下・差し戻し、既存ルールで判断がつかないグレーは人間に委ねて証跡を残す。このグレーをルール化するサイクルが回るたびに自動処理率が向上し、使えば使うほど企業の「業務資産」が蓄積される。BPOや派遣社員との比較で10倍速・同等精度・コスト半分を標榜し、経費照合・支払照合・新リース会計基準対応がすでに実現済みである。

「OpenAI時代にファーストアカウンティングは生き残れるのか」という問いに対する同社の答えは明快だ。汎用AIが進化するほど、その探索能力をFAの収束性がさらに活かせる構造となり、両者は競合ではなく補完関係にある。10年の蓄積は一夜で再現できず、顧客増加とともに基盤が強化されるネットワーク効果が持続的競争優位を形成することとなろう。

生成AIやAIエージェントの急速な進化により、人間が画面(UI)を操作して定型業務を行う従来のサブスクリプション型ビジネスモデルが根底から覆るという議論や懸念、いわゆる「SaaSの死(SaaS is Dead)」にファーストアカウンティングが当てはまるという見方からなのか、株価は大幅に上昇後、上げ幅を全て吐き出した格好となっている。目標として掲げる売上高100億円を達成した際の利益は、M&Aや投資の状況によっても変動するが、現状の営業利益率10%は最低限の実力値として認識して良いと思われる。2028年12月期の営業利益が10億円となれば、営業利益のCAGRは+80%近い。PER80倍評価だと時価総額で150億円が試算され、当該水準の2028年12月期の営業利益10億円の際のPERは25倍程度である。利益成長の実力値のみならず、AI関連銘柄としても高PER評価は許容される水準となる。
(執筆:フィスコアナリスト 山本泰三)



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情報提供元: FISCO
記事名:「 ファーストアカウンティング :株価にアップサイドポテンシャル、経理人材不足とAI収束性で切り拓く成長戦略